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オトトイノユキ

作者: 膝野サラ
掲載日:2018/02/25

一昨日雪が降った、そして積もった。



一人で数十分かけて素手で雪だるまを三つ程作った。

家に戻る頃、手の感覚は殆どなく、

小便をするのにも手こずるくらいだった。

そして元々弱い腹も分かりやすく壊した。



そういえば昔の友人が書いていた、

ヒロインの名前は「ユキ」だったな。

あの長く終わらない小説の、

ユキと主人公の関係はどうなったのだろう。



そしてあの昔の友人であり、

小説を書けなくなった少年は、

今頃どうしているのだろう。





あいつと出会ったのは高校に入って数週間後の事だ。

どういう経緯で出会ったかは忘れた。

クラスも違い特に何かあった訳でもないのに、

いつの間にか俺たちは二人で、

メールのやり取りをしていた。



メールは大体は俺の方から送り、

内容は本当にしょうもない内容で、

「良いエロ動画探すのに二時間かかった」やら、

「俺はいつ童貞捨てれるんだよ」やら、

そういういかにもしょうもないメールばかり、

俺は送っていて向こうが面倒臭そうに、

冷めた感じの返事をしてくるのがまた、

不思議に楽しかった。



そんな俺らが唯一真剣に語り合う内容が、

小説についての事だった。



お互い好きな小説家が同じだったり、

お互い自分で小説を書いてたりした為、

読んだ小説の感想を言ってすすめたり、

自分の書いた小説の感想を尋ねたりした。



俺は当時小説を書き出したばかりであり、

俺の作品はまあ良いと言えるものではなかった。

あいつは自分の意見を正直に言ってくれる人であり、

面白くなければちゃんと面白くないと言ってきた。

面白い時はちゃんと面白いと言ってくれた。

それがまた嬉しくありがたく感じていた。

だから俺も相手に対して同じ様にしていた。





夏休み前の時期、

一度二人でカラオケに行った事があった。

俺の持病の関係で何度もドタキャンが続いたが、

その日はようやく遊ぶ事ができて、

電車で学校の最寄駅に行きそこで合流し、

最寄駅近くのカラオケに入った。



三時間コースを選択し交代交代に何曲も歌った。

好きなバンドが意外にも被っていたりした為、

相手が歌う曲も知ってる曲が多かった。

好きなバンドまでもが同じと初めて知った時は、

流石に気持ち悪いとすら感じるくらいだった。

それくらいに俺とあいつは似ていたのだ。



歌い続けて一時間四十五分程経った頃、

一度歌うのをやめてお互いの小説を読み合ったり、

学校についての話をしたりした。

その頃から俺は学校での人間関係に悩んでおり、

それが後に俺の学校を辞める原因になったのだ。



とても楽しい時間だった。

友達の全くいなかった俺がこれ程までに、

気を使わず話せたのは初めてくらいだった。

この時くらいから俺達は親友になるのだろう。

と思い始めていた。



しかし結果的にはあいつとは五ヶ月程の仲で終わり、

遊んだのはその一回きりであった。



その後もメールでのしょうもなくしかし楽しい、

やりとりは続いており、

勿論小説についての話も続いていた。





ある日あいつがこう言っていた。

「俺はいつからか小説が書けなくなってしまっている」



あいつのその書けなくなって途中で止まっている、

長編小説を少しだけ見せてもらった事がある。

少し読んだだけだから詳しい内容は分からないが、



夜の公園でブランコに揺られ、

その後二人で何処かに向かうところで、

あいつによく似た主人公と、

ヒロインのユキの物語は止まっていた。



数ヶ月間この状態のまま、

止まってしまっているらしかった。


あそこから物語は進んでいるのだろうか。

と今更ながらに思う。





時は経ち夏休みも後半に差し掛かったくらいの時の話。

一学期からずっと迷っていたが決心し、

俺が学校を辞める事にした。

理由はさっきも言った通り人間関係の問題だ。

詳しい内容は面倒臭いので伏せておくよ。



いつものようにメールで俺はあいつに、

学校を辞めるという事を報告した。

以前から相談していた事もあってか、

あいつは俺の意見に賛成までではないが、

俺がこれからも友でいてくれるかと問うと、

あいつは当たり前だと言ってくれた。



しかしそれから一ヶ月程で俺とあいつの関係は終わる。



学校を辞めるという報告をしてからも、

五回程はメールでやり取りをしていた。



最後にやり取りをしたのは、

俺が散髪に失敗して「散髪失敗したわコラ」みたいな、

いつも通りのしょうもないメールだった。

あいつの返信もいつも通り「知らねえよ」みたいな、

いつもの中身のないしょうもないメールだった。

それが俺とあいつの最後の会話だ。





その時は突然やってきた。

たしか大事な用があったので、

俺はあいつに起きてるかの確認の為に、

「寝てるか」というメールをした。

その時から一切返信は来なかった。



メールをブロックされてるか確認できる方法で、

試してみたがブロックされてる訳でもない。

メールの一言コメントの欄が更新されてる為、

携帯やメールアドレスを変えた訳でもない。

勿論急に死んだ訳でもない。



その後もあいつのSNSとメールの一言コメントが、

更新されるのだけを眺めている。





もう一度あいつとしょうもないメールを、

したいという自分が居る。

そして、







いつかのあいつがこう言っていた。

「俺はいつからか小説が書けなくなってしまっている」



あいつの小説の中のあいつによく似た主人公と、

ヒロインのユキの物語は、

夜の公園でブランコに揺られ、

その後二人で何処かに向かうところから、

進んでいるのだろうか。

二人は何処に向かって行ったのだろうか。





よしメールを送ろう。



返事が来るか来ないかは分からない。

来なければそれで終わりにすればいい。

あいつによく似た主人公とユキの物語も、

その後を知れないのなら忘れてしまおう。



もしかしたらこれが正真正銘あいつに送る、

最後のメールになるのかも知れないな。

文面はもう思いついているさ。







「一昨日のユキは綺麗だったか」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はいつもの恋愛物ではなく、

初の友達物(?)にさせていただきました。

このタイトルを考えた日の、

一昨日に雪が降ったので、

このタイトルを思いつき、

このタイトルに合わせ今回書いてみました。

三月から忙しく四月からは持病悪化の、

可能性もありますので更新が更に遅くなる、

可能性もありますがよろしくお願い致します。

まあ毎回見てくれる人は、

今のところ居なさそうですが。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 友達が書いていた小説の内容や一昨日に雪が降ったという状況が、伏線のように最後の一言に収斂されていてよかったです。
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