ベヘモット
ベヘモットとの直接対決
「何で象頭?」
良美の疑問に較が答える。
「多分、あれってガネーシャを再現したキメラだろうね」
「えーとガネーシャって神様じゃなかったっけ?」
小較の半疑問系の答えに較が頷く。
「そう、シヴァとパールバディーの息子の象頭の神様。ベヒーモスの読み方違いの一つ、ベヘモットって悪魔は、ガネーシャと混同される事もあるんだけど、実際同じものなのかもね」
『そう、人が我の力を見て、破壊神、シヴァの眷属と勘違いしたのだ!』
ベヘモットの指先から出た光を較は、反射のみでかわす。
かわされた光線は、施設の壁にあたり大爆発する。
「爆発光線?」
叫ぶ良美を庇いながら較が言う。
「そんなちゃちゃなものじゃない。原子単位まで分解されたんだよ」
「そんで何で爆発が起こるのよ!」
良美のクレームに薫が青褪める。
「まさか、核分裂が発生しているって事?」
「そう、簡単に言えば、あいつの光線を浴びた物質は、核爆発するって事よ」
較の端的な説明にようやく理解した良美。
「凄く危険じゃない! 何を考えているの!」
『極神の第一使徒様の力を垂れ流すお前等には、言われたくないな』
ベヘモットの突っ込みにを無視して較が良美を小較に預ける。
「スピード戦になるからよろしくね」
「解った。頑張って!」
小較に応援されながら較がベヘモットに接近する。
『お前の存在は、危険過ぎる。確実に消滅させる!』
両手の指を広げて、その全てから光を放つ。
『フェニックス』
較は、ポケットから取り出した加熱物質を核にして生み出した炎を鳥で前面に展開、光と衝突させる。
光は、炎が生み出す陽炎で歪み、あさっての方向に飛び散る。
そして、炎の鳥を突き抜けるように較がベヘモットに飛び掛る。
『甘い!』
ベヘモットは、象の鼻から突風を生み出して較を弾き飛ばす。
『イカロス』
空中を蹴って竜巻から逃れる較に光が迫る。
『ツキヨミ』
光が較の掌に弾かれた。
「あれってカーバンクルミラーじゃないの?」
良美が訊ねるがカバーしているはずの小較が集中していた答えない。
核爆発が連続して起こる中、較は、光を弾き続ける。
『マテラス』
小較が強烈な光を放った。
『光で我が力を無効化しようと思ったのだろうが無駄。我が力は、この世の理とは、別の理なり』
ベヘモットが新たに光線を放とうとした時、較の手が激しく動いた。
そして光線は、放たれない。
再び接近戦を挑む較。
『何度やろうとも同じ!』
ベヘモットの鼻から竜巻が生まれる。
『スサノオ』
較の手刀が竜巻を切り裂き、そのまま鼻を斬りおとす。
『ダイコクテン』
較の左手がベヘモットの腹に当てられた。
次の瞬間、ベヘモットが内部から吹き飛ぶ。
「何が起こったの?」
困惑する薫に小較が解説する。
「今の一連の技は、お父さんが作った撃術の亜種。全て元があって、特定の目的にそってカスタマイズしたの。最初のツキヨミは、月の女神を意味して、その後にあたしが撃ったアマテラス、太陽神を意味する発光技を収束して攻撃する技、今回は、敢えて相手の光線を弾くのに使って誤魔化し、相手に攻撃の射線に入った事を悟らせなかったんだよ」
「そうか、相手の光線が届くって事は、こっちからの光線も届く、それを使って相手の光線を撃つ指を狙撃したんだ。スサノオってオーディーンの亜種?」
良美の質問に小較が頷く。
「オーディーンにカーバンクルの能力を合わせた技だよ」
そこに戻ってきた較が補足する。
「最後のダイコクテンは、バジリスクやコカトリスの亜種だけど、今回の相手とは、何気に関係あるの。大黒天ってシヴァの化身の一つだからね」
「終わったんですか?」
オズオズと聞いてくる研究員に対して較が首を横に振る。
「まだだね。ガネーシャって何体作った?」
薫が忌々しげに言う。
「信仰対象にもなるから数体あった筈よ」
「まさか、それを一体ずつ全部倒さないといけないって事ですか?」
研究員の言葉に較が眉を寄せる。
「一体ずつなんてこっちの都合に合わせてくれると良いんだけどね」
『我は、効率を重んじる』
そのテレパシーと共に数体のベヘモットが姿をあらわす。
「何で同時に動かせるんですか!」
涙目で叫ぶ研究員に較が説明する。
「元々、乗り移ってるとかそういう類じゃないんだよ。敢えて言うなら指人形みたいな物。それが一つから複数に変わっても大した差じゃないでしょうね」
『その通り、ベヒーモスやこの体にしても、我が本来の形には、遠く及ばぬ。まさに指に嵌める指人形の様なものだな』
