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俺は魔法が使えない!!  作者: カリン・トウ
第一章 A Study in Emerald
13/111

第一章11 『封鎖区画』③

**5**


 俺は、狂ったように哭くデバイスの元から、脱兎の如く逃げ出した。

 悪い何かが起きるその前に、出口に向って無我夢中で走った。


 それでも真後ろに気配がした。どれだけ足を高速で回しても、回しても、背にピッタリへばりついて一向に離れない。


「そこにいるってのか!!」


 あまりの気持ち悪さに、背に迫るものを振り解きたい一心に駆らる。そして、いよいよたまらず追い払おうとした時、耳元で誰かに囁かれた気がした。


 振り返ってはだめ、と。

 

 その途端、肌に感じていた薄気味悪さが、スーッと薄らいた。


「はっ…………はっ……今のが……あの感覚が汚染の症状だっていうのか……!」


 額からドッと汗が流れた。

 憑き物は落ちたように感じるが、ヤツの気配は依然として近くにある。あの気持ち悪さも一緒にだ。

 正体は分からないが、あれ、に追いつかれるのだけは絶対に不味い。


「ペースは考えるな……いまは、今は前だけを向いていろ俺っ!!」


 向かうべき方角は分かっている。けど、出口がどこか分からない。

 もし、この先が行き止まりだったら、出口を通り過ぎていたら……。

 そんな焦りからか、ざっくりとした単純構造の区画が、まるで入り組んだ迷路のように見えてきた。


「とにかく出口を……っ」


 だけど、このまま封鎖区画を抜けたらどうなる。

 ヤツは追ってくるのか。

 もし追ってきたら、今度はどこへ向かえばいい。

 そんな迷いが、振り切れない気配と一緒に俺を追走し始めた。

 それでも俺は走った。(もつ)れた足を何度も蹴飛ばして懸命に走った。

 

「はぁはぁはぁ、こんなワケも分からないことで死んでたまるか………………!!」


 その時、首筋に悪寒が走った。

 後ろから照準されているような、えもいわぬ感覚がするのだ。

 それは引き金へ指を掛けたように、急速に緊張を高める。

 そして、ドクンと心臓が大きくなった瞬間、俺は咄嗟に左前方へ飛んだ。

 地面から黒い棘が突き出したのは、その直後だった。

 まるでウニの棘皮(きょくひ)にも似たそれは、一瞬前の俺の位置を、貫いていた。


「い、今のは?!」  


 視界の端に見えたそれを眼が無意識に追いかける。

 しかし、そんな場合かと理性で振り切り、目線を強引に前へ引き戻した。そして俺は着地と同時に加速した。


 すると俺が走り抜けた先から、さながら罠でも踏んづけてしまったように、或いはその軌跡をなぞるように、次々に棘が突き出した。


「く、くそっ、あの黒いのはなんだっ?!」


 ただ黒い棘としか形容できない正体不明の攻撃。

 それが矢庭に飛び出してくる。

 俺はまさしく追い立てられる獣となって走った。


「あんなの、どうすりゃいいんだ!!」


 もはや何かを閃いたところで検証する予断もない。ただ走るのみだった。それだけが許されていた。

 そうしているうちに、視界前方に切り立ったフェンスが見えた。


 察するに区画の外周を囲っているものだろう。

 そこに一瞬、脱出の期待を強く寄せるも、フェンスの高さからして、とても一息で上れるようなものではなかった。

 ましてやこの状況にあっては、足場を作って、取り付くのも無理だろう。


「やっぱ、出口を探すしかないみたいだなっ」


 しかし、フェンスがあるということは、最も外周寄りに来ていると推測できる。だとすれば、出口はそう遠くないはずだ。


「そうだ、希望はある……っ!!」


 一も二もなく突き進むしかない。

 すると、程なくして、今までで一番広い通りに出くわした。大型の工事用車両でも平然と通れそうな幅がある。

 これは、いよいよ出口が近い。そんな予感を抱かせる。


「はっ……はっ……はっ…………出口は、どこだ……出口はッ!」

 

 俺は咄嗟に視線を周囲へ走らせた。

 導線や案内標識を見つけようというのだ。

 だが、突き出す棘がその猶予を与えない。

 死にたくなきゃ、走りながら見つけるしかない。


「……出口…………どこだあああ!!」


 今すぐ出てこいとばかりに叫ぶ。

 しかし出てこない。当たり前だ。


 俺は必死に走った。

 走って走って走り続けた。

 けれども、どれだけ走ってもフェンスの絶え間も、出口の表示も、世界から隠されてしまったように見つからない。

 そこから感じる不気味さと、増していく違和感に釣られ、頭を狂わす焦燥感が、頭蓋の天辺まで上り詰めようとしてくる。

 恐怖は理性を手放すように強要する。

 それでも俺は、折れそうな心を何度も立て直し、地面を蹴り続けた。


「まだ、なんとか、なる……!!」


 だが、無間地獄が終わらない。

 そこへ追い打つように、足裏から顔が強ばるほどの激痛が走った。


「はぁ……はぁ…………う、あ、……足が……っ!!」

 

