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1. 序
歌声........子供達の歌声だった。
小さな子供が二人、異国語の歌を歌っている。
小さな男の子は、小さな女の子に、優しく異国語の歌を教えた。
「“エーデ、シエイデ、ゲェィュヴ(花を思わん)”だよ、アムリ。“エーデ、シエイデ、ギーヴ(星を思わん)”じゃない」
男の子が言った。
女の子は、幾度も“ゲェィュヴ(花)”と発音しようとしたが、どうしても“ギーヴ(星)”としか聞こえない。
「あたし、“ギーヴ(星)”のほうがすき、ユーリ」
女の子は、膨れっ面をして訴えた。
男の子は微笑み、女の子のふわふわの金髪をくしゃっと撫でた。
「アムリにはむずかしいね。ギーヴ(星)がすきならギーヴ(星)でもいいよ。ぼくもほしはすきだから」
小さな女の子は、目をまん丸くして彼女よりも少しお兄さんである男の子の、木の実の様な瞳を覗き込んだ。
「ほんとう?ユーリ?」
男の子は笑ったので、彼の木の実色の瞳は細くなった。