三十八話 勇者たちが愛したジパンヌへ〜屑エルフ!ガヴリエルの愚行そしてジパンヌ滅亡へ⁉︎
人間の国ジパンヌ以外で起きたモンスタースタンピートは収束した。
ジパンヌにはエルフの少数精鋭が向かっているが、もしもの時のために勇者一団は一路ジパンヌへ!
まぁ勇者召喚した言い訳ですよ!
召喚したのはみんなを助けるためだよ!だから、ほら!助けに行くでしょ!って奴です!
言い訳の為に勇者達を行かせるクズな国ですよ!ガルド王国は!
てかさ、エルフの国的には帝国のが近いんだから勇者一団はジパンヌに向かうべきだったんじゃね?
なにか?移動速度の差???エルフのが早くてすでについてるとか???
『推測。それぞれの援軍が出発した際、まだ勇者は召喚されていません。
また帝国は主人がご存知の通りアレでしたのでプライドの高いエルフが助力するのは難しいと推察します。そのためエルフの少数精鋭は無駄なく、帝国は置いておいてジパンヌに向かったと考えられます。
そして残っていた帝国に勇者たちが当てられた可能性が高いです。
また移動速度はそれほど変わりません。ですのでエルフの援軍は今現在ジパンヌ国内をその都へ向けて進んでいます。』
おい!おいおーい、帝国よ!どこまで悪名轟かせとるんじゃい!
そして残りの嫌な国を他人(異世界人ですから他人ですよ!)に任せるこの世界の住人よ!
なによりガルド王国!お前らそんなこと言ってなかったろうよ!!!
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ガルド王国国王カントよ、水虫になれ!
勇者一団を色々な手段で囲い込みを目論む帝国貴族をかわして帝都を出発、順調に帝国内を西に進む街道を進み、もうすぐで帝国からジパンヌとの国境を越える。
召喚者たちの興味は皆が言う《歴代の勇者たちが愛したジパンヌ》という言葉だ。
小説の異世界ものではだいたい米と味噌、醤油を懐かしみ開発したり見付けたりするのだが、その中でもまるで外国人が考える江戸時代の日本のような国というものがある。
そしてそこで日本伝統の主食と調味料を見つけるのまでの流れがお約束なのだが、真希と桃香のアイテムボックスには必ず一定量のおにぎり各種とカップ味噌汁などが入っているのであまりそういうのは探していない。
ただタイムスリップ的な江戸の町には興味がある。
なにより”愛した”とまで言われるのだ、何かあって欲しいではないか!
アンネリーネやエーリカ、クロエにも聞くのだが所謂現地人な彼女たちには何がそんなに勇者達の琴線に触れているのかは分からないらしい。
また言い伝えとして残っているものではその国の名前を聞いて皆が反応する、と書かれているらしい。
真希達的には、そりゃそうでしょ!であるが現地人たるアンネリーネたちには、なんで?なのである。
「確かジパンヌの主食はパンよりは米が多いと聞きますが、我がガルド王国でも米はよく食べられますわ!味噌と醤油も輸入しておりますし、、、あとは城の形状が異なりますが、それは他の国にも言えることですし。」
アンネリーネの話でわかるのは、とにかく行けば分かるか、ということだけであった!
アンネリーネは今回、何も悪くないことだけに残念だ。
国境を越えジパンヌ国内を西へ、そこそこ魔物の襲撃に遭うもすでにレベル100を超えた正義、真希、桃香は無双した!一撃必殺とはまさにこの事!
正義は調子に乗った!いつものことだ。
しかし真希や桃香は大きくなった力を使いこなすべく、すべての魔物相手に手を抜かない。
ジパンヌ国内ではいまだ町には着いておらず、野営が続いている。
ジパンヌもそれまでと変わらない風景だった。
なんか侍とかはいない。特に人とすれ違いもしてないが。
まぁ野営もアイテムボックスに山と入った旅道具と食料で下手な町の宿より快適である。
ただ夜にだけ出る魔物というものを真希、桃香、正義はここで初めて体験した。
アンデット系魔物、グールである。
人型は散々倒してきたがこれはまた別、腐った臭い、その体が動くときの音、これまでにない程に気持ち悪かった!
ここで真価を発揮したのが、そう!職業聖女の桃香である!