 足裏の筋肉がすり潰れ、肉の守りを欠いた骨が、折れそうなほどの軋みを上げた。

 それは足を継ぐ度に強くなっていった。

 その痛みは、もはや、どんな足の着き方をしても軽減のしようがなかった。


 だけど止まるわけにはいかない!――――


「走れ……、まだ止まるなっ! 走り続けろ!!」


 自分自身を鼓舞するように、声を大にして叫んだ。

 だがその意志に関係なく、俺の両足は、エンジンを切ったように脱力した。

 急速に墜ちていくスピードに、着地の衝撃が一段と大きくなって、ガクンガクンと上体が揺れた。

 やがて走っていた勢いを完全に失うと、足は魂でも抜けてしまったかのように動かなくなった。

 それとは対照的に、鼓動はおかしなくらい早鐘を打っていた。


「動け…………動けよっ!!!」 

 

 必死の形相で自分を叱咤し、振り下ろした拳で脚を叩いた。

 それでやっと一歩進んだ。

 しかしそれは歩みではなく、ただ前傾しすぎた姿勢を保とうとして脚を張ったに過ぎなかった。

 もう動かない。動かせない。

 それはまるで脳が足の挙動のプログラムを消去したかのように、脚の感覚は、自分から切り離されてしまっていた。


 もはや体の付属品(オマケ)と化してしまった動かぬ脚。

 未だ前方に俺の目を喜ばせるものは一つも見えない。

 後ろには絶望が幾らでも転がっているというのに――――。


「後ろ…………あ、れ?」


 俺は棘の攻撃が止んでいることに気づいた。

 ヤツの気配も気持ち悪さも感じない。

 さっきまでが必死すぎて、今やっとそれを把握した。


 奇しくもそこは、舗装されたアスファルと未舗装の砂利道の境界線。

 俺が足を止めたのは、聖域のように燦々(さんさん)と陽光が差し、砂利の隙間からは所狭しと植物が芽吹いている場所。

 廃れた人工物に囲まれた『自然』だった。


「…………ここは……安全地帯(そういうこと)なの、か……」


 すっかり息の上がっていた俺は、よろめきながら安堵のため息をついた。

 長い暗闇から抜け出したような気分だった。

 さっきまで肌に纏わり付いていた冷たい汗は、温くなってぽたりぽたりと滑り落ちる。

 あまりの気息の乱れに、体のあちこちが戦慄(わなな)いて、姿勢が定まらない。

 それでもなんとか堪えていると、不意に足に痛みが走った。鋭い痛みだった。

 きっと無理を強いたせいだろうと思った。

 すると今度は、痛みが、例えようも無い異物感に変わった。

 見下ろすと、夜よりも深い黒色の棘が右足の(すね)を後ろから貫通していた。


「~~~~~~~ッッ!!」


 俺の(すね)から突き出た黒い尖端を、てらてらした赤黒い血がどろっと滑った。

 それが重々しく一滴垂れると、シュッと、棘が引き抜かれた。

 それを合図に足の傷口から血が噴き出した。

 俺は傷口を押さえることも忘れ、息を殺して、恐る恐る振り返った。

 心臓が止まった。

 そこに、目があった。黒一色の目が。

 それは二十センチと離れていないところで、俺を凝視して、


『イイイイタイ…………イタイイイ……スイシシシ……シシ……シ』


 ヤツは真後ろ(そこ)にいた。

 恐らくずっとそこにいた。

 はじめから地獄(ここ)に聖域などなかった。

 そして『シネ』と聞こえた次の瞬間、棘に腹を貫かれていた。


「ぁ…………ぁ――――――」

 

 俺を貫通した棘はカメレオンの舌のようにシュッと地面へと吸い込まれていった。

 一瞬遅れて、傷穴からブシュッと血が噴出した。

 視界がぐらりと揺れた。

 身体から力が抜け、そのまま後ろ向きに倒れていく。

 アドレナリンのせいだろうか、それとも死に向かっているからだろうか、こんなにひどい有様なのに痛みがない。

 痛くないはずはないのに。




 ああ……もう感じられないだけか――――――。


 

 魔法を使えるようになりたいと強情を張って、ここまできたのに……。


 自分が出来る努力を尽くしてきたはずなのに……。


 どうしてこんなにも…………俺は弱いのだろう…………。


 俺は今まで、どれだけまゆりの力に助けられてきたんだろう……。



 

 意識が無力さの中へと沈み込んでいく。


 心の中で終わりを悟った。


 目の奥から力が抜ける。


 暗い安らかさの中に埋もれていく。


 なのに体は不思議と温かで。


 風にさらわれたように、とてもふわふわとしている。



 瞼の裏に浮かぶのは、やわらなか銀色の髪。


 そしてあの綺麗なエメラルドの…………。




 …………。




 ……。






 ん…………ふわふわ……?