ベヘモット達が一斉に光線を放ってくる。
「一体でも大変だったのに、数体同時なんて!」
絶望する研究員と裏腹に良美が余裕たっぷりな態度で言う。
「何言っているの、量産型なんて単なるヤラレ役でしょ」
「そうなの?」
小較の問い掛けに較が苦笑する。
「再生怪人とかと一緒で弱点がばれているからね。数で来られただけなら問題ないんだけど……」
ベヘモット達の放った光線に当たった一部の物が凍結したり、昇華したりし始めた。
「なるほどね、あの光線は、原子分解するだけじゃなく、原子の動きにも影響を与えられるんだ」
較が納得する中、良美が眉を寄せる。
「全く意味が解らない」
「詰り、あの光線は、原子状態を操作する働きがあるって事ね」
薫の言葉に小較が手を叩く。
「なるほど、それで冷却や高温化が起こってる訳か。かなり面倒だよね?」
較が頷く。
「まあね、力の種類が違うとなると同じ対処が出来ないし、周囲の被害も無視できないしね」
とっくの昔に天井などなく、施設は、もはや原型を留めていない。
『無駄な抵抗を止める事だな。お前らに勝ち目などない』
ベヘモットの言葉に較が笑みを浮かべる。
「残念、あちきは、諦めが悪いんだよ」
較は、そのままベヘモットの一体に近づく。
『同じ手が通じると思うな』
別の数体が横から光線を放つ。
『カーバンクルパラソル』
較は、光線を曲げて、向っていたベヘモットに命中させ、爆発させる。
『しまった!』
慌てて光線を止めるベヘモットの一体に接近した較の手が腹に当たる。
『ダイコクテン』
最初の一体と同じ様に内部から爆発するベヘモット。
「量産型が敗れる理由を一つ追加。同レベルの相手なら、その相手同士での有効攻撃が可能だから」
較が中央に陣取り、次々とベヘモットの攻撃を受け流していく。
「更に追加、パターン同様なら、攻撃も防御も容易になる」
『この様な奇策がいつまでも通じると思うな』
ベヘモットが一箇所にかたまり、力押しをしてきた。
「神様の眷属の悪い癖。最後には、力尽くのゴリ押し。でもね、こっちの世界の体は、そんなに丈夫じゃない」
較が回避のみに集中している間にベヘモット達は、その体を崩壊させ始めていた。
『ば、馬鹿な、な、何が起こったというの……』
曖昧になっていくベヘモットからのテレパシー。
較は、悠然と見下ろす。
「難しい話じゃない。元々、全力なんて出してなかった筈。意識的にセーブしてたのを、攻撃に集中して忘れてたでしょ?」
『し、しまっ……』
言葉の途中でベヘモットが不気味な液体に変化していた。
「状況がよく解らないんだけど?」
良美の言葉に薫が続ける。
「そうよ、あのガネーシャの体が何故崩壊したのかまるで理解できない」
「小較は、解った?」
較の問い掛けに小較が胸を張る。
「当たり前だよ。八刃の戦闘講座で習った。高位世界の存在がこちらに居るには、かなり無理がある為、力をセーブした状態でなければいけない。だから、故意的に攻撃を誘発させて限界点を突破して依り代を自壊させる戦術もあると」
較が頭を撫でながる。
「ちゃんと勉強してるね。偉いよ」
嬉しそうにする小較を尻目に較が言う。
「これで、ガネーシャの体も無くなった筈だからベヘモットも出てこない筈だよ」
「終わったのね。しかし損害が大き過ぎた。これでは、私の計画が……」
苦々しい顔をする薫を見て較が思い出す。
「そういえば、リヴァイアサンも作ってたよね? あれって完成度ってどのくらい?」
薫が面倒そうに応える。
「素体は、出来ている。後は、能力を付与していく段階よ」
「それって拙いかも」
較が顔を引きつらせる。
『先ほどは、失敗をした。この場での敗北は、認めよう。やはり体に慣れない内には、力を出し切れぬ。新たな依り代に慣れた時、その時こそ本当の勝負だ』
新たなテレパシーと同時に振動が起こった。
振動の方向を見ると巨大な海蛇の様な物が海に逃げていく。
「リヴァイアサン、どうして!」
困惑する薫に較が言う。
「やっぱり、バハムート形態って奴か」
「えーバハムートってFFに出てた様な大きな竜じゃないの!」
良美が本当に驚く中、較が頷く。
「あのゲームで原作のイメージを無視されるって事は、多いけど、バハムートは、顕著な例だね。元々は、巨大な魚って伝承だよ。どちらかというとリヴァイアサンに近いかな。さてこのまま逃がすわけには、行かないね」
「追撃戦ですね」
小較の言葉に較が頷く。
「移動手段を用意しないとね」
携帯を取り出す較であった。




