三話 王を見ればだいたい分かる国の在り方〜おい!犯罪犯しまくりじゃねーか!
短いです。
私達は謁見の間にて、この国の王と重鎮達と顔を合わせることとなった。
ただ今、姫が王に現状報告中です。
うん、ちゃんと国王陛下って呼んでるし無駄のない、そして理路整然とした報告である。
さっきの無茶振り発言が嘘のようなきちんと王族な姫に、天真爛漫を装った取り込みか作戦か!?と警戒心を強める。
すでに戦闘参加の言質取られた奴のこともしっかり報告してた。
でも奴以外のことは何にも言わない。拒否してるとか嫌がってるとかは敢えて省かれてる。←ここ重要!
はは!できる女だったんだね!姫!
そして王様ですが、、、金には困ってはなさげ?
まぁさすがに異世界の勇者御一行相手にボロ着るわけないか。
無駄に飾り立ててるわけでもなし、ガリガリなわけでもなく顔色も悪くない。でも成金デブじゃないしな。
こちらに異世界のマナーを押し付けるわけでもない。
静かに姫の報告を聞いてるし、重鎮も大人しくしてる。
それなりに出来る王なのだろうな、っていうのが率直な感想である。
ここで馬鹿な貴族か又は王本人が異世界人相手にマナーがどうのってなるラノベ的あるあるも存在するからね!
だからって、こちらをいきなり誘拐してきたことは変わらないし、許さないけどね。
出来る王なら異世界人をあてにせず、自分たちでなんとかしろよってことですよ。
「以上が、今日執り行いました勇者召喚の儀の報告と正義様の答えになります。」
姫が深々とお辞儀をし、私たちの前から少しずれた。
さて、ここからが王のターンなのだろう。
「わしはこの国ガルドの王、カントという。
いきなり呼び寄せ、国のために戦えと言われて困惑しているだろう。しかし、わしらにはもう其方らしか道は残されていない。頼む!この世界を救ってくれ!」
がばっと王が頭を下げた。
さっきの姫よりもずっと深く、玉座から立ち上がり私たちに対して。
金の髪を後ろに撫でつけ、その碧眼には強い意志を感じさせる壮年の男性。
ヨーロッパの中世あたりの偉い男性の絵でも思い浮かべてくれればいい、こちらがかなり恐縮するような威厳と、王族らしい気品が感じられる。
日本人なら年上、しかも高い地位を持つ彼のような男性に頭を下げられたら、すぐにそれをやめさせようとするだろう。
事なかれ主義、または慎み深い日本人の取り扱い方がうまいと見るべきか、誠意があると見るべきか。
今回は前者だろう。
まだこちらに来たばかりの異世界人に自分の地位を認識させ、まだ常識がわからない混乱の中で頭を下げて見せる。
つまり明らかにこちらから言質を取りに来てる。
偉い王族って言わば政治家だぜ?まぁ頭下げんのも仕事だよ、の日本人政治家とはまた違うがよ。
これで許せるほどイイ人ではないので、私は。
「頭を上げてください!
僕に世界を救う力があるなら僕は救いたい!」
奴のことは知らんがな!もう勝手にやって欲しい、私達とは別にな!
王はまだ頭を上げない。
重鎮たちもならって頭を下げ始める。
え?こっちみんなが許すまでやる気?畳み掛けか⁉︎
なかなかにエゲツない。お偉方大勢に頭を下げられて放置しておく図太い神経がないと、ころっと頭を上げてくださいとか言ってしまいそうだ。
勇者というならば、その心は気高いとでも言い伝えられてるのかね?
てかさ、謝罪は聞いたけど許さないし、その後の説明とかに移れやクソが!
「少しよろしいでしょうか?
こちらは何も知らぬ身。
これをしっかりのそちらに認識していただきたい。
その認識があれば、こちらが困惑しているとちゃんと理解していれば、今のような行動には絶対にならないはずです。
私達はその頭を下げる行為になにを返せばいいかの答えすら出せない状況なのですから。
いえ、今の時点ではその謝罪を受け入れることはできないと言わせていただきます。もちろん、そちらの要望も受け入れられない。これはさきほどそちらの姫殿下にも言ったことです。
まずはすべての適切かつ微細な説明を求めます」
真希さんキレたぜ!そう、私じゃないよ、真希さん!
しかし、完全に同意だわーこちらはキレて暴れ回って、犯人ならズタボロにして瀕死にしていいくらいのことされとるんよー異世界からの拉致誘拐てどんだけの罪になるのかね?私的には死罪も適用範囲内だと思います!
で、頭下げるから許して、はないやろ?幼稚園児か?!
それが誠意だとは思わんなぁ!
しかし奴は全くこちらの気持ちなどわかっていないようだ。
「真希!王様に失礼だぞ!僕らにしか縋れなかったんだ、仕方のないことなんだよ!さっきこの世界を救うって決めたじゃないか!」
決めてねーよ!!!!!
なんだ?幻覚でもみとんのか!!!(怒)
しかも真希さんを失礼な奴扱いだと!?正当な主張だが!!
やはり自分の決断(笑)に真希さん達も従うと思ってる模様、バカか!馬鹿だ!
桃香さんが顔を真っ赤にして真希さんを背に庇い、奴に詰め寄り、真希さんの発言を邪魔させないようにしている。めちゃくちゃ怒ってる。そこそこ声は抑えてるけど息継ぎしてる?てくらい捲し立ててる!いいぞ!もっとやれ!
