それは、平凡な日曜日
較の平和な日曜日
「お洗濯終了と」
較は、一週間分の洗濯物を干し終えると振り返る。
「買い物行くけどどうする?」
縁側でダラーとしていた良美が欠伸をしながら答える。
「めんどういから今日は、パス。何かトラブル起こったら呼んで」
「はいはい。小較、留守番をお願いね」
外出の準備をする較に小較が答える。
「はーい!」
較は、小さなウエストポーチだけつけて買い物に向う。
「待てー!」
「待たないよーだ!」
元気に鬼ごっこする子供達。
その一人が道路に飛び出した時、スピード違反の車が迫ってきた。
「スピード違反は、急ブレーキが間に合わなくなりますよ」
車を片手で持ち上げて較が忠告する。
「……以後気をつけます」
顔を真っ青にして冷や汗を垂れ流す運転手。
道路に戻された車は、アクセル全開で元来た道を暴走していく。
「だから、スピード違反は、駄目だっていってるのになー」
較は、呆れた顔をで言う。
「お姉ちゃん凄い!」
目を輝かせる子供の頭を軽くこつき較が言う。
「君も駄目だよ、次からは、もっと気をつけること」
「はーい」
元気に返事をする子供を残して較は、再び歩き出す。
「そうだ、お金を下ろしておかないと」
較が銀行に入ると後ろから覆面をした強盗犯が入ろうとした。
較は、振り返り微笑んだ。
強盗犯は、失禁し、泣き出す。
「お客様、どうしたましたか」
行員が覆面した怪しげな男達に慌てて駆け寄る。
「流石にこの状況で、強盗犯とは、思わないか。『ケットシードレス』」
解放して強盗犯を脅すのに使った気配を迷彩して、近くのATMでお金を下ろす較であった。
お金を下ろしてから商店街で食材の買出しをする較。
「ヤヤちゃん、この秋刀魚どうだい!」
「いいですね。三匹貰います」
「毎度」
魚屋のおじさんが魚を袋に入れようと視線を逸らす中、明らかに目付きが危ない男が懐から包丁を取り出そうとしていた。
較は、小さなため息と共に秋刀魚を掴むと一閃した。
「ヤヤちゃん、どうかしたのかい?」
「これもおいしそうなので追加で」
較が手にした秋刀魚を差し出す。
「はいはい。これもね」
魚屋のおじさんは、追加の秋刀魚も袋に入れて差し出す。
「また来てよね」
「はい」
笑顔で返事をして次の店に向う較の後ろでは、取り出した包丁の刃を探す男が居た。
暫くいった所で較が指を上に向けると回転してきた包丁の刃を挟むと路地裏に投げつけるて傍に居ても聞こえない小声で呟く。
「後始末、よろしく」
包丁の刃は、路地裏の影の中に沈んでいくのであった。
片手に買い物のビニール袋を下げながら歩く較に幼少の頃にお世話になった女性、黒林一美が近づいてきた。
「ヤヤちゃんもお買い物?」
「はい。今日は、秋刀魚が美味しそうでしたよ」
笑顔で答える較に難しい顔をする一美。
「秋刀魚は、確かに美味しいんだけどあの煙がね。煙が出ない奴があるけど、ああいうので焼くのは、邪道だとお父さんがいうのよ」
笑う較。
「剣造おじさんだったら言いますね。でも、一番食べるのも剣造おじさんですよね?」
「焼き魚が好物だからね」
苦笑する一美だったが、そんな一美を突け狙うストーカーの危ない視線があった。
「一美さん、あっちのドラックストアーでトイレットペーパーが安売りしてますよ!」
較の言葉に一美が素早く反応した。
「本当! 急がなくちゃ!」
早歩きを始める一美を追跡しようと出てくるストーカーに較がぶつかり、しりもちをつく。
「邪魔するな!」
怒鳴るストーカーだったが、足が動かなかった。
「何だ?」
必死に足を動かそうとするがその足は、ピクリとも動かない。
「どうなてるんだ?」
冷や汗を垂らす男の耳元で較が囁く。
「次に一美さんの周りに現れたら、一生、こうなると思っててね」
それだけを言い残して較は、一美の後を追う。
「ま、待て!」
