103 メリハリ
「今はとにかく弱点の穴埋めだ。あとは新しいモーションや作戦なんかを開発できればさらに良い。そうだジャス、お前のタイムアタック用装備、MP回復率上昇の効果を付けようと思うんだが……」
マグナが悩み相談の流れから真面目に戦術会議へと話題を移した。ジャスティンに向き合いながら、装備の画面をポップアップで何通りも多重表示する。ガルドは少し前に話し合った時のことを思い出しつつ、どんな装備にするのかとザックリ効果を見渡した。どれもジャスティンが十八番にしている、絶大なエネルギーを使用するロングチャージの攻撃を念頭に置いている組み合わせばかりだ。
「おお! 攻撃に回れるのか!」
「対象によるから期待しすぎるなよ? 遠距離攻撃の出来る敵が対象の場合、即完全防御タイプの装備に戻す」
「それでも構わんぞ。暴れて防いで、が俺の真骨頂だからな!」
ジャスティンとマグナが打ち合わせを行いはじめ、六人は次第に大会に向けた訓練モードに切り替わる。
「そうか。そちらはお前と俺がいるときならいつでもいい。平日に進めよう」
「はいはい! 今日もウチのね~」
メロの陽気な声に、全員が一斉に頷く。ギルマスだったベルベットの離脱後、ロンド・ベルベットにリーダーはいない。全員が均等に力を持ち、互いを尊重しあった態度で行き先を決める。
しかしながら、我の強いメロとギルドの頭脳であるマグナが発言権を強めているのが実態ではあった。ガルドが大きく口を挟むことは少ない。反対の場合も小さく異論を出すだけだ。
「装備は大丈夫?」
「おう。メロ護衛訓練用にしてるさ。耐久度チェック」
「問題なし」
「クリア」
「無問題っ」
「ぶっは! 古いな!」
「フッ、スキルセットは各員前回の反省を踏まえて変えているな」
「もっちろん!」
「俺はメッセ通りさらに変えてるよ、マグナ」
「よし」
参謀マグナのその一声に、座っていた全員が視線を交差させた。空気がはりつめる。
「締まっていこう」
一斉に立ち上がる。
その動きに合わせ、彼らのフル装備が金属音をけたたましく鳴らす。周囲のギルドメンバーが一緒になって背筋を伸ばし、会話を止める。
ギルドホーム全体の空気が、ピンと張りつめた。