 俺は堅牢な金庫のように堅く閉ざした瞼を懸命に開いた。

 手が見えた。

 俺の額をさする手が。

 暖かくて優しい小さな手が。

 その指先に光が点っている。

 翡緑の色をした綺麗な光だ。それがとても暖かい。


「あなたの私が来たわ。もう平気よ(りょう)


 大好きな声が聞こえた。

 やわらかで優しい音色の。

 親の声より聞いた声。ふんわりとしたあの声が。


「まゆ……り……なの、か?」


「んふふ、そうですけどっ。腕輪の状態をモニターしてて、心配になったから買い物を抜けて来たの。そうしたら酷いことにってるんだもん、ビックリしちゃった」


 まゆりは場に不釣り合いなほど落ち着き払っていて、ともすれば普段よりおっとりとして見えた。

 一方で俺は、まゆりの魔法で白色のふわふわとした綿のようなもの身を包まれていた。

 それがリクライニングベッドのように程よい角度で上体を支持してくれていたので、こちらから身を起こさなくても視界は良好だった。

 お陰で可愛い顔がよく見える。


「傷の治療はもう終わったわ。でも体力は少し時間がかかるの。だから今はそこで休んでいて?」


 まゆりは小さな子供に言い聞かせるみたいに、人差しで俺の鼻先をちょんと押さえた。

 俺が小さくうなずくと、満足そうに笑って、それからゆっくりとした足取りで、ヤツと対峙しに向かった。


「私、今日のお昼の当番なの。支度があるから、すぐに帰らせてもらうわ」


 風に舞うように、ふわりとそう告げると――――

 まゆりは抑えこんでいた魔力を解放し、心の内側を顕わにしたかのように、爆発的な大放電を起こした。

 (まばゆ)い翡緑の雷光に包まれたその姿は、(いかずち)を統べる雷公(なるかみ)か、或いは(いかずち)そのものであった。


『キ……イ……!!』


 圧倒的な存在の降臨を前にし、ヤツの機械音上ずった。

 きっと本能めいたモノが全力で信号を発しているのだ。己の滅亡を知らせる赤い信号を。

 するとヤツは、これまでから一転して尻尾を巻いて逃げ出した。

 しかし逃走は1秒と経たずに終わりを迎えた。

 逃げ惑うヤツの周囲、その中空から出でた翡緑の捕縛鎖(ほばくさ)が、ヤツの五体を矢庭に雁字搦(がんじがら)めにしたからだ。


『バ……ゲ!?』


「あまり煩わせないで。女子は忙しいの」


 指一つ動かさずに放った捕縛魔法。そして普段とそれほど変わらない口調が却って威圧感を増させている。



 俺は、小さいときに思っていたことがある。


 どうして魔法は、どこからでも自在に出せないのかと。

 そういうのが魔法ってヤツなんじゃないのかと、ずうっと思っていた。


 事実、それまで俺の見てきたどんな魔法も、魔法を使う当人の手の届く範囲からしか現出しなかった。

 小さな俺は、そのことに失望した。


 その頃よりも少し大きくなった俺は、ある時ようやく理由(ワケ)を知った。

 魔法は術者の魔力の及ぶ範囲『魔力制圧圏』内でしか発現できない、ということを。


 この魔力制圧圏は、一般に、両手を伸ばした距離より数センチ広い程度だそうで、この範囲を超えての発現は、外界からの魔力干渉が増大するため、ほぼ不可能だと言われている。


 だから、小さな俺が願ったような『離れ業』なんて、そもそも誰にも出来っこなかったのだ。

 

 だったら今。

 まゆりは、どうやって離れた場所に拘束魔法を展開できたのか。

 自分の位置からならともかく、数メートルも先など通常の魔力制圧圏の概念からすれば、到底不可能な距離だ。

 それをどうやって実現できたのか――――。


 答えは簡単だ。

 この周囲全てが、まゆりの魔力制圧圏だからだ。

 通常の概念が全く通用しないからこそ、規格外。

 ゆえにこの子は、世界最高位の魔法使いなのだ。


『…シ……イ………!』


 ヤツは逃れたい一心で鎖を必死に千切らんと藻掻くが、翡緑の戒めはビクともしない。


「早く済ませたいのはお互い様みたいね。それじゃあ最近作った自信作の時短魔法を披露するわ。この魔法は命中と同時に対象の弱点属性に変異するの。汚染なんていう正体不明にはおあつらえ向きの魔法でしょう? ね?」


