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異世界召喚〜勇者(偽)を用意して隠れて私が殲滅する!私は引きこもり主婦ですが?なにか?  作者: 抹茶きなこ
第一章《各国を襲うモンスタースタンピート編》
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四十話 ジパンヌ危機一髪!〜神はお見捨てにならなかった!いや、待て、待て待てい‼︎


その日ジパンヌ国の都キョートエドは歓声に包まれた!

まず昼間に、死んだと思われていた者たちが傷を治して生き返ったのだ!

他の怪我人の傷も治り、体調を崩していた者たちも回復した。

年寄りの膝腰、踵、関節の痛みも消え、泣き腫らした子供にも笑顔が戻り、絶望していたキョートエドっ子は少しの希望を見出した。


それでもやはり魔物が来る夜を恐れた。

しかし、日が沈み敵が現れ、いつもなら異形の馬に乗ったディラハンが何十体も街に入ってきては嬲るように騎士や冒険者達を追いかけ回していたが、その日は違った!


魔物たちは一体も都には入れず、ディラハンは馬で見えない壁にぶつかる様にして跳ね返った。

かなりのダメージを受けるようで、そこから動かない魔物が続出!

魔術で攻撃してきてもそれは倍程の大きさとなって跳ね返され術者を倒す!

それはどの角度から魔物や魔術が飛んできても同じだった。


その時皆が気づいた、都を覆う様に結界が張られていることに。

その日の夜は誰も怪我することなく、逆に紙で指を切るという様な細やかな傷さえすぐに治ったりする過保護な夜を明かした。

朝になると、結界にぶつかり動けなくなっていたディラハンとその馬を代表とした多くの魔物が朝日によって消えていった。


拍手喝采!

それは城にも伝えられた。

そのことを知った王も大喜びし、こちらに向かって急いでくれているガルド王国へと報告したのだった。

これならば間に合うかもしれない、と。


その後、十の夜を明かしたが未だにその奇跡は都キョートエドを覆い守っている。

夜になって怯えるのはまだ変わらないが、人々の顔は希望で輝いていた。


神の奇跡である、あの結界が張られた夜が明けた時に王はこう仰った。


ガルド王国からの援軍であった賢者様と聖女様がこちらの危機を知り、無理を押して他の者が追いつけない速度でこちらに向かっていると!

そしてこの奇跡は、賢者様聖女様に力を貸してくださる偉大なる存在シュフ様のみわざであろうと!


だから都キョートエドで皆がする話は殆どが賢者様と聖女様がもうすぐ来てくださる、というものだった。

しかし、恐ろしいが守られているのを強く感じる夜が明ける時に呟く言葉はただ一つ、偉大なる存在シュフ様への感謝の言葉だ。




おいおいおい!待て、待て待てい‼︎


なんで死者が生き返っとんの???

わしそんなん言うてないよ???

そこは線引きしてたんだがΣ(⚙♜⚙ )

だから帝国でもしなかったんだがΣ(⚙♜⚙ )


てか、やはり出来たのか死者蘇生Σ( ꒪□꒪)‼


『否定そして否定。この世界の死と主人の知識での死では定義が異なります。

この世界での死者に該当する者たちの多くは助かる余地がありました。

そのため心臓が止まっただけで傷を治し心臓が再鼓動すれば助かる人がいるように多くの怪我人は助かりました。

これは主人の指示した魔導【治癒】の効果範囲です。』


いや、それは異世界テンプレであるけどさ?

、、、どんだけ治ったよ?

死者の定義て、、、そんな難しいことは知らん!


『死者として数えられていた人数、5386人。その中で主人の魔導【治癒】で助かった人数、4359人。1027人は首が断ち切られていたり、アンデット化する前に荼毘に付され明らかに死んでいたものです。』


、、、いや、なんか逆に助けられなくて申し訳なくなるんだが。

助けたくなかったわけではない!死者を助け出すとキリが無いから!もう永遠に続くから!そのための線引きなのだよ!

その1027人の人達には本当に申し訳ないが、そこを譲ったらいかんと思うのだよ!ホント!


てか、多すぎなんだよ!

今までは死傷者そんなに多くないよ!

わし達の時はだいたいほぼゼロだったんだがヾ(*`Д´*)ノ

ガヴリエルの罪が重すぎる!罰がたりてない!!!

エルリアナに罰がない!なんでだ⁉︎

キサマァ━m9(゜Д´)ノ━ァァァァッ!!


で、あれでしょ?

反射が倍なのはどうせわしの、倍返しだ!を参考にしたんでしょ?

