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145 様子を伺いつつ

 成田国際空港。晴天、旅行日和だ。

 GW初日ということもあり人でごった返している。その人混みに拍車をかけるように、frozen-killing-onlineの熱心なプレイヤーたちが世界大会壮行式を執り行っていた。

 ガルドと夜叉彦の初顔出しということもあり、動画撮影とその中継も行われている。視聴人数は徐々に増加しており、回線の重みで中継が中断するカメラも現れるほどである。複数人の配信者がいたことに安堵しつつ、熱心なプレイヤー達はロンド・ベルベットの一挙一動に注目していた。

 空港に実際集まったのは四十人程度である。集団が雑多に見送りをしているようにしか見えないが、毎回恒例の彼らなりの式典だ。

「……あそこに混ざるのか」

「うーん、ネナベなんて別に珍しくないっすけど、閣下(かっか)の場合は特殊というか……」

「騒ぎそうだな」

「あっ、あの一団! ほら、閣下のコピープレイヤーの少年達ですよ。大剣ヘビィボディでパリィ重視のスキル構成丸パクリ」

「おー、騒ぎそうな奴らだな」

「色紙とペン持ってますね!」

「ぎゃはは! 有名人だな、ガルド!」

「ハァ……覚悟の上だ」

「つかあっちの一団、榎本さんのファンプレイヤーじゃないですか。チャラチャラしてる」

「あいつら鬱陶しいんだよなー。嫌いじゃないが、なんつーか……ノリが暑苦しい」

「それで済ませる榎本さんはスゴいですけどね、僕だったらキョドって相手できないレベルな奴らですよ」

「ああ」

 名ばかりの雑多な集団からかなり離れた通路の一角に、海外用スーツケースを抱えた三人が控えている。主役のはずの榎本とガルド、そして現地までついてくることとなった鈴音所属のボートウィグだ。

 混雑のせいで壮行式のメンバーにはバレていないようだが、顔の割れている榎本が見つかるのは時間の問題だった。

「見つかったらどうするよ。『外身はおっさん、中身は女子高生のガルドちゃんです☆』みたいな感じか」

「絶対しない」

「そうっすよ! 閣下がそんなチャラいわけないじゃないですか。『待たせたな』でいいと思います」

「それもしない」

 本気で悩んでいるのは自分だけだと頭を悩ませ、ガルドが決意を固める。首を一回振り顔を上げて宣言した。

「いつも通りだ」

「男気あるな!」

「僕らで接近する対象はパリィしますから! ね、榎本さん!」

「お前みたいな細っこいのじゃ一人パリィしただけで吹っ飛ぶだろうが……って、見ろよ、来たぞ!」

 榎本が様子を見て不敵に笑う。遠目でよく見えないが、マグナやジャスティンの側に見知らぬ背の高い男がヌッと現れた。頭と肩や腕の比率から、彼がとても筋肉質だと分かる。

「え、誰です?」

「影武者だ。阿国に用意してもらっててな……似てるが、なんだあれ! アバターよりイケメンじゃねーか!」

「……笑える」

「閣下っ、閣下の方がカッコいいですよぅ! あんなの、あんなの偽物ですからぁー!」

 なかなか爽やかな流し目の、上腕二頭筋が立派な影武者にガルドは嫉妬した。アバターのフェイスを端正に弄らなかった自分が悪いのだが、それにしてもアバターガルドより何割も上を行くイケメンである。

 なるほど、かくばったアゴをシャープにするだけでも違うものだな。ガルドはイケメンの定義をまざまざと見せつけられる思いだった。

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