全力でもがくがまるで動けない男がその束縛から逃れられたのは、数人の警察に警察署に運び込まれた後であった。
「重くない?」
一美が心配そうに声を掛けるが較は、中身が詰った数段積みビールケースを肩に乗せながら言う。
「一トン以下でしたら小指で持てますから重そうなふりをしてるだけですから大丈夫ですよ」
大きくため息を吐く一美。
「あのね、女の子がそれを平然と持ってる時点でその偽装は、失敗よ」
「そうですか?」
較が不思議そうに平然と歩き出し、一美の家の道場の宴会用のビールを運ぶのであった。
「たのもー!」
ビールの片づけを手伝う較の耳におっさんの怒鳴り声が聞こえてくる。
「はーい」
一美が玄関に向うとそこには、ごつい男達が日本刀を持って威圧し来る。
「黒林道場に行ったが誰も居なかったのでこっちに来た。先日の剣道大会で優勝した森田健一を出せ! 我が流派こそ最強だと言う事を証明しに来た!」
「えーと、森田さんは、今、父と大会で応援してくれた人達へのお礼周りにいってまして……」
困った顔をする一美にごつい男達が詰め寄る。
「我等に恐れをなして逃げたか!」
「大会ルールで勝てないから、自分達の都合の良いルールで勝負に来たヘタレが馬鹿面で馬鹿を言ってないで、帰りなよ」
そう言うのは、較。
「なんだと! 我等を愚弄する子供でも許さんぞ!」
日本刀を抜くごつい男達。
「大変な事になるから止めて!」
一美が制止したが間に合わない。
『オーディーン』
較の手刀の一閃が日本刀を切り裂いた。
「まだやる?」
「おぼえてろー!」
逃走するごつい男達。
「きっちり後始末しろって意味かな?」
苦笑する較の頭を一美がコツリと叩く。
「止めたのに。ヤヤちゃんは、この後始末だよ」
床に刺さった刀身を指摘されて較が頭をさげる。
「ごめんなさい。えーと床の修理は、今日中に手配します」
切った刀身の後始末も終えて較は、黒林家を後にする頃には、夕方に差し迫っていた。
子供達が家路に急ぐ中、一人の幼女にワゴンが近づき、ドアが開き穢れた欲望でその目を濁した変態の手が伸びる。
『ヘルコンドル』
較が放ったカマイタチが幼女に向って伸ばされた腕を斬りおとす。
幼女が気付かず駆けていった後、大量の血を吹き出す変態の悲鳴があがる。
家に到着した較。
「お帰りなさい、洗濯物は、取り込んでたたんで置いたよ」
目を輝かせる小較の頭を撫でる較。
「ありがとう。ご褒美に秋刀魚を一匹追加してあげる」
「わーい、秋刀魚って美味しいよね」
嬉しそうにする小較であった。
食事が終わり、較が洗い物する中、良美は、ダラダラとローカルテレビを観ていた。
『今日も色んな事件がありましたね』
『はい。銀行強盗を計画していた男達がいきなり情緒不安定になって警察に保護されたのをかわきりに、警察署の壁に車を激突させたスピード違反の男が意味不明な事を口にしたり、そこには、ストーカーの常習犯が連行されてたり、折れた包丁をもって商店街を這いずっていた不審者がいたり、日本刀の不法所持者の大群が補導され、とどめに連続少女強姦の容疑者達が病院に駆け込み、逮捕され警察病院に直行になっていました』
『しかし、竜夢区には、そういった意味不明な事件が多い気がしますね』
『そうですね。しかしその反面、本格的に被害が出る事件も少ないんですよね』
『これが神様の御加護だとしたら、随分と愉快な神様ですよね?』
『確かにさぞ面白い神様なんでしょうね』
良美が大きく欠伸をする。
「今週の日曜日は、平和な日曜日だったね」
「そうだね。来週もこうだと助かるな」
洗い物を終えて較が食後のお茶を持ってきてのんびりするのであった。
「平和だって?」
白風家の傍で待機していた谷走左鏡の言葉に交代要員で来た、その双子の姉、右鏡が言う。
「平和だろ。被害総額が一千万もいってないだから」
「そうだね、一千万も行ってないもんね」
左鏡も納得するのであった。