ユニークスキルに聖魔術がある桃香は悲鳴を上げながらそれを多用、殲滅した。
そう、悲鳴を上げ逃げ惑いながらの殲滅である。
桃香は別にゾンビ映画が苦手で男子に抱きつく系女子ではない!
ただ本物はヤバイ!それだけだ!
そしてジパンヌ初の町に到着した。
流石に帝国へ行った時と違い馬を潰す勢いの旅路ではないので、すでに帝国を出てから三週間が経過している。
その町も特に侍もいない。町娘は居るが着物を着たりはしていない、普通の町娘だ。
言いたいことはなんとなくわかってもらえると思う。
暴れる将軍が遊び人になって助ける、そういう町娘ではない。
この微妙な物言いでわかって欲しい!
ガルド王国を出てから、と考えるとだいたい2ヶ月と少しが経っている。
アンネリーネ的にはもう少し大きな都市で救援に来たという既成事実を作ったらのんびりお友達との旅行を楽しんでもいいのではありませんの?と考えていたりする。
そろそろエルフの援軍が大規模殲滅魔法を唱えてたり、もしかしたら収束していてもおかしくない時期だからだ。
自分たちの出番はないだろう。
久しぶりの宿。
皆が一人部屋を取れるほどは大きくはないので真希と桃香、アンネリーネとエーリカ、正義とカイウス、そしてマックス、クロエは一人部屋である。
まぁだいたい今までも小さめの宿の時はこのような組み合わせであった。
クロエは密かな諜報活動もあるのだ!ひとり部屋はほぼ必須!
マックスは基本カイウスとクロエと交替しながら警戒に当たっている。それも帝国を出てからは、大分緩い警備に変わった。
帝国は敵国、ジパンヌは友好国。その違いである。
緩くても警備するのはそれがプロだからだ!高貴な方たちの警護は常識である。
お姫様はひとり部屋だろ!と思った、そこのあなた!
姫が一人で服を着れますか!
一人で起きれますか!
一人でドアを開けますか!
出来ないでしょうが!!!!
いや、今回の旅で流石にアンネリーネも扉を開けたことは何度もある。
しかし、城では全部やったことがなかったのだ!!
だって全部メイドか執事がやりますわよね?っていうホントにちゃんと王女なアンネリーネなのだ!
そんな奴、普通は旅ではポンコツになるだけだがアンネリーネは違う!
服は手伝ってもらえれば旅装なら着れるし起きるのもエーリカが声をかけてくれれば起きれる!
扉なんて一人で開けたことすらあるのだ!
いまだに一人で馬には乗れずエーリカの後ろだが、後ろに乗ることに関してはベテランだ!
因みに正義とアンネリーネ以外は1人で乗れる。
桃香はスキル馬術を懸命の努力でついに手に入れ一人でお馬さんに乗ってジパンヌを闊歩している!
まぁそんなこんなで二人部屋なアンネリーネだが、ガルド王国へ定期連絡を行なっている。
エーリカは扉の外で見張り役だ。
ほら、第一級筆頭魔術師であっても国家な機密は聞けないし、一緒にいてたまたま聞こえても消されるしで、怖いし、面倒だし、だから誰にも聞かれないように見張りをしているのだ。
しっかり防御と消音の結界を張るのも忘れない。できる女エーリカ!
そんなエーリカに守られた部屋でアンネリーネは父王の言葉に叫び声を上げていた。
「どういうことですの⁉︎」
アンネリーネにしては取り乱している。
この通話は水虫な父王だけではなく宰相も近頃頭髪が寂しくなってきた総大将も聞いているのだが。
「ジパンヌの都にまだエルフの援軍がついてないなんて!明らかにおかしいですわ!わたくしたちでさえもうジパンヌ国内にいますのよ!?」
そうアンネリーネが取り乱すだけのことはある事態である。
アンネリーネ達が帝都にいる時すでにジパンヌ入りを果たしていたエルフの援軍だ。
都に到着してモンスタースタンピートが収束していてもいいくらいの時間が経過している。
なのに到着すらしていないと言うのだ。
「、、、失礼いたしました。取り乱しましたわ。申し訳ございません、陛下。そのことについて聖エルリアナ神国はなんと?」
しばらく目を瞑り額に手を当て押し黙った後、冷静を取り戻したアンネリーネは現状把握に乗り出す。
アンネリーネたち同様、援軍もまた携帯用の通話の魔道具は所持しているはずである。
アンネリーネは一週間に一度はかならず定期連絡をとっているし、非常時には直ぐに王の判断を仰ぐ為に連絡している。
ある程度の裁量を認められた王女アンネリーネでさえ、この頻度なのだ。
援軍に国としての決定を下せる王族かそれに等しい地位の人間がいれば別だが、普通ならこれ以上に頻繁に連絡を入れていなければおかしい。
「聖エルリアナ神国からの説明はこうだ。
今回モンスタースタンピートの原因究明のために動いていた巫女姫の三之宮であるガヴリエル=エルリアナの指示のもと、ジパンヌの都に向かっていた援軍はそのガヴリエルとの合流を優先した、と。
この説明をした外務二之宮殿は困惑されていた。
どうやら三之宮ガヴリエルは天啓により原因究明を目指している。そのため三之宮の一人であるガヴリエルより高位のものも、その行動を止められないようだ。」
王の説明に絶句。
何故なら聖エルリアナ神国の神エルリアナ以外言葉でそれを止められないからだ。
神の天啓はその実行者に神にも等しい権限を持たせる、その神の僕達の中でだけだが。
それに巻き込まれたこっちは堪ったものではない!
