第二王女のジュリア
二人の王女に連れて行かれて辿り着いた先は、絢爛豪華な宮殿だった。
が…。
確かに、童話とかに出てきそうな立派な宮殿だけど、何て言うか、辛気くさいつーか、全体的に雰囲気が暗いんだよなー。
「洋一。バルコニーで一緒にシャンパンでも飲まない?」
さっきまで、オレのこと見せ物にするとか散々バカにしてたくせに。
ジュリアは、なつっこい笑顔を見せてオレの腕を強引に引っ張った。
「シャンパン?」
「いいから、早く行こう。」
この変わりようは一体何だろう?
さっきまでとまるでテンションが違う。
まぁ、女の子(?)に好かれるのは悪い気はしなかったので、ジュリアに引かれるままにバルコニーに上がる。
一瞬誰かの視線を感じ振り返ると、ユリアだった。
ユリアは何か言いた気にこっちを見ていたが、オレと視線がぶつかると、バツが悪そうな顔をして視線をずらした。
バルコニーに出ると、心地良い風が吹いていた。
青色の三日月は相変わらず、頭上で鈍い光を放っていた。
「そう言えば、ここ、夜の国とか言ってたっけ?」
「うん。そう、夜の国。」
「よく意味が分からないんだけど、夜の国って朝は来るのか?このまま夜が続くのか?」
訳が分からないと言うように、ジュリアは小首を傾けた。
「夜はまだ来てないわ。夜になったらここは本当危険で絶対に外に出れないわ。」
「は?だって月が出てるじゃないか?」
「月が出てるから、夜じゃないのよ。」
「は?」
「月が出ている間は夜は来ない。そして、夜になったらいつまで夜が続くか分からない。そこが一番怖い。夜は寒いなんてものじゃないほど気温が下がり、宮殿の一歩外でも出たら凍えそうなほどの冷気が襲う。」
始めジュリアの話を半信半疑で聞いていたが、表情を見るからにして冗談でないことが分かる。
ジュリアの耳がピクピクと動いてるし。
オレはジュリアに渡された、シャンパングラスを口に運んだ。
「これ、アルコールはいってるじゃん。」
口に入れた瞬間に吐き出してしまった。
17才ながら、アルコール飲料はわずかながら飲んだことはあるが、これはアルコールなんて生易しい言葉じゃ言い表せないほど、アルコール度数が強いと思った。
「アルコール?」
何それ?と言うようにまたまたジュリアは首を傾けた。
くー。こいつ生意気なくせに仕草が可愛いな。
この猫耳のせいか?
この猫耳のせいで可愛く見えるのか?
と言うかこいつがテンション高いのは、この飲み物のせいなのではないかと思った。
「とにかく、夜になったら絶対に外に出ちゃダメだからねっ。」
小さな唇を尖らして言うジュリアがとても可愛く見えた。




