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25 心地よいベルベットのぬくもり

 ひとしきり食べ、飲み、語り明かした後に訪れるのは、まったりした時間とぽつりぽつり浮上する昔話だ。そこで中心となるのは、今回会うことの叶わなかった元前線組、元ギルドマスターのことだった。その人を彼と呼ぶのは、ガルドには憚られた。

 ガルドは彼を彼だとは思っていない。元ギルドマスター・ベルベットは()()だと心から思っている。

「最近はEUあたりをうろうろしてるらしいんだよね~」

「さすがだな、我らがボスは」

「連れてってるのかなぁ」

「はべらせてるだろうな。相変わらず」

 ゲーム内まで行動を共にすることはなかったのだが、ベルベットは好みの男を脇に置いておく癖があった。会社を運営する立場になった時、有能で理想的な男を数人ヘッドハンティングしたらしい。二桁に近い数字の部下をはべらせ多角的なビジネスを行っているようだった。

「形はどうあれ天国だろうよ、ベルベット」

「ハーレムだもんね。あぁ、乙女ゲームとかいうやつかな?」

「ヒロインが元男とか、かなり際どい乙女ゲーだな! しかも攻略対象が基本筋肉って……そのゲーム売れないぞ」

 その手のゲーム業界用語に詳しくないメンバーも、榎本の言いたいことはなんとなくわかった。ギルマスが好きな男の容姿や本人の境遇などを考えると、なんとも個性の強い作品に仕上がりそうだ。

「ギルマスもハワイ来れないかな。大会に参戦は厳しくても、見てもらいたいな」

「あー、夜叉彦。そりゃあ難しいぞ」

「そうだな。あの人のことだ、リアルで見学だと満足しないだろう。参戦したがるに決まっている」

「『混ぜてぇー!』とか言ってな」

「『ちょっとぉ、何勝手にのけ者にしちゃってんのぉ?』とか言うだろうな」

「二人ともそっくりだな!」

「あははは! あー待って待ってもう一回! 動画撮る! あ、ガルドぉ、そのプレーヤーカメラ付いてるじゃん!」

「撮ってた。ばっちり」

「さすが!」

 ガルドは自分の目線のムービーを取りながら、夜叉彦とジャスティンはニヤニヤしながら、マグナと榎本のギルマス劇場を鑑賞していた。

 メロは一人、寸劇の犠牲になっていた。

「『ヤダァ〜ハワイなんて何年ぶりかしらぁ〜!』」

「『メロ、さっさとワイン持って来なさいよ! 赤よ? 赤が良いわ!』」

「あはは……え? あ、赤ね」

 ピッと榎本に指をさされ、すごすごとカウンターに出向き赤ワインをオーダーするメロ。

「『メロ、つまみはどうしたのよぉ〜。気が利かないわねぇ』」

「毎度毎度一言足りないんだよねぇあいつ……え? 持ってくる流れ? しょうがないなぁ」

 帰ってきたと思えば、また榎本にそう言われ、カウンターにUターンするメロ。

「『グラス一杯じゃすぐ飲み切っちゃうわよ~。ボトル一本貰ってきてちょうだい!』」

 便乗してマグナが一声添える。あまりからかったりするような性格ではないのだが、どうも酔っているせいか気が大きくなっているらしい。

「あはは、マグナまでアイツの真似して……え? また行かなきゃなんない感じ? まとめて言ってよー……ってなんかいいように使われてるよねぇ、これ!? 懐かしくて乗っちゃったけど、パシリだよね! ちょっと!」

「がははは!」

「ふふ、メロ、癖が抜けてない」

「メロとギルマスの主従ごっこ、懐かしいな」

「ベルベットはメロにしか頼まなかったからな。愛されてるぞ、メロ」

「いじりがいがあるって意味でしょそれ! 『万年誰にでもいじられ君』な夜叉彦がいるから、ウチはもうお役御免だし~」

「うう、メロ二世かぁ……」

「なんか言った? 言っとくけどあれって不本意だったんだけど! あの野郎、思い出すとムカつく!」

「仲良しだな」

「違う! 腐れ縁!」

 ハワイの話からどんどんずれていくものの、これで六人は幸せだった。楽しい日々を思いながら、新しい思い出を作りながら、ギルド:ロンド・ベルベットは高みを目指してゆく。

 だがこうして元ギルドマスターの話が多くあがるように、彼女の脱退という大きな傷が残ったままだった。

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