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111 女子高生が語る

「で? 最近なんかなかった?」

 それが友人達の話のネタとしての話題提供を求めているのは、長年そうせっつかれ続けたみずきにはわかっていた。む、と眉間にシワをよせて考え、ある話題を思い出す。

「……この前、私に怖い手紙送ってくる人を、知らないところで彼が注意してくれた」

「きゃああ! 騎士じゃん! かっこいい!」

「ね、ね、服装って前に言ってた『白と金の、王子さま風な赤マントつき鎧』だった!?」

「うん」

「えーなにそれぇ素敵! きゅんきゅんするね!」

 やたらと盛り上がってしまったが、みずきは至って冷静だった。それがまた彼女達にはたまらない。クールなみずきと、彼女を大切にしているサラリーマン兼王子さま。少女漫画のようだった。

「怖い手紙って大丈夫だったの?」

「ゲームの中の話。大丈夫」

 ガルドに粘着質なメッセを定期的に送りつけてくるのは、阿国という名前のストーカープレイヤーだ。いつの間にか、榎本が彼女を雪山エリアに呼び出し言いくるめ、空港での警備を依頼したらしい。

 その話は、榎本経由ではなく阿国本人から聞いた。

 避けていたものの、ソロプレイ中のクエストに乱入してきた阿国に——もちろん違法——、一方的に話しかけられた内容を思い出す。

 ……世界大会の空港警備は、ワタクシが責任をもって預かりますの! 安心なさって、ガルド様ぁ~!……え? あの榎本があなた様の危機だと、それにワタクシの力でそれを回避できると言ってましたの。ま、まぁ、あれの案に乗るのは釈然としませんが、ガルド様に害をなす輩を完封するのは異論ありませんの!……

 それがどうやら二ヶ月ほど前、家出騒動中の出来事らしい。みずきはまた知らない間に、相棒によって助けられていた。


「あ、そういえばさ~」

 話を聞いて楽しげだった宮野が、思い出したような表情でみずきに向き合う。

「随分前なんだけど、みずの家の前、ハイエース停まってたでしょ」

「え、うん」

「あのおっさん、親戚?」

 背中と首筋がヒヤリとする。先程皆に「王子さま」などと言われていた彼のことだろう。それかもう一人、ハイエースを持ってきてくれたのもオッサンだ。中年なのは間違ってはいないが、彼らが聞いたらショックを受けそうだ。

「おっさん……」

「アゴひげの、ちょいワル系」

「ちょいワル」

 榎本で間違いない。本人が以前「ワイルドな魅力に溢れてるだろ?」と言っていた口下のアゴひげも、女子高生にしてみれば形無しである。

 みずきはとっさに言い訳を考えた。

「親戚」

「あ、そうなんだー! パパさんとも違う系だよね。まあまあイケメンかなーとは思うんだけど」

「みずのご家族、みんな美人よね。お父様は、その……」

 佐久間のその発言にすかさず父親にターゲットを移す。

「今は痩せ期に入った」

「あはは、やっときたね!」

「今回は長いといいけど」

 しめた、うまい具合に父の話題に逸らせそうだ。みずきは父親が「春に太り夏に痩せ、秋に太り冬に痩せる」ことを笑い話として紹介した。

 自分達もダイエットによる体型維持を命題としている女子高生達は、その季節による変化に首を大きく振り同意する。必死にサウナスーツを着込み住宅街を走る父を紹介すると、それはそれは同情をいただいた。

 その後、恋人から親戚に変化した榎本の話題は、あっというまに友人達の記憶から薄れていった。

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