表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚〜勇者(偽)を用意して隠れて私が殲滅する!私は引きこもり主婦ですが?なにか?  作者: 抹茶きなこ
第一章《各国を襲うモンスタースタンピート編》
42/77

四十一話 聖女無双!賢者無双!〜私は陰ながら応援します!

パロディ要素を多く含んだ回になります、大丈夫な方だけどうぞ!



真希達が都キョートエドに着いたのはアンネリーネ達と別れてから10日が経った日の夕方だった。


クロエにお願いして携帯用通話の魔道具でガルド王国へ連絡を入れ、ジパンヌ国の上層部の誰かに到着を伝えてもらう。

流石に今は新米騎士であるクロエや面識のない賢者で剣姫な真希や聖女桃香では相手にされないかもしれないからだ。

念には念を、である。今、側にそういうことに長けた王女アンネリーネはいないのだから。


暫く待つと相手側の受け入れ準備も整ったらしく、一度街の中で現状の説明があり今後の作戦が話し合われる。

何よりも少なくはあるが援軍が来たことを民衆に見せることで伝え、安心感を与えたいのだろう。

なにせ一度目の援軍が都のすぐそばに来て何もせず去ったのだから。


女性三人という少なく頼りなげに見える援軍にも関わらず民衆の反応は絶大だった。

泣き出す者も多いが、何よりも歓声を上げるものの多さに真希達は驚いた。


城まで案内してくれるという近衛騎士のムネキチ=サッサは真希達の様子に笑いながら説明してくれた。

真希達が都に着くまでの14回の夜を、どうやって皆が生き延びられたのか。

それは多くのものが傷つき、時には死を迎えた都をいつしか覆った結界が守ってくれたからだ、という。


その結界は真希達が都の危機を知り、無理を押して都へ向かう事を決めた、あの夜に張られたというのだ。

どうやら真希達の決断の話をジパンヌの王はガルド王国からすぐに聞いたらしく、結界と真希達はすぐに結びつけられた。

またガルド王国に報告を兼ね結界の話をしたところ召喚者達の守護神偉大なる存在シュフ様についても聞き、王は民衆の心を鎮めるためにも、真希達と偉大なる存在シュフ様について宣言したのだそうだ。


この結界は賢者様と聖女様が間に合うようにと、偉大なる存在シュフ様が張ってくださった、神のみわざだと。


だからこの歓声なのかと真希達は納得した。

シュフ様が結界を張ったというくだりを普通に信じてスルーできるあたり真希達は正義に毒されてしまっている!


しかし、近衛騎士ムネキチの話はまだ続く!

ただの結界ではないんですよ、とその顔はすごく自慢げだ。

そう!なんとこの結界、体がきちんとあれば死者さえ蘇らせ、どんな小さい傷も見逃さず治し、体の不調すら治す!床に伏せることも多かったお爺さんお婆さんも矍鑠とする特別仕様!

それにその迎撃力は凄まじい!街に侵入しようとした魔物達はみな跳ね返され、そのダメージで魔物達は動けず次の朝日を浴びて消滅する!

魔術を放とうものなら倍ほどの大きさにして術者に返し消滅させる!

とうとうと語る姿はまるで瓦版屋の読売、もしくは某ジャパでネットな社長の宣伝のようだ。彼のCMが終わったことが寂しい。


結界の死者蘇生と殲滅力に驚愕の真希、桃香、クロエ。

すでに私達要らないんじゃ、、、と桃香などは思ってしまった。それだけエゲツないほどの守り力!


城に入り、民衆の歓声を背後に感じながら真希達は偉大なる存在シュフ様の名に恥じぬよう頑張ろうと再度胸の中で決意したのであった。



城の中、それは特に城に詳しくない人にとっては普通に他国の城と変わらない。(ガルド王国と帝国の城の違いも分からない。)

あえて言うならば全体的に飴色の木目の美しさを全面に出す造りの城だ。

真希達三人が通されたのは宰相の執務室だと言う。

謁見の間とかじゃなくてよかった、と桃香は思った。

謁見の間に全く、それはもうこれっぽっちもいい感情を持っていないのはすべてガルド王国のせいである!あの時の恨み辛みは骨身に染み込んでいると言っていい!


