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95 こっそり見てた

 閑静な住宅街が並びつつ、やけに坂の多い町の通学路。

 ブレザータイプの制服を身にまとった少女二人が、神妙な面持ちでアイコンタクトを取り合っている。

「ねぇ……」

「うん」

 ガルドがリアルで通学している高校の制服姿の女子高生が二人、曲がり角に身を隠していた。

 休日登校で男子サッカー部の応援を済ませた二人は、これといった収穫がないことを愚痴りながらの帰宅であった。佐野家のある通学路を通りすぎようとし、ある違和感に足を止め、眉を顰める。

「あの場所ってさ、みずの家だよね」

「そりゃ何度か行ってるし、毎日通るたんびに『佐野』なんて書いてあるから見ちゃうしぃ」

「なんでハイエース?」

「さあ……」

 一人はくるくるとカールさせた髪をスタイリング剤とコテでキープしている宮野、もう一人は黒髪をマフラーに仕舞い込んでふんわり乗っけた赤リップの佐久間だ。二人とも、ガルドのリアルでの姿、みずきの同級生である。

「あ、ね、もーちょい隠れて!」

「う、うん」

 宮野が佐久間の手を引く。そしてひょこりと塀から顔を出し、じっと道の奥を見た。

 駅の方角から、グレー系のネックウォーマーと紫のダウンジャケットを着込んだ中年の男が歩いてくる。三十代後半といったところか。服装から体育会系でいて清潔さを感じるが、口下のアゴにだけヒゲを生やしているのがチャラい印象を与える。

 アウトドア用品ブランドの有名なモデルのリュックを背負った彼は、ハイエースの停まるみずき宅でぴたりと足を止めた。

「え、何?」

「しっ!……入ってくみたい」

 立派な門構えのみずきの自宅のインターフォン前に立ち、ワンプッシュ。遠くから二人の耳に小さなチャイム音が聞こえた。

「あいあい、遅かったですねー。いいタイミングですよ」

「おう、どうだ進捗」

「まだ玄関です」

「あ!? 配線接続じゃなくてか!」

「重いんですよ~ほら」

「おお、マジでテテロだな……」

 家から出てきた男はボサボサつんつんの髪の毛をしたパーカー姿で、まるで佐野家の人間であるかのように振る舞っている。

 だが、みずきの父にも会ったことがある女子高生二人には見覚えがない男だった。

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