ここで真希さんと桃香さんは奴を切り捨てたようだ。
「こちらの正義と私達は別として扱っていただきたい。
彼の発言は何一つ私たちの意思を反映していない。例え彼が私達の意思だといったとしても、それは勝手に都合よく彼が解釈しものだとここで明言させていただく。
きちんとした説明はこのような豪華で威圧的な場所ではなく、落ち着いて話せる部屋でお願いしたい。
もちろん、ちゃんとした責任ある立場の方からの説明を求めます。質問もさせていただきたいですし、考える時間も必要なのは地位のある立場の方ならばおわかりですよね?」
かっけー!真希さんかっけー!
聡明だな。確かにここは圧迫面接もかくやというほどの圧がある。
偉い人たちが集まり頭を下げてわざわざこれから説明をする?
誠意を見せてるようでもあるが、こちらのことを考えているかと言われれば、間違いなく考えていない。
というか、さっきの行動を考えると、敢えてこの状況にして精神的に圧力をかけてきたと見るべきだ。
ここは公の場、つまりここでの発言はすべて公のものとなる。
そんな場所でのいきなりの王の謝罪。しかもまだ詳しい説明はないのだ。
謝罪になんと答えるかが正式な返答とされるのは、あまりにもこちらの都合を考えていない。まぢで自分勝手な!
謝ってちゃんと説明して、そして考える時間を与えるくらいして、やっと話し合いのスタート地点に立てる感じよな〜!
あ、王が苦虫噛み潰した顔してる(笑)
ざまぁー!!!!
うん、ハードモードとはいかないまでもイージーモードではない様子。
なにかな?
召喚されたばかりの異世界人である私達がここでした意見を反転させても信用問題などの弊害はかなり少ない。てか、ないんじゃね?
いきなり異世界に拉致した人間に説明もなくお願い(意訳)の回答を強要する方が信用問題になる気がするのは私だけ?
それでもわざわざ言質を取りに来た。地下室からずっと、それは変わらない。
つまり、そういう契約魔法的なものがこの謁見の間には発現していると考えるべきだな。
召喚魔術で連れてこられたんだ。ここでも何かしていないと思うのは甘いだろ。
この世界、黒い!ゲスい!エグい!嫌い!
、、、ああ!ああ!!ああ!!!なるほど!
真希さんの発言もまたその契約魔法にきっちりと記録されたのだろう!逆にこちらの有利に働いたわけだ!
だからこそのあの顔。
もしかしたら正義の発言をもとに強引にそちらにもっていこうと考えていたのかな?
いや、そこまで楽観的とは思えない。
契約魔法が私たちの失言もしくは正義の決断(笑)をこちらが否定しないとそのまま肯定したことになるよう契約として強制できると考えると、
①王は召喚者に謝罪、戦いへの参加を要請
(謝罪することで誘拐の責任を逃れ、その謝罪を受諾すればそのまま戦闘参加も強制?)
②正義はこれを受諾、戦いへの参加を表明
(召喚者全員が受諾したと発言)
③真希は謝罪を拒否、こちらへの認識を改めるよう要請
④戦闘への参加を拒否
⑤場所を改めて責任ある者の説明を要請し、こちらに考える時間を求める
⑥正義の発言の否定、今後正義の発言に自分たちの意思は反映されてないと明言
こんなもんか。
ここで一言でもむこうの発言を容認したり曖昧にしたままならアウトだっただろうなぁ。
謝罪を受け取らないことが予想外だったようだ。
まずはこちらの印象をよくして正義の言葉通りに持っていこうとしたのかな?
上手くいけば、戦いへの参加をもぎ取る気だったかんじか????
???いや、顔色を変えた、、、王が顔色を変えるほどの術、、、やっべ!これハードモードだ!
すなわち、見えない隷属の首輪か!!!
それだけの強制力を持つ術をこの部屋に、(またはあの地下室からか?)かけた。
つまりは、それだけここでの発言は絶対的ということ。
だからこそ、自分を守るためここで初めて私は発言した。
「以下のことを宣言する。
一、この謁見の間、または先ほどの地下室にこの世界に属する誰かにより私達の言動、思考などを強制するような効果をもたらす術、物、その他があった場合、私達はこちらが不利益となる要求をすべて拒否する。
さきほどの謝罪をもとにその責任を果たす意思があることを認め以下をその責任の対価とする。
一、この国は私達に元の世界への帰還するすべを提供すること、ないならば開発を行うこと
一、おなじく、私達への心身に対する攻撃とみなせる行為を禁ずること
一、おなじく、こちらでのそれ相応の衣食住を保証すること
一、おなじく、この世界での正しい相応の知識を授けること
一、もし、戦いに赴くことを正確な説明のもと受諾した場合、そのものが生きて帰れるよう最大限の助力をすること
最後にこの”私達”にはこのたびの召喚によりこの世界へ来たものすべてが含まれることとする。」
その瞬間、王が極限まで目を見開き、重鎮たちも今気づいたように私を凝視し、異世界人三人もこちらを見ていた。
さて、ハードモードならばこちらでの待遇を保証していただきましょう?
私はお前らの都合のいい駒ではないのだから。
ハードモードが確定した!くっそ面倒!
まずは知識、物資を仕入れ、逃げる準備だ。あとはこの城の内情を探りますかね。
あったらいいな、帰る方法。期待はできねーがな!!!!