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251 勘違いだったのか

 咄嗟に跳ねたガルドの腕が、狙われたジャスティンを守るべく伸びた。腹の辺りに向かった穂先を黒い西洋籠手の巻かれた腕で受け止める。

 思ったよりパワーのある突きに、激しい風切り音と被ダメージ音が重なって聞こえる。槍など初めてだ。これがスキルの効果音なのかすらわからない。吹き飛ばしの効果は無いらしく、ガルドの腕はそのままの場所で止まった。

 盾を構えたジャスティンを確認し、腕を引っ込めてトリモチを握り直す。続けて叫んだ。

「四割っ」

 端的だが、この場にいる仲間ならば分かるだろう。HPの減り具合のことだ。自分のHPゲージは量の感覚で伝わってくる。仲間のHPはマップでの表示でしか分からず、常時表示しているのはチーム管理を率先して引き受けているマグナだけだ。

「っお!?」

「よ、四?」

「そりゃあ……おいおい、伯爵レベルだな!」

「つーことは」

「人型か」

 仲間たちが武者震いで揺れた。槍の一刺しで半分近い。それは、大型のモンスターと全く同じパワーを持っていることになる。フロキリ時代にも無かったわけではない。人のかたちをしたモンスター、種族の設定としては吸血鬼、亜人と呼ばれるものは存在した。会話は出来ない。NPCとは明らかな違いが会話能力だった。

「そうか……」

 自分の予想が間違っていたのだ、と肩を下げる。ガルドは「彼は非ゲーマーでぷっとんの部下じゃないか説」を捨て、仲間たちと同じ見解を持った。彼は人型の高難易度モンスターだ。相応の対応に切り替える。

「へへっ、マジかよ……」

 嬉しそうな声をした榎本に、ガルドは拍車をかける。

「先に行け、相棒」

 回復に下がることを伝える。アタッカーを任せる、という意味も込めている言葉は、上手い具合に伝わったらしい。頼りがいのある声で返事がした。

「おうよ!」

 今回はメロが欠けているが、「世界一も夢じゃない」と言い切れるほど、ロンド・ベルベットは対モンスター討伐戦を得意としていた。すべきことは熟知していて、対応も早い。

「散開はよ、ほら!」

 遠くから声を掛けた夜叉彦が、ガルドに向かって宝石を一つ投げつけた。乳白色のコブシ大スクエアカット、アイテムとしての魔法宝石だ。

 中に入っている効果は、ガルドに当たるまで持ち主にしか分からない。

 こつり、と大きな背中に当たる。瞬間高く小さな音を鳴らしながら砕け散った。同時に白い光が内側から溢れだし、ガルドを中心に魔方陣が広がって行く。

 フロキリでの魔法宝石は、魔法をセットしておくカートリッジのような利用法があった。価値はグレードとして数字にされ、その桁と同じだけの魔法がセット出来る。夜叉彦が投げたのはそこそこ高グレードの、メロが愛用する継続回復魔法がセットされた宝石だった。

 羽の生えた白いウサギが足元から飛び出してくる。

 ガルドは夜叉彦に挙手で礼を述べ、トリモチ片手に前線へ走り出した。

「ぷー! ぷー!」

 小ぶりな羽の生えた真っ白いウサギが、ガルドの回りをぐるぐると回る。小さな手をぱちぱち鳴らしながら、愛らしい小さな声で鳴いていた。

「……ん?」

 走りながら横目でウサギを見る。ガルドは疑問を抱いたが、山登りの折にリフトで感じた重力加速感(G)と同様で、とりあえず後回しにした。

 フロキリ時代、ウサギは鳴かなかった。召喚したキャラクターはただのエフェクトで、彼らには知能も声も付いていないはずだ。

 ウサギは「ぷー」と鳴く、とだけ覚えておく。動物園やペットショップで見た本物でも、鼻を動かすだけで吠えたりしないウサギの鳴き声など、ガルドは聞いたことがなかった。

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