三十四話 馬鹿皇帝のせいで時間がある〜そうだ!前帝マルクスたちの様子を見ておこう!
残酷な表現や近親婚などの話があります。大丈夫な方だけどうぞ!
流石は屑の息子ルキウス、帝国内では優秀なのかもしれんがあまりに傲慢だったな!あと馬鹿だな!
その息子が賢明でよかったわぁ、マルクスの孫なのに!ルキウスの子供なのに!
驚愕Σ(⚙♜⚙ )
皇帝変わっちゃったし、どうやら真希さんたちは待機のようだ。当たり前っちゃ当たり前よな(笑)
まぁなんだかんだ言っても最終的には間に合わなくても助ける選択をするだろう。その方がまだマシだからだ。
時間ができ、私的には帝都は結界があるので大丈夫だとわかっているわけだ。
それに知恵の回る元人間はマルクス前前?帝のとこにいる。
うん、何の問題もないな!
どれどれと、きっとどろどろの泥沼劇になってるマルクス達のいる祈りの場を覗く。
ヴィクトリアは目の前にいる老人を呆然と見ている。
先程まで魔物たちが帝都を取り囲み、威圧する様をその背後からただただ見ていた。魔物となってしまった息子を抱きしめながら。
ヴィクトリアは貴族の血を引きながら、孤児となり、そういう曰くのある孤児専門の孤児院で育った。
その血筋ゆえに麗しい顔を持つ者、賢い者、狡猾な者、何人もの子供が貴族のもとへ囲われていった。仕事を与えられた者もいただろうし、本当に囲われものとなった者もいただろう。
ヴィクトリアはその間どこにも行かなかった。ただ勉学をこなし、それなりの教養を身につけ、将来1人でも生きていけるようにと必死に生きていた。
だが14歳のある日、貴族の子供が通う学園へと通うこととなる。何故かは知らないが、入学の手続きがなされており、他の新入生より一月ほど遅れて通い始めたヴィクトリアは学園の門を潜った。
多くの上級貴族が家庭教師により家で教育を受けるのに対し、領地を持たず宮仕することで生活する下級貴族は帝都で暮らし帝都にあるこの学園に子供を預け教育させる。
マークイン子爵家もそんな貴族のうちの一つであった。
だからヴィクトリアはその後マークイン子爵となるアルキスと恋に落ち、結婚したのだ。
マークイン子爵家に嫁ぎ子を産み、夫のアルキス、息子のマルキヌスと幸せに暮らしてきた。
それなりに裕福で優しさと愛のある暮らし、子供の頃あの孤児院では夢にも思わなかった暮らしだった。
だから、バチが当たったのだろうか。
息子のマルキヌスも二十三になり、時が過ぎるのも早いものね、と笑っていた。
夫が少し難しい顔をして果物を持ってきたのだ。
真っ赤で丸く林檎より少し大きな果物。
どうしたの?と尋ねると前帝陛下からの下賜品だと言われて驚いてしまった。
子爵では皇帝陛下へのお目通りは叶わない。下級貴族とはそういうものだ。夫の年は今年で49、12年前に今の皇帝陛下が即位されたのだから当時は37だ。
なにか仕事で関わりがあったのだろうか。
苦い顔をした夫の手から果物を取り上げ、メイドのミユと共にキッチンへ。
子爵なんていってもメイドは彼女1人だけ、お客様がくる時は彼女の父親であるカリヌスが家令を務めてくれる。
彼は高齢だからそれ以外は自分の家でゆっくりしてもらっているの。でもちゃんと雇っているのよ、報酬はしっかり2人分。
果物を切り分けて、ミユには帰ってもらう。
あとは私がいればことは済むし、家族だけの時間も欲しいから。
2人が待つ食堂にはいると夫のアルキスが珍しくしかめっ面で笑ってしまう。
テーブルに皿を置き、シワの寄った眉間を指でほぐしてから額にキスを送る。
すると夫が少し笑ったから私は揶揄ってみたの。
「貴方、下賜品を頂けるなんて何かとってもすごいお仕事なさったのね!ずっとずっと昔の事みたいだけれど。もう退位されてから12年は経つでしょう?」
私の質問に答えるのを拒むように夫はカットされた果物を口にして、息子もそれに続いた。私もなんだか居心地が悪い気がして果物を口にした。
私は考えるべきだったのだ。何故9も年上の夫が下級貴族の子供の通う学園なんかに足を運んでいたのか、賜わる地位が子爵といえど、彼が元は侯爵家の子供である限り学園と縁深いわけがないことも。
ストップストップストップ!!
