王子、騎士団を訪れる
双頭竜についての説明を加えました。 2015.2/18
リブフレット国。魔法による発展が目覚ましい先進国の一つ。建国から一千年弱続く、大陸の中でも歴史のある大国だ。ユージラス大陸に存在する、七国の中で二番目に古く内陸部に位置している。現国王の「 エクトフェス・ネア・ロイン 」は、〝冷酷王〟として名高い。統治能力は高く、外交もそつなくこなす王としては有能であるが。一切の罪を赦さず、法を犯し重き罪を犯した者たちは一族、関係者を全て断罪する。その凍えた眼差しは、暑い夏でも辺りが氷土と化すと言われるほど強く鋭い。そんな彼には現在三人の妻と、僻地の離宮で暮らす妻が一人、そして今は亡き妻が一人いた。亡き正妃であった妻との間に授かった第一王子、「 シュレイナアート・ネア・グラス 」は第一位王位継承権を持ち、先月成人の儀を終えたばかりだ。王族は女であればどこかに嫁ぐまで、男であればその血を、つまり王族であるということを放棄(返上)するまでの間。成人の儀を終えてから専属騎士団を作ることが許されている。シュレイナアートも例外ではなく、成人の儀を終えた後その日の内に乳兄弟として育った二人を専属騎士団に引き入れた。そして今日、貴族平民関係なく構成された城騎士から、専属騎士団のメンバーを選出するために騎士選抜式に訪れていた。
騎士選抜式とは、城騎士の中から予選を突破した三十名をトーナメント形式で戦わせ。基本的には上位五位以内から選ぶものとされている。トーナメントは十五名ずつにチームをわけ、予選トップ者と二位の者は別のチームになり、シード権を得るのだ。今回もつつがなく、選抜式が行われている。
「今年は豊作だと聞いていたが、確かに腕の立つ者が多いようだな」
「そうでございますね。何でも今戦っているあの、銀の剣に碧葉の紋章を持つ騎士はかの有名な〝双頭竜〟の孫だと聞いております」
「ほう。それは、この試合も中々に楽しめそうだな」
トーナメント出場者が扱う武器は、剣でも片刃や双刃、二刀流、飛び道具、など様々だ。だが、やはり剣一本で戦う者が多い。そしてよく見ていると、それぞれがあしらっている紋章は有名な物がある。黒い盾と、白銀の五弁花は最強の護りで有名なスブラット家の物だ。そして双頭竜とは、現役を退いた今もなおその武勇が語られ多くの騎士の憧れの的となっている、竜同様武器を使わず己の身一つで戦った騎士だ。騎士という立場に入るも、その戦いぶりは戦士だった。
ある者は巧みに剣を扱い、ある者は投擲を動きながら百発百中で成功させている。己の身長と同じぐらいの長さの鉄棒を操っているかと思えば、実は大きな鉄扇で防御と攻撃の両方を見事にこなす者さえいた。
確かに今年は、腕の立つ者、それも戦いを魅せる者が多い。実践でも使える能力と、武闘大会で使える「魅せる」能力を併せ持つ者はそれだけ、その能力が高いとわかる。
「ほう、あの二人は両極端な戦闘スタイルだな。攻撃重視と、防御重視か。どちらが勝つか、引き分けるのか楽しみだ」
攻撃こそ、最大の防御
とはいうが。やはり、防御に特化した者には中々勝てないのも事実。攻撃に特化した者が戦闘において有利なのもまた事実だが、守ってくれる者がいるからこそ無茶ができるというものだ。後方支援もなくてはならない。
そして、様々な能力、それも優秀な力を魅せる三十人のトップに立ったのは、紋章はない城より支給された防具を身につけた庶民出身者であった。彼のスタイルは、攻撃に偏ってはいるが。上手く防御と合わせ、一瞬の隙を逃さず仕留める。その速さは瞬発力と判断力のどちらにもみられた。決して大柄、というわけではない己の体を生かしたスタイルを身につけているのだろう。
選抜式が終了し、優勝者を先頭に上位五位のメンバー、そしてそれ以外の参加者がシュレイナアートらの元へやってくる。
そして全員が膝をつき、頭を垂れたことを確認してからシュレイナアートが口を開いた。
「皆の者、見事な戦いぶりであった。期待以上の戦いぶりを見ることができ、私はとても優秀な者たちの主となれることを誇りに思う」
そう述べた後、一番前にいる優勝者を見下ろして言葉をかける。
「これほどの猛者たちの中、優勝した貴君の実力は見事なものだった。私が今回専属騎士に選んだのは、三人。その中でも貴君を私の専属騎士団に最初に任命する。兜を脱ぎ、面を上げよ」
シュレイナアートの言葉を受け、優勝者が頭に被っていた鉄製の兜を脱ぎゆっくりと上を向く。
そこから現れた人物を見た瞬間。シュレイナアートと、サビア、ロット達は息を呑んだ……。
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文法上誤用となる3点リーダ、会話分1マス空けについては私独自の見解と作風で使用しております。