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61 知らない父

 父親は民間の警備会社に勤務している。そう聞いていた。だが、どうやら少々言葉の意味が違うらしい。

「内閣府とか警視庁とかがやっていたサイバーテロ対策とかをね、民間に委託しているんだ。つまり、民間の会社だけどやっていることは国レベル。ほら、郵便局とかと一緒なんだ」

 噛み砕いて話してくれたことで、やっとみずきは理解出来た。海のように広大なネット世界で、日本に害のある人物を探して懲らしめる仕事らしい。それが警備なのか、とみずきは素朴な疑問を抱いた。てっきり警備員なのだと思っていたが、みずきの父はどうやらデスクワークメインらしい。

「実際に逮捕とか処罰とかは警察だけど、探す部分はもう国だけじゃしきれない規模だからね。でもそれだけじゃ資金の問題があって、そこで警備の業務がでてくるんだ」

 犯罪者を探しつつ、サイトが健全に運営できているかチェックを入れる。荒らしている人物がいれば運営者に報告する。その謝礼金を受けとって事業にする。そういう仕組みらしい。

「だからね、みずき。フルダイブ機用の脳波感受型コントローラがマルチデバイスの側面を持っていて、様々な電子機器を操作するマウスでもあり、キーボードでもあることは知っているよ」

 これは、一般にはあまり認知されていない情報だった。

 真っ当な使用方法ではないためだ。特段ロックがかかっているわけではないのだが、本来の使用法は「ゲームのコントローラ」であり、スマホやPCなどに接続してマルチデバイスとして使うというのは邪道だ。

 しかしなぜ情報が出回らないのか、一市民のみずきには分からない。こんなに便利なものなのに、普及率が驚くほど低い理由が理解できなかった。

 だが、SNSでも反対派がひしめいている。TVも、新聞も、家電量販店でもその便利さはアピールされることがなかった。

 特集を組むゲーム雑誌も限られ、購入を検討する者は、少ない情報から数少ない埋め込み手術対応病院を探す。その上、しばらくは感受が起こす密かな痛みに耐えなければならない。

「かなり便利。嫌がる理由が分からない」

「疑問かい? 今のところ簡易的なものだからいいんだけどね」

 父はカプチーノを一口飲み、一息ついてから話を続ける。

「脳波感受型には普及されると困る点があるんだ。だからメリットは情報統制で広まらないようにしている。日本ではね」

 聞きなれない単語を話す父は、まるで別世界の役人のようだった。

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