待って下さーい!
やめてーーー!やめて下さい!
ヴィクトリアがまずい、なに⁉︎
まずマークイン子爵家全員を隔離、睡眠魔法。
なに?夫の野郎は知ってたのか?ヴィクトリアのことを?自分のことも?
『肯定そして否定。
当時侯爵家三男であったアルキスはヴィクトリアが高貴な血筋であることをアルドバルド侯爵(母親)に聞き、そして指示され学園へと足を運んでいました。
自身の父親については気付いていません。』
高貴ってマルクスとその叔母の話?
『否定そして肯定。マルクスのことについてはアルトバン侯爵(母親)は知らず、その叔母オクタヴィアル公爵夫人の娘とだけ伝えています。』
ん?なんか言葉が曖昧だ。なにがある?
『ヴィクトリアが学園に上がったのはマルクスの指示があったからです。そしてマルクスはそれを偽装すらしておらず、ヴィクトリアがマークイン子爵家に嫁ぎ、子供を産んだ後に、その事を侯爵(母親)が知りました。
しかし、侯爵でも流石に皇帝の行為を偽装もできず、その後アルキスが侯爵家の持つ爵位の内、子爵を継ぐときにせめて自分の口から、と伝えました。もしここで伝えなかったとしても子爵になったアルキスはすぐにヴィクトリアの影にいたマルクスの存在に気づいたでしょう。』
マルクスはどこまでも杜撰だな!
いや、誇らしくでも思っていたのか?馬鹿が。
さっきから(母親)ってのは、あれか?帝国は女性の権利が保障されてるとかガルドの宰相が言ってた、女も普通に継げるのか???
『肯定そして肯定。先代アルトバン侯爵は女性でした。アバロン帝国では帝位も爵位も婚姻関係にある男女の間の子供であれば、性別関係なく指名制で後継者とできます。ただし、もしその子供全員が死亡した場合、またはその血統が疑わしい場合はその限りではありません。』
あ、シドニスの妻が侯爵家からきてるのにクラウスの娘とか言ってたな。
『肯定。シドニスの妻はカープラル伯爵クラウスとアルトバン侯爵との子供です。』
なんか、婚姻関係のある男女だなんだ言ってるけどガンガンにそうじゃない子供いすぎじゃね?
シドニスそうじゃん?まぁ義父が屑だったからね、あそこはね!
『肯定。婚姻関係のある男女、の部分は既に形骸化しています。しかし血統への執着は他の国の貴族と変わらず、ほぼ当主かその妻にその血が繋がっています。
法として定められているため、そこを訴え出られれば負けます。』
、、、訴えで出られればね!その前に何かしらで黙らされるってね!?
うむ、いいや!どうでもいいや!
いや、ありがとう!キュート!ワシが聞いたんやしな!わしが悪いんやな、そんな細かいこといいじゃない!
(๑•̀ㅂ•́)و✧
ヴィクトリアの父親がマルクスってのはバレてない?
『肯定。しかし、今後の展開次第ではバレます。今回果物を下賜された時、添えられた手紙にアルキス、ヴィクトリアの名前が出されていました。また息子と共に食べるようにとも記されていました。
ここからアルキスはヴィクトリアの父親がマルクスなのではないかと、考えましたが、母親がその叔母であることからそれを否定しました。
つい先程まで祈りの場におり、シドニスが何かしら今回の件に言及し魔物化の条件について発言した場合オーガエンペラーとなったアルキス、ヴィクトリア、マルキヌスが皇家と縁深い血を持つことがバレます。』
軽率でした。ホント軽率でした。
シドニスはこの三人のこと気付いてる?