つまりジパンヌ国滅亡特大フラグである。
今滞在している町は小さな宿があるくらいには栄えている、ホントにちょっとだが。
ここで聞く噂はだいたいエルフがここを通って都へ行った事、町自体に魔物が攻めてくることはないこと。
そしてほぼ物流が滞って大分経つこと、である。
この町の宿での食事はモンスタースタンピートで物流が滞っていることを考えればかなりマシな部類に入る。
しかし野営での食事、つまりアイテムボックスに入っているちゃんとしたものに比べると保存食を利用している比率が高い。
保存食の塩漬けの肉をゆっくりじっくり煮て塩抜きをし作ったであろうメインの肉料理、そしてメインの煮汁を使った干し根菜中心のスープ、パンは各家庭で焼くのか黒パンだが焼きたてとは言わないもののそれなりのものが出た。
麦はまだ客に出せるほど多めにあると言うこと。
もしも逼迫していたら宿自体が閉まっている。宿が開いているがやはり食料は非常食である干し肉、干し野菜に手を出さざるを得ないくらいには減っている。
この町はまだ畑も多いし、少しだが麦も流通しているようだ。
近くの町と畑の野菜を物々交換でもしているのだろう。魔物がこの辺りでは大幅に増えていない証拠とも言える。
小規模なものが起き始めて一年、大規模なものが起き3ヶ月間立てこもり、ガルド王国が召喚を行い2ヶ月半。
つまり半年、大規模なモンスタースタンピートが起き、各国の主な都市が取り囲まれたり襲われてからそれだけ経つのだ。
ジパンヌの都市部が無事であることを、備蓄が多いことを願うしかない。
「ジパンヌの都は、なんと?」
雰囲気は最悪である。ジパンヌが無傷である可能性はかなり低い。
そして閉め切られた都内で暴動が起きていても不思議はない。
エルフは、聖エルリアナ神国は、他の国全てを敵に回したと言っていい。
「ジパンヌの都キョートエドはすでに攻め込まれている。魔物達が2日ほど前から外壁の上を超えてきているようだ。
都を守る外壁自体はまだ突破されてはいないがそれも時間の問題だろう。
それでも、既に死者も少なくない数出ている。
魔物は全てアンデット系列のもの。
確認されている中で一番多いのがスケルトンだ。次にリビングアーマー、ディラハンも確認されている。そしてそれらを指揮しているのがおそらくリッチだ。」
最悪とは続くもので、ディラハンなら異形の馬を使って塀を飛び越えることも可能だ。
それが複数体いると見るべきなのだ。今までのスタンピートのことを考えるとそれも変異種だろう。
なによりも最悪なのは魔術のスペシャリストと言えるリッチの存在だ。もしかしたら不死者の王ノーライフキングがまだいる可能性もある。
この強力な魔物たちならば魔術で一斉に塀など関係なく街を、城を攻撃できるだろう。
すでにジパンヌは未曾有のモンスタースタンピートに飲み込まれ始めている。時が来たら一瞬で飲まれる。
「ここから無理をして向かうとしても、、、ガルド王国で使った馬を限界まで酷使し街で交換という方法は使えませんわ。ですので早くともやはり二週間はかかってしまいますわ。」
苦い声がでる。何故ならそれは間に合わない事を告げるのと変わらないからだ。二週間、持ち堪えてくれるとは思えない。
「一度失礼して、皆と情報を共有したいと思いますが許可いただけますでしょうか?」
アンネリーネにはもしかしたら、という考えがあった。それを自分から口にするのは憚られたために言葉にはしない。
「なるほど。そうだな、情報共有は必要だろう。こちらも情報を今少し集めよう。今夜連絡を、何時になっても構わん。」
父王はアンネリーネの考えに気づいたのか、こちらの情報共有に賛成し新たな情報のために時間を割くと言うと通信を終えた。
その後アンネリーネの要請に従い、皆がアンネリーネの部屋に集まる。淑女の部屋だなんだとは言っていられない。
カイウスは外で警備だ。
エーリカに再度結界を頼み、アンネリーネはエルフの援軍がジパンヌの都に到着していないこと、また今は向かってもいないことを話した。理由もきっちり話した。
アンネリーネの中ではすでに《神エルリアナ=無能で害悪》の図式が出来上がっていた。
使えない部下に重要な任務を任せる上司は無能な上に権力を持っている分たちの悪い害悪と言えよう!