部屋には国王、宰相、第三騎士団長がいた。

そして非公式ながら、と深々と三人に頭を下げたのだ。

真希達は慌てる、まだ何もしていない、と頭を上げてくれるよう頼む。

代表して宰相スケサブロウ=ササキが真希達の態度に苦笑いしながら説明する。

すでに援軍が向かっている国に、もしもの為、と援軍を出すことはまずない。

その先行している援軍が国の名を背負った、魔術に長けたエルフの精鋭ならば尚更だ。

それなのに、もしもの時のためにと帝国を救った後なのに駆けつけ、そのもしもが起きた後も無理を押して最速で来てくれたことに深い感謝の念を抱いているのだと。今の行為は確かに非公式だが、その事を伝えたいが為の行為であったと。


、、、ガルド王国の言い訳行為が良い方に、かなり良い方に出た結果だ!言い訳行為なことは変わらないぞ!ガルド王国!しかも他人(異世界人は他人ですよ?)に任せたな!


真希達はその感謝を受け入れ、現状の把握のため話を戻した。

受け入れないと話が進まない!どうやらジパンヌ国は典型的日本人のように腰が低いらしい。


第三騎士団団長カクノシン=アツミの話ではすでに結界により半分以上のアンデットが消滅、現在は夜になると偵察のように三十体ほどの魔物があらわれては結界を感じ取れず、実験なのか十数体程が結界にぶつかっては消滅あるいは行動不能で朝日で消滅しているらしい。


桃香は、え?馬鹿なの?と思っていた。

しかし、普通の結界は感じ取れないなんてことは無いのだ!ただの結界なら数日経っているならば無くなっている可能性も高い!

桃香の馬鹿扱いは流石に魔物が哀れである。

不死者の王ノーライフキングも少しは考えて命じているはずだ!

大群で結界に突撃しないだけ知恵はあるはずなのだ!


残った魔物達は太陽の光が遮られる近くの鉱山の洞窟にいるらしい。ただし逃げ出す者を殺す為に森には多くのリッチが潜んでいる。

昼間に第三騎士団の中でも光属性に特化した騎士が確認したとのことだ。


話が終わると宰相スケサブロウが苦い顔をしてエルフの少数精鋭たちの話を始めた。

すでに”援軍”という言葉を使いたくないのがありありで、ありあり過ぎて、目も当てられないほどだ!!


「、、、昼過ぎあたりに件の少数精鋭の者たちが戻ってきましてね。

ええ、戻ってきたんです、のこのこと。

その時ひどい暴言を一人のエルフが吐きましてね、私が聞いているのに。

偉大なる存在シュフ様に対してですよ!許せるはずがありません!」


毒を吐き始めた宰相スケサブロウ、段々ヒートアップしていき最後には握り拳を震わせていた。

何が彼をここまで掻き立てるのか、きっと謎である。


「失礼しました、お恥ずかしい。

件の者たちには助けずとも構わないと宣告してあります。、、、考えると大変失礼な事をしてしまいました。申し訳ありません。

奴らでも賢者様方の露払いくらいはできたでしょうに。今は夜を待って魔物と勝手に戦闘すると言って都の外におります。」


宰相スケサブロウは撫でつけた銀髪に手を当てながらその美貌を少し赤らめた。

そう、スケサブロウは銀髪の彫りの深い美中年だ!

決してマゲなど結っていないし、着物に袴も履いていない!ましてやのっぺり日本人顔でもない!


そんなスケサブロウこと宰相は真希達にではなく、エルフの精鋭に失礼なことを言っている。

まぁ言っていい立場である。いいんじゃない?

