128 熱々食べつつ進路リサーチ
昼と言えばこれだ。平皿に取り分けた卵とベーコンのチャーハンを掻き込みつつ、検索して出てきた情報をさらう。料理で暑かったこともあり、インスタント中華スープの予定を取り止めて緑茶を供とした。
「はふ」
熱い。
文章全体は理解しきれないものの、概要は読める程度に英語を学んでいる。いちいち翻訳アプリを介していたら時間がないと、みずきはここでもズボラ気質を発揮した。
溢れる大量のニュースサイトをかいくぐり、日本同様反対意見が出るのを無視し、難しすぎる研究論文はスルーする。サラダ代わりにブロッコリーのボイルをマヨネーズで一口食べると、脳波感受に切り替えたプレーヤーを駆使してサイトを流し読みした。
「おっと」
感知で触っていたサイト群から気になる画像を見つけ、みずきはウェブサイトをモノアイの液晶表示に起こす。丸いマーク、そして小さく様々なロゴがその周囲を包んでいる。そのいくつかは見覚えのある形をしているが、英語で包囲されたそれが何か咄嗟にはわからない。
それらがフルダイブハード開発の企業とフルダイブソフト開発の企業だと気付くのに、時おりチャーハンを口に運ぶみずきにはたっぷり二分もかかった。予想外なことだという意味もあった。商売敵がサイト上で顔をあわせているのだ。
「collaborative research、R&D……univ、か」
単語の直訳では「大学・研究・コラボ」といった類いの用語が並んでいる。日本語での検索に切り替えて内容を調べると、どの産業ジャンルでも高頻度で行われている「研究開発」というものが現れた。
大学の研究機関と産業界がタッグを組む、日本で言うところの産学連携だ。フルダイブ型VRの盛んな海外では既にスタートしているらしい。みずきは衝撃だった。
日本は遅れている。従姉妹が行っている開発研究は、ゲームに限らないフルダイブVRの技術向上が責務だ。それはみずきとしては「ニアピンでかすっているが望む学問とは別」だった。
脳波感受型コントローラの小型化などどうでもいい。フルダイブ機のタンデムログイン対応などゲームにどう影響があるのだろう。医療現場への応用などもそうだ。人として立派だが、望む内容ではない。
みずきはVR世界の住民を理想としている。VR世界の創造主とは違う。そう頭を振り、従姉妹を振り払った。市場に近い研究こそ、望むことに適しているのだ。
そしてふと浮かんだのは、好きなことを思い切り出来て満足気味だった様子の、寝不足によるクマが酷い鳥の巣頭の男だった。
ロケットを作っているのだと言っていた。眠そうにしていた彼の、しかしゲームの時同様に生き生きとした表情。彼の紹介で一瞬会った女性社員の「本社はもっとフルダイブを支援している」という言葉も思い出す。
自分が本当にやりたいこと。狭い世界ではない場所に飛び立つ勇気。
「海外の、大学……」
みずきは必死に情報を掬いとった。
そして目を皿にして諸外国の情報を探した結果、海外の大学のとある仕組み、そしてある場所を知ったのだった。