例え今回のこの件が神エルリアナの直接の指示でなくとも、その責任は神エルリアナにもありますわ!!(憤怒)
アンネリーネの怒りは凄まじい!
そんなアンネリーネは状況説明時にどうか向こうから提案して欲しいと思っていた件について口にする。
何故なら提案されなかったから。まぁされるわけないだろう。
ここで、このことを口にしその怒りを買うのは恐ろしいがアンネリーネは自身の責任を果たさねばならない。
例え断れられても問うという責任だけでも果たさねば。
アンネリーネはバ神とは違うのだ!
責任ある立場にいるのならばその責務を果たさないことは害悪!
できることは全てやって初めて責務を果たしたと言えるのだから!
それがどんなに他力本願で厚顔無恥な行為でも。まぁそれも今更なことである。勇者召喚しといて本当に今更である。
だからアンネリーネは真希、桃香、正義に問う。
「偉大なる存在シュフ様にどうかお願いできないでしょうか。」
真希と桃香がとてつもなく苦い顔をした。
正義は何も考えることなく返事をする。
「無理だろう。それを僕らに願うこと自体が偉大なる存在への不敬だよ。アンネリーネは義務を果たしているだけだと分かっているけど、流石に不愉快だ。」
まさか!まさか!正義がまともな事を言った!
これはジパンヌに槍が降る未来もあるかもしれない!
勇者召喚で既に異世界人を拉致し自国を救わせ、自国の都合で他国の救援を願い、その他国との取引の材料にもしている。
そしてその願いである他国も救い、また自己弁護のために別の国に救援の旅を続けさせているのだ。
ホント、ガルド王国屑だな。
ビックリする程言葉にしてみたらガルド王国どんだけ外道!
そしてどんだけ勇者たちを都合のいい武力扱いしているかがハッキリしっかりわかると言うものだ。
そんな勇者たちを、助け、守り、力を貸してくれる存在に、ジパンヌを守れとはどれだけ厚顔無恥な願いか。
アンネリーネは分かっていた。
しかし可能性があるのならばガルド王国の王女として、この勇者一団の責任者として、ジパンヌを思うひとりの人間として、問わないと言う選択肢はなかった。
「そう、ですわね。分かっては、いるのです。
しかし確認だけでもせねば、わたくしはガルド王国王女アンネリーネ=アレクサンドリス=エリザベト=ガルドなのですから。
厚顔無恥な振る舞いを謝罪いたしますわ。申し訳ありませんでした。」
その謝罪は深く深く頭を下げ、告げられたものだった。王女の謝意が伝わってくる。
しかし、それはそれである。
勇者たちを都合のいい武力とするばかりか、今度はその守護神とも言える存在までガルド王国の都合で動かそうとする。
たしかにジパンヌは気の毒だし、助けたいとは思う。
しかしそれは自分の手が届くならだ。自分勝手に自分の手は汚さず、シュフ様の力だけに頼ろうとは思わない。
それは真希、桃香、正義、全員の総意である。
「私も例えできても頼む気はありません。そんな事できるわけがないでしょう!」
真希も流石に激昂した。シュフは真希にとっても大恩人、そして自分たちを守護してくれているまさに神様だ。
しかしアンネリーネの気持ちもわかるから激昂しても真希は提案する。
「、、、私達は馬に身体強化をかけることが出来るわ。
それにレベルが上がっているから体力もある。
私達だけで最速でジパンヌの都へ向かいます。道案内にクロエを連れて行くわ。クロエは軽いし私の後ろなら馬の速度も落ちないから。」
ここで私達だけで行く発言である。
それは仕方ない、何故なら正義は馬への身体強化は出来ないし、馬にもひとりでは乗れない。
馬の後ろに乗せることは、真希にはできるが桃香にはまだできない。