でどうなった?魔物たちほぼ全滅なんじゃねーの?これ‼︎Σ( ꒪□꒪)‼


『肯定そして否定。主人の発言を参考にして反射は相手に倍返ししてあります。

そして魔物たちですが、リッチの親玉ノーライフキング(変異種)の判断により初日は日が昇る前に全体の四分の一が撤退しました。

次の日には三十体のディラハンが偵察を命じられ、街の様子を眺め特に何も感じなかったので物は試しに半数が街に降りようとして倍で弾き返され行動不能になり翌朝朝陽で消えました。

それが別の魔物に交代しながら10日続いています。

現在結界の確認で消えた魔物の数は151体です。』



四分の一が多いのか少ないのかわからない、という問題。

おおまかに数で言うと?種類はいらない、面倒くさい。


『元々の数がだいたい五万、その四分の一ですので一万二千五百程が撤退しました。

その中で偵察の時に倒れたのが151体、ですので一万と300程度になりました。』


、、、多いのか????あれ?これ俺がおかしいのだな???

てか一万は多いだろ?わからんが。


この人数なら真希さん達だけでもなんとかなるんでない?


『肯定。アンデット系ならば職業聖女の桃香さんは大きな戦力となります。

またエルフの援軍と協力すればより効率的に倒すことが可能です。』


それな!今どこだ?


————————————————————————————-


ジパンヌ国の援軍として聖エルリアナ神国を立ち、あと少しでジパンヌ国の都キョートエドに着くところだった。

我々は目の前に来ていたのだ。


エルフの援軍のリーダーであるウリエルは苦い顔で、一度去った都キョートエドへと馬を走らせている。


都に着く少し前に通話の魔道具で、ドワーフの国に天啓により調査に向かっていた三之宮ガヴリエルから自分と合流する様に、と指示があったのだ。

指示と言っても天啓を口にされればこちらに拒否権はほぼ無い。

例え地位としては聖騎士団総副団長のウリエルが上であったとしても。


それは苦渋の決断だった。

その行為は都キョートエドの人々の命に唾吐く行為であり、聖エルリアナ神国に各国が敵意を向けるのに十分な愚行だった。

そして神エルリアナ様もまた各国に批難されるだろう。

しかし、ウリエル含め援軍にいた者は指示を拒否、出来なかった。


知っていたからだ。

一度ガヴリエルの指示に反して人の命を救った者が裁かれたことを。

そして二之宮殿の神問いで神はその行為をお認めにならず、その者は皆に石打たれて亡くなった。

その家族、縁者も表向きはなんの罪もなく、罰もないが差別される様になる。

それは近いものほど酷いものになり、死したその者の妻は結局死んだ。差別され、虐げられ、最後はひとり、死んだのだ。


自分だけならば、都キョートエドの人々の命のため、都に残ったかもしれない。


しかし、家族を思うと絶対に出来なかった。


それについて、聖エルリアナ神国へ連絡をしたが、やはり天啓であればそちらが優先されると言う答えが返ってきた。

もし神が追認なされば、と言葉は続くがその先はわかっていた。すでに我々は一度結果を見ている。

我らは指示に従い、未曾有のモンスタースタンピートに飲まれかけている人々を、見捨てた。


心がぐちゃぐちゃのまま、馬を駆り指示通りにジパンヌを南東に向けて進んで6日目の夜。

再度、ガヴリエルから通話の魔道具で連絡が来た。

どうせ急かされるのだろうと考えていたのだが、指示を破棄するから早く都キョートエドに向かえ、と言うのだ。

訳がわからなかったが指示を翻される前に通話を打ち切り、もう連絡が来ないことを祈りながら馬を潰す勢いで我らは駆けた。

ただ間に合うようにと祈りながらジパンヌの都キョートエドへ。


そうして5日半後の昼、とうとう都に戻ってきた。

馬はすでに限界を超え、回復魔法でもたせているような状態。だが戻ってこれた!


援軍任務を放棄する前に得たジパンヌ国からの情報では敵は全てアンデット系統、昼間ならば激しくは襲われていない。

しかし外壁を出て都から逃げようとすれば、何処かの影から魔術が飛んでくるだろう、確実に死ぬくらい大量に。

ジパンヌの上層部は知っているだろう、我々が何故こんなに遅くなったのか。

そして何故一度すぐそばまで来て踵を返したのか。


罵声は覚悟の上だ、石も投げられよう。

それだけの事をしたのだ、目の前にある命を救えるのに、愚かな理由で見棄てたのだ。


決意を新たに昼の間に都キョートエドの兵達と合流しようと外壁にある門へと向かう。

周りへの警戒は怠らない。いつ攻撃が来てもおかしくないからだ。

その間に携帯用の通話の魔道具で到着の連絡をした。

相手はジパンヌ王国の宰相だった。

罵声を覚悟していたが、それはなく、もちろん歓迎の言葉もなく淡々と現状の報告を受けた。


援軍が去った日の夜には魔物達は外壁を超え街に入り、人々を嬲るように襲い始めた。

3日4夜で死者は5000人を超えた。怪我人はその3倍は下らない。

皆が夜を恐れ、怪我人は多く、損傷の酷い死者の5分の1はアンデット化しないよう火で灰になるまで燃やされた。


しかし4日目の夜、奇跡が起きた。

都キョートエドを覆う結界により魔物の襲撃を撃退、モンスタースタンピートと化していた軍勢を退け、今では魔物の偵察隊が隙を突こうと結界を探し、見つけられずに突撃し昏倒、朝日で消滅する日々が続く十の夜を超えたようだ。