『否定。皇家と縁深いことは明白、そしてマルクスはシドニスに果物を送るとき一つしか送りませんでした。それを家族が分けた結果、全員死亡したわけですが、マークイン子爵家は違います。全員が生き残りオーガエンペラーとなっています。
自分と同程度の血の濃さであるとは気付いていますが、この年代にはマルクスの叔母であるオクタヴィアル公爵夫人がおり、その奔放ぶりは有名でした。ですのでそちら関係の二人とその子という認識をしています。
あまり深く考えていないのはあまり興味がないからではないかと思われます。
マルクスに果物を送られて完全に魔物化し、シドニスと共にマルクスの元に送られたことからマークイン子爵家の真実にたどり着けないとは思えません。』
はい。すいません。
なにが親子喧嘩だ、私は馬鹿か。
親子と気付いていない可能性を考えないなんて。
反省はする、今は行動せねば。
三人は人間に戻そう。
三人の失踪は周りの人には気付かれてない?
『否定。メイドのミユが気付き、父親であるカリヌスに伝えたのが今から5ヶ月前です。カリヌスはこのことを誰にも言うなと口止めしています。
家に争った跡がなく、ある程度の荷物を持って出たことが分かったからです。つまり夜逃げした、と思ったようです。
カリヌスもミユも子爵家には恩があったため、誰にも口外せずにいます。ミユはヴィクトリアから何があるか分からないからと働き始めてしばらくしてから紹介状をもらっており、それを頼りに男爵家にメイドの職を得ました。』
恩か、、、ある意味最高の恩返しだな!
あ、でも仕事が、、、いいや、ここは一気に!
ヴィクトリア達がいなくなった期間を違和感なく記憶を改竄、アルキスの仕事もマルキヌスの周りも、ミユとカリヌスの記憶も改竄して元の生活に戻ってもらって、男爵家にもミユがいた記憶消して元の状態に戻す。
同じようにヴィクトリア達の記憶も改竄、果物なんて届かなかったし、その頃の記憶もあやふやにして、その後の記憶は消して、違和感なくそのまま帝都で過ごしていたことに!マルクスの存在消して、ヴィクトリアの周りから!
キュートに整合性とるのは任せた!
あとルキウスの記憶もヴィクトリア達のとことメアリーともう一人の侯爵のことも記憶から消しといて!侯爵の野郎からメアリーのことも消してください!
『了解。アルキス、ヴィクトリア、マルキヌス、ミユの記憶を今回の騒動の原因マルクスの果実が送られてくるところを消去しその後の記憶をカリヌスを含め、エクストラスキル変幻自在、最適化により最適化します。
マークイン子爵家がいなくなっていた間の帝都住民すべての記憶をモンスタースタンピートにフォーカスをあて曖昧にし、エクストラスキル最適化によりそれぞれの記憶の最適化を図ります。実行完了しました。
この帝都住民にはマルクス、ルキウス、シドニスそして件の男爵家、宮廷でのアルキスの仕事関係者を含みます。またメアリーを囲っていたアルトバン侯爵家当主とメアリーの存在を知っていた関係者の記憶を改竄、メアリーを別の架空の人物とし死亡したように改変します。実行完了しました。メアリ自身の記憶には干渉していませんがどうしますか?』
メアリーな、下手に囲われる前まで記憶を改竄するともう今のメアリーじゃないよねぇ。
手切金もらって一から別都市に移って暮らし始めたことにしよう!侯爵からの追手を気にしないでいいからね、その方がいいでしょう。
それなりのお金をちゃんと持たせてね!
『エクストラスキル変幻自在、最適化によりメアリーの記憶を改竄、実行完了しました。また一年間それなりの暮しができるだけのお金を持たせました。盗まれないように偽装済みです。』
おおー大丈夫?OK?なんか私やらかしてない?
『記憶に関しては現段階で問題はありません。またやらかしたの定義を明言してください。』
、、、うん、そうな。やらかしたの定義づけができないわ。
マークイン子爵家とそのメイドと家令は今後も同じように生活できるんだよね?
『否定。記憶に問題はありませんが、マークイン子爵家は肉体的問題が残っています。
また今後の個人の行動によってそれが破綻する可能性は否定できません。』
あ、忘れてた!
準備してくれてるのはあれだろ?髪とか皮膚とかの遺伝情報の媒体だろ?
『肯定。体の設計図として準備しました。このままその意図を持って魔導を使うことで魔物化を解除可能です。』
死なないよね?