もう少数精鋭とも呼びたくないのか奴ら扱いなのも仕方なしだろう。


「スケさん、いや宰相。流石にそのへんで。

賢者殿、聖女殿、クロエ殿、家の宰相がすまんの。すっかり偉大なる存在シュフ様に懸想をしてしまっておるのじゃ。まぁあの時は本当に我が国も終わりかと諦めかけていたものだから、その気持ちも分からんでもないがの。」


かっかっかっかぁー!とまるで某水戸な黄門風に笑うは白髪と粋な髭が特徴の御老人、ジパンヌ国国王ミツクニ=ミト=トクガワであらせられるぞ!頭が高い!控えおろう!


、、、流石にここまで色々を寄せるのはよくないかもしれない。


美中年宰相が王の発言に、うちの上層部みんなで改宗すると言ったでしょうとか、もともとどんな宗教も受け入れて満遍なく色々するお国柄なんだからとか、八百万の神も神ですが偉大なるシュフ様は大神様ですよ、とか言い出して第三騎士団団長にまぁまぁまぁと止められていた。


なんかほのぼのした仲が良い国だなぁと真希、桃香はぼんやりしていた。軽い現実逃避である。


勇者が愛したジパンヌがなんなのか、真希も桃香もわかった気がした。目の前のこれが本当の無礼講状態を見たからだ。


名前が江戸風であるだけではない。

この現代日本にありがちな、やりたいことと楽しいとこだけ乗っかり日本風にしてしまうような宗教観。社員は家族と嘯く古き良き下町の町工場のような城の重鎮たち。

一度ハマると、とことんなヲタク(狂信者)が身近にいなくても何処かにいる感じ。

あと本当に怒らせたら怖い日本人特有のねちっこい感じ。来る、きっと来るあの感じ。

なんとなく雰囲気なんとなくなあの感じ。

空気を読むという外国の人からしたらお前ら何言ってんの?なあの感じ。


日本人ならなんとなく察していただきたい。


ジパンヌへの少しの期待が特大の空振りに終わっても、少しほっこりとした真希達は今夜の作戦を伝え、一番見晴らしのいい城の天守閣へと移動した。


そう、この城には名称天守閣が存在したのだ。城の天辺にあり城内城外、また敵の様子が眺められる場所である。

西洋風の城に天守閣、斬新だ。まぁ見た目は普通に一番高い塔である。

名称は過去の勇者が命名したそうだ。

そういう物や場所がジパンヌには沢山あると説明してくれたのは案内役を買って出てくれた宰相スケサブロウことスケさんである。


真希と桃香は暗くなり始めた城外へ目を向ける。

暗くなる前に鉱山に着くのは無理があったため今夜はまず都に来る魔物の様子を見ようと、天守閣に来たのである。


未だ真希達にも結界の有無がわからない。

真希達は都へと普通に入れた。だから聞くまで弾き返すほどの結界が張ってあるなどとは思わずビックリしたのだ。

魔物だけが弾かれるようで、昼間に偵察に行った第三騎士団の人間は出入りに問題はなかったらしい。

入れないことも考え、一度色々持たせて外に出しすぐ戻らせたら入れたので拍子抜けした、と聞いている。本当に都合のいい結界である。


日が沈み完全な夜になる。

月明かりに照らされ、遠くからこちらへやってくる多くのアンデット系魔物達が見え始めた。

その姿はスケルトン、グールがほとんどを占め、目立つ異形の馬に乗るディラハンが何十体か見える。

どうやらノーライフキングは痺れを切らして今いる全軍で都を襲撃するようだ。ただの考えなしである。


宰相スケサブロウはここ暫くこのような事はなかったと言い顔を青ざめさせた。そしてお供の近衛騎士ムネキチに後を頼み、自身は魔物の軍勢が迫っている事を報告に王の元へ。


真希と桃香は深呼吸を繰り返した。

この国でのモンスタースタンピートはシュフ様の結界のおかげでかなり小規模になっている。

帝国でのそれを見た真希と桃香には数が明らかに少ないことがわかる。


「アンデット系なんて桃香の出番って感じよね、聖女様!」


真希が大きな戦闘の前の緊張を誤魔化すように桃香をからかう。

桃香は素でブー垂れた、聖女なんて黒歴史じゃない!と。すでに黒歴史を超えた者が何をいう!


