二十二話 勇者とその仲間たち〜いえ、私は別枠です。
新たに称号《天上天下唯我独尊》を迎えた、めでたき良き日に、ガルド王国では王カントが今回のモンスタースタンピートのひとまずの収束を宣言した。
また王の隣では、収束の英雄である《勇者》基山正義と、その仲間である《賢者》稲森真希、《聖女》川谷桃香が民衆が押し寄せてくる広場に面した王宮のバルコニーから笑顔で手を振っていた。
王は彼らを皆に紹介し、今回の危機に際して行った勇者召喚の儀についても説明した。
ここで「聖教会の提案のもとその協力を得て」と言わなければならない王の心の憤怒はどんなもんだろうか。
もともと聖教会が支援魔法を出し渋らなければ、この儀式など行わないでよかったのだ。
勿論今回のような一瞬で魔物どもを殲滅せしめ、なんの損害もなく収束はしなかっただろう。
犠牲は少なからず出ただろうし、その後疲弊した国がどうなったかはわからない。
それでも勇者たちの隣で笑顔を振りまくガルド王国王都での聖教会の顔、神官ルード=サンミッチェルに国王カントは顔には出さずとも苦い気持ちが心に溢れるのを止めなかった。
それでも威厳ある渋めの顔を持って民衆へと言葉を向ける。
「今回の未曾有の危機で我々は知った!
国が魔物に取り囲まれ孤立するという恐怖!そして自らの手のあまりの小ささを!
わしは国と国が結びつく、と言うことを本当の意味で理解した!それは我が国民たちも同じことと思う!
それは人族全ての国で力を合わせ、このような危機には立ち向かわねばならないということであると!
昨日までの我々のようにモンスタースタンピートによって国を閉さねばならぬ国がまだ存在している。
ドワーフの国マルチザン、隣国アバロン帝国、そして歴代の勇者たちが愛した国ジパンヌだ。
これを見過ごすことは我がガルド王国の恥、勇者殿という存在への侮辱となろう!」
大地が揺れるような大歓声が響いた。
涙を流し、その通りだ!と叫ぶ者もいればガルド王国万歳と皆で息を揃えて大声を上げる者もいる。
そして何よりも多いのは脅威が去った安堵や、
その只中にある他国への不安や恐怖、そして勇者への崇拝、そのなんとも言えない様々な感情が混ざりあった言葉にならない獣のような絶叫だった。
その民衆の叫びに頷きながら王は続ける。
「この国の王として、わしは他国の今の状況を勇者様方にお伝えした!
わしは感謝尊敬の念を感じずにはいられん!
何も言わずとも彼らはそれらの国を救おうと言って下された!!!
まだ我が国のこともある、そのため少数精鋭の部隊とともに勇者様方は救援に向かわれる!
我が国の感謝と心を勇者殿、賢者殿、聖女殿へ捧げよ!」
〈我らの感謝と心を勇者様、賢者様、聖女様に!!!!〉
民のひとりひとりが声が割れるほどの叫びで勇者、賢者、聖女にその感謝と心を捧げた。
「【発言履行】」
魔力を持った言葉が呟かれる。そこには隠しきれない歓喜が混じっていた。
まずは一回、と彼女は嗤った。