その時ウリエルは神に感謝した。しかし、それが声に出ていたのだろう。 

宰相の侮蔑を含む冷たい声がそれを否定した。


「それは違う。そちらの都合よく捉えないでいただきたい。

もしくはせめて声に出さないでもらいたい。

今回の奇跡は我々の危機を各国に伝えた後、こちらに向かうガルド王国の援軍に参加されていた賢者様と聖女様が無理を押して都へ向かう事を決断された夜から始まりました。

そのことから賢者様方に力をお貸しになる偉大なる存在シュフ様のみわざであると判断できます。」


ウリエルは偉大なる存在シュフという言葉を知らなかった。

そして、いきなり指示を変えたガヴリエルのことが頭をよぎり、やはり神エルリアナ様のみわざではないのか、という願望が溢れ出す。


「そんな名前聞いたこともない。

こちらの事情で振り回してしまい本当に申し訳ないと思っているが、やはり事情が覆った経緯からもその結界は神エルリアナ様のみわざでは」


ウリエルの言葉は最後まで言わせてもらえなかった。その名前すら聞きたくないとでも言うように宰相は話を被せる。


「貴方方の願望などどうでもいい。一度見捨てた国でもよく回る口ですね。

そう思いたいなら思えばいい。

しかし私達には私達の真実がある!それだけです。」


ウリエルはその言葉を聞いて、確かに願望なのかもしれないと思い始めた。

そして自分が見捨てた国で何を口走ったか、考え恥じ入った。


もし神に都キョートエドを助ける意思があれば我々がここを見捨てることもなく、もし見捨てなければならないならば我々の心を軽くする為にも残されるキョートエドの民衆のためにも、その瞬間から皆に分かるように結界を張っただろう。


しかし、そうではない。そうでは無いのだ。

結界は我らが去った日から3日目の夜を過ぎた後に誰にも分からないようにひっそりと張られた。

魔術に長けたエルフの中でも精鋭である我々にもその結界を感知することはできない。

民衆が気づいたのも魔物が弾かれたり、魔術が跳ね返される場面を目にしたからだ。


ウリエルの心にはすでに神エルリアナへの宗教が無くなりつつあった。


宰相に謝罪し、魔物の殲滅に入る事を告げる。

宰相からはただ、そうですか、とだけ言葉が返ってきた。


それに怒りの声を上げる者が、援軍の中に一人いた。

援軍内でも宗教心の一際厚い若い女性のエルフ、ミカエルだ。


神エルリアナに対する侮辱を責め、そのみわざを得体の知れない存在の功績にするなど愚かだと蔑み、戻って来てやったのにその態度は何だ、我々はそんな汚らわしい異教徒など見捨ててもいいのだ、などとひたすらに世迷言を吐き続ける。


ウリエルはそれの口を塞ぐのが遅れてしまった。

あまりの物言いに呆気に取られていたのだ。

それは周りにいるエルフも同じで、こいつはナンダ?と驚愕している隙にミカエルは暴言を吐き続けたのだ。


ミカエルの口を塞ぎ、宰相に謝罪をと思うが最早何と詫びればいいかわからなかった。

見えないことはわかっていても無言で下げた頭に刺さった声は氷のように冷たかった。


「、、、一度我らをその目の前で見捨て、死者が多数出た今頃戻ってきて、この暴言ですか。

、、、結構です。再度見捨てて下さっても構いません。

こちらは絶対にそちらに頭を下げるような事などしません。できる訳がない!

何故我々を救った偉大なる存在に唾を吐きかけるような者に頭を下げねばならない!

戻ってきてやった?汚らわしい異教徒?ならばお国に帰られるがよろしかろう!」


低い低い憤怒の声が魔道具から響く。当然の怒りだ。

口を塞がれているミカエルが暴れる。こちらも何やら怒っているようだ。本当に愚かだ。


ウリエルはミカエルを気絶させ、宰相に再度深い謝罪をし、これからの行為はこちらが勝手にやる事とし今夜の魔物の尾行及び戦闘を決めた。

宰相から最早返事はなく通話を終えた。


ミカエルがこれ程に愚かだと気付けなかった責任がある。

そして何よりも一度都キョートエドを目の前で見捨て、死者が5000人を超えた責任があるのだ。

、、、最早名誉の回復などできる訳がない。

しかし何もしないわけにはいかない。ジパンヌの援軍であったはずなのだ、我々は。


なのに何故、こんなことになってしまったのか。


ウリエルは空を仰ぎ途方に暮れた。

————————————————————————————-


うわぁぁ(゜Д゜;)

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