 そう言ってまゆりは俺の方にチラっと顔を向けて、可愛くウインクした。

 すると魔法が一瞬で形成された。


『ジ……!!』


 ヤツの頭上、数メートルの位置に――形成された新造魔法(オリジナル)は、普段まゆりが放つ翡緑の魔力色とも、雷の魔力特性とも一致しない、全くの別物で――まばゆい純白の燐光を纏った白き魔弾が、矢のごとく(つが)えられていた。


『ソ……クタ……イキョ……スイシ……シシ……シ――――……』


「名前はそうね。七変化――――ランタナ・ブリット、でどうかしら」


『シヌ!!』


 ご愁傷様です、としか言い様がない機械音声が聞こえたとき、ランタナ・ブリットは七変化の和名が示す通り、ヤツ最大の弱点となって直撃した。

 荒れ狂う白光の大瀑布に呑み込まれる中、ヤツの高機能補助魔導機(デバイス)は狂ったようにノイジーな機械音をはき出した。

 そして光が柱となって収束した直後、ヤツのポケットの中で爆散した。


 見るに、まゆりのランタナ・ブリットはヤツに憑いていたものだけを標的にしていたらしい。

 よって、ヤツの体は――なぜか頭はもっとボンバーしていたが――無事だった。


 していると、珍しくまゆりが感想を呟いた。


「属性の変異がイマイチだったかも」


 何も聞かなかったことにした。

 



**6**



 それからまゆりは、後片付けと称して、ヤツを封印区画の外へ転移させた。

 まゆりの転移魔法は舟山のテレポートのようなものではなく、ワープホールを形成して、空間同士を結びつけるものだった。

 ちなみにワープホールが開く瞬間は、大量のガラスが割れるようなヒドい音がした。


「私の転移魔法は、転移標識を立てた所に接続するポータル・タイプなの。標識なしだと転移可能な距離がすごく短いから、あんまり使うことないですけど」

「じゃあここに来る前に外に?」


 うん、と頷くまゆり。

 本来は脱出目的で用意したのだろうが、結局それはヤツに使った。

 いまは転移ゲートを閉じ、周囲に結界を張って、俺が歩けるように回復を行っている。


「なあなあ俺たちも転移で帰るってのはナシなのー?」

「むぅ~~~、(りょう)ったらヒドいんですけどぉ。これから私、お家でみんなのお昼作らないとなんですけどぉー。ちょっとは労ってほしいんですけどぉー」


 いつになくジトーッとした半眼を向けて唇を尖らせるまゆり。

 そういえば買い物を抜けて急いできてくれたんだった。それに腕輪のお礼もしないといけないか。


「そっかそっかあ。じゃあさっ――――」


 まゆりは丁度回復が終わった手を休めて、勿体振った俺を見ながら、なんだろうと小首をかしげた。

 それでもまだ口を割らない俺に、まゆりは催促するような視線を向けてきた。

 それを見て、俺はニッと歯を剥いた。


「――――抱っこして帰ってもいーい?」


 まゆりは全く予期していなかったのだろう。

 一瞬「へ?」と目を皿にして固まったかと思えば、急に慌てふためいて、今度は思いっきり目を白黒とさせた。

 

「だだっ、だめだめだめ!! そ、そんな子供っぽいの、ししししないもん!」

「なあ、ほんとうに駄目か? 絶対に?」


 俺はまゆりの両肩に手を添えて、それから目をじいっと見つめた。

 まゆりは揺れる瞳を何度も逸らしてはこちらに向けた。


「だ……だめ、じゃないけど……ちょっとだけ…………ならいいですけど」


 まゆりは俯きながら躊躇いがちに答えた。

 俺は大勝利のガッツポーズを決めて、直ぐに、お姫様だっこした。

 まゆりの顔は驚きと恥じらいで、耳の先まで真っ赤になっていた。


「あ、えっと、あの、えっと!」

「よぉし!! そんじゃあメチャクチャ飛ばすからな! しっかり掴まっててくれよ!」

「へ――――」


 俺は足を溜めて溜めて溜めて、そして一気に加速した。

 空気の流れに髪が揺れ、耳元でヒューヒューと風鳴りが聞こえる。

 全身で風を切っているのがわかる。


「う、嘘うそうそうそっ?! な、ななっ、なんで補助魔法(エンハンス)を足した時よりも早くなってるの!? 待ってまって!! (りょう)ほんとに人間なの?!」

「んんー? そーですけどー?」


 回復しきった足はよく回り、あっという間に封鎖区画を飛び出した。


 更に増速する俺の健脚に、まゆりは戦々恐々。

 小さな手で必死にしがみついてきた。



 とめてええええぇぇぇぇぇ


 おろしてええええぇぇぇぇ



 ふんわりしたかわいい絶叫が、どこまでも青い空に吸い込まれていった。

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