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ルシア・ラークス伝  作者: 川上ハルカ
1章 末の姫様
2/5

1-2

 魔力。

「この世界は魔力で成り立っている。魔力が全てだ」

 と、豪語したのは海を挟んでアルミオーネの北西に位置するゴロネア共和国の数代前の大統領だった。我々の生活には魔力が欠かせない。最も代表的なのが、魔石から抽出した魔力を動力とする車や船である。魔石そのものは全世界あらゆる所に散らばっているが、それらの魔石は抽出できるほどの魔力を有していない。従って、世界各国は少しでも良質な魔石を求め続け、競い合った。アルミオーネとて例外ではない。

 今から五十年くらい前の世界の軍事力の中心にあったのは魔導戦艦だった。今も昔も水を愛したアルミオーネである。先祖代々のアルミオーネの歴史にかけて、「船」で他国に劣ることなど遺伝子レベルのプライドが許さなかった。しかしあっさりとゴロネアに敗れた。魔石の力で劣っていたのである。それ以来というもの、魔石の産出には数的限度があるから、アルミオーネは魔石技術の発展に注力した。いかに効率よく魔力を抽出するか。いかに無駄なく魔力を運用するか、ということにアルミオーネの技術者たちは力を注いだのである。

 時代は変わった。一昔前に覇を唱えた魔導戦艦の時代は終わった。魔導空挺の時代が来たのである。魔導空挺の嚆矢となったのもゴロネアだった。現在のアルミオーネも魔導空挺(らしき物)を保有してはいるが、ゴロネアのそれには遠く及ばない。結局のところアルミオーネは魔石の質、量ともにゴロネアに敗れたばかりではなく、技術面でも大きく遅れをとったのであった。アルミオーネ国民に言わせれば、「我々は水を愛しているのであって空には興味ない」と言うかもしれないが。

 いずれにせよ、ゴロネアに大きく遅れをとったのはアルミオーネだけでなく、その他周辺諸国(いわゆる「七大国」)についても同様だった。その中でもとりわけアルミオーネは、伝統と言えば聞えはいいが、前時代的な船に対して魔力技術の向上を図っているようにしか私には思えなかった。

 そんな正直なことを、五歳も年下のルシアに言うのはあまりに大人げないような気がしたので黙っていた。

「今朝姫さまがリキゾへ発たれたわ」

「公務だっけ?」

「そう。まあ、公務というか療養っていうのかしらね。一ヶ月くらい向こうで過されるわ」

 アルミオーネ王国第二皇女「ファルナ・アルミオーネ」という人が私の主人であった。

「じゃあエリカも一ヶ月療養?」

「二週間は暇をもらっているけど、後半の二週間はお城に戻るわ。姫がいなくてもいろいろお仕事はあるから」

 私のフルネームは「エリカ・ラークス」という。ルシアと同じくラークスの名前を戴いているが実の姉弟というわけではない。私が幼い頃両親は事故死し、両親と親交の深かったラークス家に養子として迎えられたのだ。私がラークス家の養子となった五年後に産まれたのがルシアで、それ以来私たちは実の姉弟のようにして育てられた。両親だと思っていた人も、弟だと思っていたルシアも本当の家族ではないということにはかなり早い段階から薄々気づいていたけれど、実の子のように育ててくれた両親には心から感謝している。

「久々にファルナにも会いたいなあ」

 と、ルシアは馴れなれしい口調で言う。


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