そして道案内が必要なのだ。このメンバーからならクロエを選ぶ。
身軽さと戦闘力、そしてその諜報能力を買っての人選だ。
「それは!、、、クロエでなければなりませんの?」
アンネリーネ的にはクロエは新米騎士、ガルド王国の重しにしても忠誠心にしても足りていない。
「ここに来て、まだそんなこと!、、、クロエさん道案内お願いできるかな?」
それに答えたのは桃香の怒りの声。真希もアンネリーネを侮蔑を込めた目で見ている。
ここに来てまだこちらを縛る鎖を、と考えるアンネリーネに先ほどのこともあり途轍もない怒りが湧いたのだ。だからアンネリーネは無視してクロエに話しかける。
新米騎士クロエはそれに答えられない。何故なら意思決定権はマックスもしくはアンネリーネにあるからだ。ちらりとクロエはマックスを見る。
マックスはうなずき、アンネリーネを諭すように話し出す。
「アンネリーネ様、ここは提案に感謝して真希様たちにお願いしましょう。案内役がクロエなのもこのメンツを考えると妥当です。速度を優先するには私でもアンネリーネ様でもダメでしょう。」
アンネリーネはマックスの話を聞いて自身が欲張り過ぎたことに気がついた。
神エルリアナと三之宮の所業に頭に血が上っていたと言えばその通りだが、今の発言で真希、桃香のアンネリーネへの信頼は失われただろう。自分の無能さに愕然とした。
これ以上言い募るのは悪手。
せめてこれ以上の無様を晒さぬようアンネリーネは言い訳はせず、謝罪と提案への感謝を告げる。
「申し訳ありません。真希さんの提案に有り難く乗らせていただきます。クロエ、しっかりとお役目を果たしなさい。」
こうして真希と桃香、クロエの三人がここから最高速度で都へと向かうことになる。
旅で使う自身の荷物はそれぞれのアイテムボックスに入っている。食事と馬に関するあれこれを正義から受け取り、明日の早朝出発する。
2ヶ月を超える旅で真希や桃香とある程度信頼関係ができていたアンネリーネ。しかし今回のことでそれは脆くも崩れ去った。
まだシュフへのお願いだけなら、その責任からの言葉だから真希達も面白くはないが少し信頼を失うくらいで済んだかもしれない。その願いがジパンヌを心配してのものでもあったからだ。
しかし、最後のものは違う。明らかにガルド王国の利を取るための判断と問い。
もしクロエでなくても良いと答えればこちらを繋ぎ止めることのできる人選になっただろう。マックスかアンネリーネ本人である。
それが分かったから桃香は激怒したし、真希は軽蔑の眼差しでアンネリーネを見たのだ。
アンネリーネは激しく激しく落ち込んだ。
もうお友達なんて言えませんわ!もう無理ですわ!
大号泣である。
父王への報告はきっちりしっかりした。
しかしその鼻声に気づかれ、宰相と総大将抜きで父に慰められ励まされ、またも号泣。
通話が終わった後はエーリカにまで励まされ、またまた号泣し目は真っ赤、まぶたは腫れた。
こんなことは初めてなアンネリーネにエーリカが治癒魔法でそれを治してあげていた。
ある種微笑ましい光景であった。
本当で本当の自身の大失敗により生まれて初めてのお友達を失ってしまった。その落ち込みもまた生まれて初めてのものであった。
しかし父王とエーリカの慰めに、このままお友達解消なんて嫌ですわ!と一丸発起、ここから何とか巻き返しを図るようだ。
これまでのやり取りで、すでにエーリカとは友達関係にあると気づけないのが今まで友達のいなかったアンネリーネの低い友達力のなせる技である。
まぁその決意も真希達がジパンヌへ向かう事でしばらく会えず、一度萎んでしまう。
そしてまた父王とエーリカ、マックスに慰められ、また決意するのだがそれはまた後の話。