6:魔王城の初来店者は鉄の胃袋です
「モンスター界では独自の食物連鎖があるのだ。植物モンスターは草食モンスターに食べられ、草食モンスターはイエティのような肉食モンスターに食べられる。ちなみに俺は何でも食うぞ」
「さ、さすが魔王様。食事も豪快なんですね。それによくよく聞けば、人間世界の食物連鎖も同じですね。私たちも有難く他の植物、動物を食べてますから」
「そうだな。ちなみにモンスターが人間を食うというのはまったくのデタラメだから信じるなよ」
「ええ!? 私本当の魔王がいた頃、きっとモンスターに食べられちゃうって思ってました」
……意外と精神的にダメージを受けるものだな。外部から見るとそう見られていたのか。俺は貴族や肥え太った王族、それを守る勇者を排除できればそれで良かったのだが。
……いや、それが世界征服というものなのか。世の中ままならないものだな。
一通りナーガの調理風景を眺めて、最後にくねくねパンをもらって食堂をあとにした。
「一応モンスター用なのだが」
「大丈夫です! 私は鉄の胃袋って言われてますから」
小さな口で少しずつ食べるのではなく、豪快に一口で半分を食った。粗野だが気に入った。
「茶だ。飲め」
「あ、ありふぁとうごふぁいまふ」
「あー、美味しかったあ」
見ると、いつの間にか残り半分のパンも消えている。俺の目をもってしても気づかないだと……。なんというヤツだ。
次は……まあ、一応近いから宿舎を見るか聞いてみるか。汚くてどうしようもないが、魔王城らしいと言えばらしくはある。
「この先は宿舎だが見ていくか。恐ろしいほどの悪臭が漂っているが」
「見ます見ます! どんな風に寝るのか気になります!!」
この後、宿舎でゴブリンのベッドで横になり、訓練場でオーガに槍の使い方を習い、図書室では暗黒魔道士に投擲の呪文を習いマスターしてしまった。
何ともやりすぎたような気がするが、クリスに言われるとどうにも断れない。
「最後に、俺の部屋だ」
「ど、どきどきします。入っていいですか?」
「かまわんぞ。だが、見て驚くなよ」