王女と出会う
今にも消えてしまいそうな存在感。
透き通るような白い肌。
肩までのプラチナブロンドの髪。大きな緑色の瞳。
人形のような整った顔立ちは、童話に出てくるお姫さまを彷彿させる。
彼女の方は装飾品などつけていないが、存在その物が美しすぎて、ああ、彼女はこの国の王女なのだろうと思わせた。
そんな美しい女性が、さっきの生意気そうな女に一言。
「ジュリア、人をからかうのは止めなさい。」
あれ?この声どこかで聞いたことがある。
最近どこかで聞いたことあるんだけどなー。
「別にからかってなどいませんわ。お姉様。でも、見てくださいな、この男の格好。ずいぶんとおかしな格好だと思いません?」
オレを指差し、またプププと笑い出す。
ムッときたオレは、またその女の頭に生えてる耳を引っ張った。
「痛いと言ってるでしょ。ロウ、こいつの首をはねておしまい。」
その女の言葉に、長身の尻尾男が腰に下げていた剣を抜こうとするから、さすがのオレも一歩引いた。
しかし。
「お止めない、ロウ。」
馬車の中の女王に止められ、面白く無さそうな顔をして剣を納めた。
「ご無礼をお許しください。私はこの国の王女ユリヤと申します。」
初めて彼女と目が合った。
何て悲しそうな目をしているのだろう。
その瞬間気付いた。
そうだ、きっと彼女がオレをこの国に呼んだんだ。
あの『助けて』と言う声は彼女のものだったんだ。
何て思うのはちょっと願望が入ってるかも。
「それより、お前の名は何て言うの?」
ジュリアがベーと軽く舌を出してから聞いてきた。
「はぁ?上から目線で聞くなよ。オレは古瀬洋一。」
「へーーーーんな名前。格好も顔も名前も全部変なのね。変な男。」
歌うように言ったジュリアは、何かを思い付いたらしく、ポンと指を鳴らして、
「そうだ、この男、城に連れて帰って見せ物にしましょ。」
おいおい、見せ物って何だよ。
まぁ、泊まる場所を提供してくれるのはありがたいが…。
「しかし、ジュリアさま、こやつはジュリアさまの命を狙う刺客かもしれません。そんな奴を連れて帰るなど…。」
「ロウは心配しすぎ。だいたいこんな奴に私を刺せる器量なんてないない。ね、いいでしょ、お姉様。」
ユリヤは自分に振られるなんて思ってなかったようで多少困惑した様子だったが、静かに言った。
「見せ物と言うのは感心しませんが、その者が城へ来たいと言うのなら止めません。」
まぁ、他に行くとこもないし、この異世界でオレはこの王女を救わないと命を取られるつーならこのゲームにのるしかない。
ってな訳でオレはこの王女たちと城に向かうことにした。