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117 ロココ・パレス

「かわいーい!」

「でしょおー!?」

 ロンド・ベルベットの派手好きオヤジと、チートマイスターの可愛いもの好き乙女が意気投合している。

「集中できんな、目がチカチカする」

「随分フォトジェニックだね。だからスクショが出回ってるんだろうけどさ」

「ふぉ、じぇにー?」

「ジャスってほんとに横文字ダメだよな。写真映えするってことだよ。あ、そうだ! ガルドぉ、スクショ撮ってあげるよ? 女子こ、ぐふっ!」

 マグナが冷静に夜叉彦の脇腹にエルボーを叩き込む。女子高生だなどとは言わせない。前を歩くディンクロンが不思議そうな表情で振り返った。

「ん?」

「……おい」

「……逆に夜叉彦の撮って、鈴音のMISIAに送るぞ」

「あああやめてぇー! 堪忍して!」

 夜叉彦をマグナとガルドで隠す。六人全員がじわじわとテンションが上げ、普段よりも騒がしくなってきた。ガルドは宙を漂うシャボン玉をつつきながら、パステルカラーの室内をキョロキョロと見渡す。仲間たちがまた一段と大きな声で笑った。

 つかの間の息抜きとして、チートマイスターのギルドホームは最適な誘いだった。

 世界大会が近い今はとにかく忙しい時期だったが、ギルドメンバー達はガルドの予想以上に喜んでお邪魔することになった。特に最近訓練ばかりで意気消沈していたメロのはしゃぎようには驚かされる。

「きっとメロは気に入ってくれると思ったの! ほらこれなんてどう? うふふ、こーやってぇ……」

 調子に乗ったぷっとんが、やや大きめの風船を隣のディンクロンの胴体にくくりつける。

「浮くの!」

 風船に釣られ、ディンクロンがふわりと浮き上がった。三センチほどだが。

「ぎゃはは! ディンクロン、お前いいのかよそれで!」

「やだメルヘン! 浮いてるー!」

「……好きにしろ」

 ガルドと同じ無口タイプでも、ディンクロンは無気力型だ。何をされても反応が鈍く、石のような男だった。

「いっぱいつければ天井に頭ぶつけるんだよ~」

「なにそれすごい! これ、なんてアイテム?」

「へへん、ただの『balloon』だよ。開発途中で捨てられた未発表アイテム」

「なにそれ違法やん」

 ロンド・ベルベットのメンバーはそれを聞き肩を落とす。運営に顔向けできるプレイというのは、普通の戦闘系ギルドであれば基礎中の基礎であった。よって、自分達は風船で遊ぶことなどできない。

「……あげよっか?」

「いや、気持ちだけありがたく」

「俺たち一応、公式戦出るようなギルドだから……」

「あらそう?」

 笑いながらぷっとんがロンド・ベルベットを奥に案内する。ロココの絵画のなかに迷いこんだような、柔らかなピンクと白の世界が出迎えてくれた。

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