『肯定。この魔導で死ぬことはありません。』
魔導【魔物化解除】【肉体再構築】
『魔導【魔物化解除】魔導【肉体再構築】を実行完了しました。
またこれらの魔導を登録完了しました。今後の魔導発動に補助の準備は必要ありません。』
おおー!!!ならば三人を、家に帰して。
終了!
終了???
『肯定。マークイン子爵家についてはほぼ終了しました。』
よし!あとはマルクスとシドニスだな!
目の前の憎い老害に焦点が合わない。
どれだけ憎んできたか、幼い頃あの母親の言葉から自分がコレとの子供だと知ったあの時から!
シドニスは自身がコレと呼ぶ痩せ細った老人に再度焦点を合わせる。
皇帝を務めていたとは思えない。痩せぎすでぎょろぎょろと目だけが大きく、大きな木に祈りを捧げるが如く跪いている。
先程まで帝都にオーガ達をけしかけようと、まずは周りを囲み、その恐怖を味合わせてやろうと。
しかし相手は前帝、生半可な期間では皇宮の奥にまでその恐怖も、その話さえ届かないだろうと民衆が怒りを皇室に向けるくらい追い詰めるために長い長い日々を過ごした。日にちなど数えてはいない。
ただ自分の家族をあのような悲惨な目に合わせた前帝に、そんなモノに応えていた母親に一矢報いるだけでは足りないと思った。
持っているモノ全てを奪い、持っていたモノに石を投げられ蹴られ絶望するまで!
恐慌状態の民衆は何もできない皇室を恨むだろう。魔物に襲い掛かるより、同じ人間に牙を剥く方がずっと簡単だ。
だから待っていた。ずっと長い時間。
家族を死なせてしまった悲しみと、力を持ったことで今までの復讐ができるという愉悦、たまに何もかもがよくわからなくなったがそれでも憎い前帝だけは忘れなかった。
気がつくと憎い前帝と同じ部屋にいた。
大きな樹と痩せぎすの老人、見たことがあった。
腐っても伯爵位にいたのだ。その姿を見たことは何度もあった。声をかけられたこともあった。
その時、自分はどうやって怒りを逃しただろうか。
「お前が前帝マルクスか。」
答えは分かっていたが、問いかけずにはいられなかった。
そんな矮小な身で、私の家族を殺したのか?
こちらを見るその男の目がおかしかった。何故魔物と化した自分を見てそんな目ができるのか。
そして、かっかっかっと男が大声で笑い出した。
それはこちらを見ていない。
うん。こっちも両方話し合いも何もないみたいね。
ひとりはもう思考が安定していない。もうひとりは自分の中に入っちゃってて、しかもオカシイわ。
ここでシドニスを人間に戻したとしても、死んだ人間まで戻すつもりはないし。
だからってまだ何もしてないシドニスを私が手にかけるのは私的に容認できない。
マルクスは死んどけ、とは思うが他に殺したい人は沢山いるだろうし。
あーシドニスのところは伯爵だから流石に魔物化した家族の姿は使用人に見られてるよね?
『肯定。死亡した三人のメイドを含め、弔うためにその遺体を運んだ家令以下二十八名が魔物化したカープラル伯爵一家を目撃しています。』
ああ、そっかメイドさん亡くなってたねぇ。
マルクスは不幸と死と子種しかばら撒かねーな、、、、
5ヶ月経ってるしねぇ、、、。
その二十五名の記憶を捏造、カープラル伯爵家六名とメイドさん三名は前帝マルクスにより毒殺され葬儀は執り行わず葬られたことにしようか。
ある意味一家は奴に殺されたのに間違いねーしよ!果物は毒だったよ!
メイドさんたちの遺族の方にはそこそこでいいからお悔やみにお金を、他の使用人の人にはちゃんとした紹介状を、生前シドニスが渡してたことにしよう。
あと他の人に当主失踪とか知ってるひとがいたらその記憶は毒殺に最適化しといて。
もうなんともやるせないよ。
『エクストラスキル最適化、変幻自在により使用人二十五名と当主の失踪他を知る帝都住民の記憶を改竄、最適化しました。
魔物化が毒殺に改変され、死亡した者に当主シドニスを追加、埋葬の記憶も毒殺された遺体の弔いに改変されました。メイドの遺族にはそれ相応のお金を、他の使用人たちには紹介状を持たせました。』
カープラル伯爵家の六名はマルクスの下賜品で毒殺された。使用人はその埋葬を手伝った。
この伯爵家は今後どっかの血縁が継いでいくでしょう!
