表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/429

64 ダブルス・トーク

<え、まじか!>

<ああ……け、計画通り>

<どこがだよっ! 待て待て、俺生きて帰れないフラグたってないかそれ!>

 みずきは、父の怒りを受けながらこっそりと榎本に連絡をいれた。

 脳波感受型コントローラの利点は、画面を見なくても文章が()()()()()()ことだ。父とは反対側のこめかみにコードをくっつけ、会話を続行しながら榎本とチャットをスタートさせた。

<正直に言っちまったほうがいいんじゃないかー? 遠征の方が怒らないだろ>

<男五人に女一人だから、そっちのほうが怒るかと思った。それに、テテロ回収の情報源(ハルの兄)にもこの設定で通してる。対象によって齟齬があるのはマズい>

<しかしその様子じゃどっちにしろダメだろ。一昨日も言ったが、俺はオッサンだからな! 俺が顔出したくらいじゃハワイなんか厳しいぞ>

 まさか父が恋人というキーワードにこれほど過剰反応するとは、夢にも思わなかったのだ。みずきはしょんぼりと気落ちした。

 何事か小言を話していた父が慌て始め、深呼吸をひとつして仕切り直した。

「みずき、冷静になろうな……」

 それはまるで自分自身に言い聞かせるような台詞だった。そして父は、少し温くなり泡の消えたカプチーノを一口飲むと、一息つき、みずきを見る。

 見計らってみずきは交渉を始めた。

「父さんは、海外行き……反対?」

「そうは言ってないさ。世界を見るっていうのは大事だよ。英語の勉強にもなる」

<とにかく親父さんには、テテロを取り返す許可だけ貰え。海外の話は後回しだ>

 父の声と榎本の文章が頭に同時にやってくる。みずきは必死にどちらも考えながら、それぞれに対応していく。

「じゃあ、行ってもいい?」

その話(テテロ)は大丈夫だった。味方になってくれるらしい。だが、後回しにするにしても、大会は半年後に迫ってる>

「その、な。みずき、恋人と二人きりはダメだ! まだ高校生なんだぞ。二人きりで旅行なんて! 遠距離恋愛のお前達は会いたいだけだろうが、せめて誰か——」

<そうか。んじゃ、旅行の件はじっくり攻めるしかないな……せめてギルドにもう一人女が居れば、大分違うんだけどなぁ>

「増やすってこと?」

 思わずリアルで返答してしまった。

 脳波コンを使用しながら二通りの会話をするなど、みずきにとっては慣れたことだった。だが、父の許容ボーダーラインと榎本のアイディアが衝撃的で、思わず口を突いて出る。

 人を増やす。旅行に女性が居ればいいのだ。これはいいことを聞いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