十四話 裏方に回ったわしを除く日々の始まり
短いです。
表〜主役が美人だとやはり需要がある件〜
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真希はぼんやりした感覚に首を捻りながら、姫に確約してもらったアクセサリーについて問う。
姫も少しの間、視点があっていなかったが、すぐに笑顔で答えてくれた。
「形としてはネックレス、指輪、腕輪などがありますね。戦闘時のことを考えますと邪魔にならないという点ではやはりネックレスでしょうか。」
姫はこちらが戦うことを前提に話しているようだ。昨日の話、モンスタースタンピートで今この都市が魔物に囲まれているならば否が応でも戦わなければならないだろう、元の世界に帰りたいのなら尚更だ。
私たちだけなんとか逃げたとして、一度国を捨てて逃げた勇者たちのためにだれが帰る方法を探してくれるものか。
この国ガルドなら絶対遵守の契約魔法で帰還方法の調査は必ず国を挙げて行われる。
この国がモンスタースタンピートで亡くならなければ。
その時部屋のドアがノックされた。
桃香と姫に目配せし、姫がメイドにドアを開けさせた。そこには正義がいた。小さな声でおはようとだけ言い、まるで騎士のように私達の斜め後ろに立つ。
どうしたのだろうか?
昨日のことについて、きっと正義のとんでも理論でこちらを責めてくると思ったのに拍子抜けだ。
しかし、ここでそれを指摘するほど暇でも馬鹿でもない。
こいつは放置だ。
煩くなったらまた、拘束して別室に転がしておこう。
真希は異世界に来てから大分心が逞しくなった。
話の途中で席を立っていたメイドがいくつかの装飾品をテーブルに並べる。
早速とってきたのだろう。デザインはそれをほど拘らない。ちゃんと効果があれば。
全てに鑑定をかけた。桃香もそうしているようだ。なかに精神支配系の魔法が付与されていないか確かめているのだ。
この国を信じてないから。
危ない効果のものがないとわかり、桃香も私も適当にネックレスと腕輪をそれぞれ選んだ。
どうやら一つの装飾品に付き効果は一つしか付与できないらしい。
魅了耐性と毒耐性のものを貰った。
早速つけてみる。見た目は華奢なデザインのアンティークアクセサリーなため少しテンションが上がった。
この世界に来て初めてかもしれない。
しばらくアクセサリーの性能について話したあとに王からの先触れが来た。
まぁ、この国は今絶体絶命なのだ、戦力を遊ばせておく余裕などないだろう。
真希は覚悟を決めることにする。
戦う覚悟ではない。
この国を生き残らせる覚悟、だ。
この二つは同じようで違う。
真希は死ぬつもりはなかった。もちろん桃香も死なせはしない。
都合の良いことに私たちは魔術が使える。
魔物の前まで近づかずとも攻撃は可能なのだ。
命を奪う行為を、ただの作業で行う、そう決めた。
卑劣でもいい、勇者だなんて呼ばれるような戦い方でなくても生きて、帰らなければ。
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