使用人が残るかどうかは本人たちに任せよう。
シドニス家族と使用人たちのことはこれでいいか!
ね、今シドニスをこの国のユニークスキルとしての鑑定もち、あと普通の鑑定でも鑑定したらシドニスってわかるの?
『否定。オーガエンペラーであることがユニークスキル鑑定でも普通の鑑定でもわかりますが、変異種であることがわかるだけでその名前がわかることはありません。
しかし、ユニークスキルとしての鑑定ではその血筋がマルクスの血筋をあらわし、またオクタヴィアル公爵家の血も表します。それ以上の鑑定は不可能です。』
ふーん、ならさ、マルクスの子供であることだけわかるようにできる?
『肯定。実行しますか?』
そうだね、流石に最後にただ魔物に殺された人として哀れまれるなんて絶対に許せないでしょ!
そんだけ許されないことやって来たんだから屑マルクス。
最期は罪人として死んでよ。
実行、お願いします。
『肯定。実行完了しました。
今後、シドニスの肉体はどんな鑑定スキルを用いてもマルクスの子、変異種とのみ表示されオクタヴィアル公爵家の名も、カープラル伯爵家の名も、シドニスの名も出ることはありません。』
はい、ありがとう。
そうだね、二人の結界を解いてどちらかが死んだらこの祈りの場の結界も解こうか、設定できる?
『肯定。二人の結界はすでに解除しました。祈りの場に張られた結界に設定を追加、完了しました。
どちらかが死んだ場合、ここに人が立ち入れるようになります。』
そうか、もし生き残ったのがシドニスなら睡眠魔導でそのまま永遠の眠りへ。マルクスなら帝位を奪うために自分がオーガエンペラーと子をなして帝都を襲わせた、とスキルでもなんでも使って喋らせて。
証拠は、その場にいるだろうからね。
誰が初めに来るだろう。ルキウスに来てもらいたいな。あいつ退位させられたんだから誘導して来させられないかな?
『肯定そして肯定。シドニスに条件型睡眠魔導を実行完了しました。マルクスに条件型催眠魔法を実行完了しました。
現在前帝となったルキウスは捕縛され皇宮の奥の離宮、すなわちマルクスが隠居した場所に幽閉されています。しかし、前帝の権利または義務として明日の朝には祈りの場に監視付きで連れて来られます。その時に発見されるように調整しました。』
権利で義務なんだねぇ。
もうここからは私ノータッチで。
流石に精神が疲弊している。例え精神力MAXでも関係ないんだなー。
俺は寝る、クリーン!
「ね、キュートさ、今回の記憶改竄やらなんやらは他の神には感知されないよね?」
『肯定。主人の能力による改竄、改変は神すら欺き知覚させません。」
わかった、ありがとう。キュート。
「おやすみ」
あ!変な映像はいらないからね!
で、なんかあったら起こしてね!
「睡眠魔法」
次の日、ルキウスが義務として祈りの場に向かうとそこには叩き潰された一人の老人と、眠るように死んでいる異形のオーガエンペラーがいた。
後日、一握りの王族だけに話されたのはそのオーガエンペラーがかつて血狂い皇帝と呼ばれた男の子供であるという事だ。
皇室が誇るユニークスキル、鑑定で判明した事だった。
しかし、すでにマルクス本人は自身の子供であるオーガエンペラーにより殺害され、その息子であり皇帝でもあったルキウスのガルド王国からの王女、勇者を含む援軍への蛮行ゆえの退位、ルクレウスによるクーデターによる帝位の奪取、あまりに多くの醜聞が皇族により起こされていた。
皇室の威厳を守るためにこのことは公にはせず、一部のものだけに伝えられた。
この一連の話は時の皇帝に戒めとして後々まで語り継がれて行く事となる。
皇帝の蛮行や愚行は必ず皇族全体に返りその仕組みを壊す要因ともなり得るという教訓。
そして当時の皇帝たちの蛮行や愚行への天罰とも言える未曾有のモンスタースタンピートとともに。