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オトトイノユキ

作者: 膝野サラ

一昨日雪が降った、そして積もった。



一人で数十分かけて素手で雪だるまを三つ程作った。

家に戻る頃、手の感覚は殆どなく、

小便をするのにも手こずるくらいだった。

そして元々弱い腹も分かりやすく壊した。



そういえば昔の友人が書いていた、

ヒロインの名前は「ユキ」だったな。

あの長く終わらない小説の、

ユキと主人公の関係はどうなったのだろう。



そしてあの昔の友人であり、

小説を書けなくなった少年は、

今頃どうしているのだろう。





あいつと出会ったのは高校に入って数週間後の事だ。

どういう経緯で出会ったかは忘れた。

クラスも違い特に何かあった訳でもないのに、

いつの間にか俺たちは二人で、

メールのやり取りをしていた。



メールは大体は俺の方から送り、

内容は本当にしょうもない内容で、

「良いエロ動画探すのに二時間かかった」やら、

「俺はいつ童貞捨てれるんだよ」やら、

そういういかにもしょうもないメールばかり、

俺は送っていて向こうが面倒臭そうに、

冷めた感じの返事をしてくるのがまた、

不思議に楽しかった。



そんな俺らが唯一真剣に語り合う内容が、

小説についての事だった。



お互い好きな小説家が同じだったり、

お互い自分で小説を書いてたりした為、

読んだ小説の感想を言ってすすめたり、

自分の書いた小説の感想を尋ねたりした。



俺は当時小説を書き出したばかりであり、

俺の作品はまあ良いと言えるものではなかった。

あいつは自分の意見を正直に言ってくれる人であり、

面白くなければちゃんと面白くないと言ってきた。

面白い時はちゃんと面白いと言ってくれた。

それがまた嬉しくありがたく感じていた。

だから俺も相手に対して同じ様にしていた。





夏休み前の時期、

一度二人でカラオケに行った事があった。

俺の持病の関係で何度もドタキャンが続いたが、

その日はようやく遊ぶ事ができて、

電車で学校の最寄駅に行きそこで合流し、

最寄駅近くのカラオケに入った。



三時間コースを選択し交代交代に何曲も歌った。

好きなバンドが意外にも被っていたりした為、

相手が歌う曲も知ってる曲が多かった。

好きなバンドまでもが同じと初めて知った時は、

流石に気持ち悪いとすら感じるくらいだった。

それくらいに俺とあいつは似ていたのだ。



歌い続けて一時間四十五分程経った頃、

一度歌うのをやめてお互いの小説を読み合ったり、

学校についての話をしたりした。

その頃から俺は学校での人間関係に悩んでおり、

それが後に俺の学校を辞める原因になったのだ。



とても楽しい時間だった。

友達の全くいなかった俺がこれ程までに、

気を使わず話せたのは初めてくらいだった。

この時くらいから俺達は親友になるのだろう。

と思い始めていた。



しかし結果的にはあいつとは五ヶ月程の仲で終わり、

遊んだのはその一回きりであった。



その後もメールでのしょうもなくしかし楽しい、

やりとりは続いており、

勿論小説についての話も続いていた。





ある日あいつがこう言っていた。

「俺はいつからか小説が書けなくなってしまっている」



あいつのその書けなくなって途中で止まっている、

長編小説を少しだけ見せてもらった事がある。

少し読んだだけだから詳しい内容は分からないが、



夜の公園でブランコに揺られ、

その後二人で何処かに向かうところで、

あいつによく似た主人公と、

ヒロインのユキの物語は止まっていた。



数ヶ月間この状態のまま、

止まってしまっているらしかった。


あそこから物語は進んでいるのだろうか。

と今更ながらに思う。





時は経ち夏休みも後半に差し掛かったくらいの時の話。

一学期からずっと迷っていたが決心し、

俺が学校を辞める事にした。

理由はさっきも言った通り人間関係の問題だ。

詳しい内容は面倒臭いので伏せておくよ。



いつものようにメールで俺はあいつに、

学校を辞めるという事を報告した。

以前から相談していた事もあってか、

あいつは俺の意見に賛成までではないが、

俺がこれからも友でいてくれるかと問うと、

あいつは当たり前だと言ってくれた。



しかしそれから一ヶ月程で俺とあいつの関係は終わる。



学校を辞めるという報告をしてからも、

五回程はメールでやり取りをしていた。



最後にやり取りをしたのは、

俺が散髪に失敗して「散髪失敗したわコラ」みたいな、

いつも通りのしょうもないメールだった。

あいつの返信もいつも通り「知らねえよ」みたいな、

いつもの中身のないしょうもないメールだった。

それが俺とあいつの最後の会話だ。





その時は突然やってきた。

たしか大事な用があったので、

俺はあいつに起きてるかの確認の為に、

「寝てるか」というメールをした。

その時から一切返信は来なかった。



メールをブロックされてるか確認できる方法で、

試してみたがブロックされてる訳でもない。

メールの一言コメントの欄が更新されてる為、

携帯やメールアドレスを変えた訳でもない。

勿論急に死んだ訳でもない。



その後もあいつのSNSとメールの一言コメントが、

更新されるのだけを眺めている。





もう一度あいつとしょうもないメールを、

したいという自分が居る。

そして、







いつかのあいつがこう言っていた。

「俺はいつからか小説が書けなくなってしまっている」



あいつの小説の中のあいつによく似た主人公と、

ヒロインのユキの物語は、

夜の公園でブランコに揺られ、

その後二人で何処かに向かうところから、

進んでいるのだろうか。

二人は何処に向かって行ったのだろうか。





よしメールを送ろう。



返事が来るか来ないかは分からない。

来なければそれで終わりにすればいい。

あいつによく似た主人公とユキの物語も、

その後を知れないのなら忘れてしまおう。



もしかしたらこれが正真正銘あいつに送る、

最後のメールになるのかも知れないな。

文面はもう思いついているさ。







「一昨日のユキは綺麗だったか」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はいつもの恋愛物ではなく、

初の友達物(?)にさせていただきました。

このタイトルを考えた日の、

一昨日に雪が降ったので、

このタイトルを思いつき、

このタイトルに合わせ今回書いてみました。

三月から忙しく四月からは持病悪化の、

可能性もありますので更新が更に遅くなる、

可能性もありますがよろしくお願い致します。

まあ毎回見てくれる人は、

今のところ居なさそうですが。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 友達が書いていた小説の内容や一昨日に雪が降ったという状況が、伏線のように最後の一言に収斂されていてよかったです。
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