「そんなこと言っても真希ちゃんも殆ど光魔術で同じことできるよね?賢者様!」


ジト目で真希を見ながら少しふて腐れる桃香だ。

まぁ確かに聖女のユニークスキル聖魔術には劣るものの、賢者である真希も光魔術が使えるためアンデット系ならほぼ無双状態である。

クロエはどこか遠くを見ていた、焦点が合っていない。あまりの規格外に密偵も気が遠くなる。ここまでの旅路で何があったのか。


まぁこの二人がいればアンデット系なんて怖くない!ということなのだ!


だんだんと近づいてくる魔物達、ふと真希と桃香はあの時と同じものを感じていた。あの時よりも小さいけれど確かにあの時、偉大なる存在シュフ様と共にオーガの群れを殲滅したのと同じ。


優しく後押しするように、襲いくる魔物を相手に無数の狙いを定めるのを助けてくれている。

そう自分にできないことでもシュフ様の助力が有れば!


真希と桃香はそれぞれ光魔術と聖魔術を唱え始める。

魔力を込めた詩のような言葉達、師匠エーリカの教え通りに。

ここではその台詞たちは省略する、さらなる黒歴史を残さんとする彼女達の将来ために。

詠唱が終わり魔術のトリガーとなる言葉を発する。


「ジャッジメント」「サンクチュアリ」


まるで太陽に間近で燦々と照らされているような光の洪水。

聖域にいるような清廉な空気と光り輝く絶対者の気配。

都キョートエドは真昼よりも明るい夜の中にいた。


真希と桃香は一瞬目の前が真っ白になりすぐ側にシュフ様の気配を感じた。


数度瞬きすると目も光になれたのか、あたりを見ることができた。


まだ魔術による光は残っている、だから見えた。

アンデット系と言われているだけあり、光属性な真希と聖属性な桃香の魔術の効果は絶大だ。それに偉大なる存在シュフが助力しているのだ、魔物達の全滅は既定事項だった。


だからほぼ何もない平原がそこには広がっていた。

だってアンデット系ってそういうものでしょ?


、、、一番被害があったのにこれは酷いんじゃないの?とどっかの偉大とかなんとか言われている存在が呟いた。

確かに、でも、リビングアーマーの鎧とかなら落ちている!ギリギリ何もないわけじゃないのが救い、、、なのか?







ウリエル達はそれを都キョートエドの近く、一本の木の下で見ていた。

野営の準備をし少しの休憩を入れ、今夜の戦闘と尾行の準備が万端に整った頃には日が沈んだ。


自身の身勝手な願望の垂れ流しとミカエルの暴言のせいで殆ど情報が得られなかったために、今夜来る偵察隊と思しき魔物達の帰りを尾行しようと考えたのだ。察知されれば戦闘し殲滅する。


しかし、その必要は全くと言っていいほどなかった。

今ウリエル達は神聖なる絶大な気配とその使者の魔術の中にいた。


宰相から聞いた、ガルド王国からの援軍の中から最速で都キョートエドへ向かっていた賢者と聖女。

都の歓声は近い所にいたウリエル達にもしっかりと聞こえていたのだ。だから着いていたことは知っていた。

しかしその時はすでに夕刻、だからウリエル達は動くのは明日以降だろうと考えたのだ。


この目の前の光景を、このあまりに圧倒的な存在の気配をなんと思えばいいのか。


日が沈んで少しした頃、ジパンヌ王国の王城の天辺から巨大な二つの魔力を感じた。

そこからはあっという間、すべてが眩い光に包まれ清廉な空気と神聖で偉大な存在の気配。

そして目が見えるようになって広がっていたのは何もない、魔物一体さえいない平原だった。


ここで聖エルリアナ神国の援軍少数精鋭の二十名はミカエルも含め、その神エルリアナに対する宗教を捨てた。

それはあまりに神聖なる圧倒的で絶大な偉大なる存在を間近に感じてしまったが為の改宗であった。


言葉を重ねてもまだ表現できない。そんな偉大なる存在シュフ様を宗教するエルフはまだまだ増えそうだ。



( ゜Д゜)ハァ?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