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ホラー映画

閉ざされた空間での寄生生物の恐怖

「一番の問題は、どれだけの数の寄生型の妖怪が紛れ込んでいるか解らないことなんだよ」

 較の言葉にエアーナが手を上げる。

「問題のコンテナを調べても解らないんですか?」

 肩をすくめる較。

「問題のコンテナは、十あって、それぞれに出鱈目に数体ずつ封印されている様で、数が定かじゃないんだよ」

「それでも大体の数は、解らないのか?」

 風太の質問に較が悩みながら答える。

「解放されていたコンテナは、三つ。一つのコンテナに四、五体だから十五ぐらいが目安としか答えられない」

「何時もみたいに気を飛ばして探るって訳には、いかないの?」

 良美の提案に較は、手を横に振る。

「流石に寄生型相手じゃ、潜伏状態で発見するのは、専用の術や技を使わないと。それだとチェックしている間に別の人間に寄生しての繰り返しでイタチゴッコになる可能性が高いんだよ」

「本気で面倒になったな。いっそのこと何のリアクションを取らないって選択肢も無いか?」

 風太の提案にエアーナが驚く。

「そんな、ほっておくって事!」

 風太が苦笑する。

「違う。向こうの空港に着いた所で、飛行機から降りるところでチェックを行えば良いだろう」

「テロリストが乗って無かったらね。間違いなく、警察とかが入ってきて、こっちのチェックする前にテロリスト達を連れ出す。その際に警官に寄生されたらもう手遅れだよ」

 較の指摘に風太が苦虫を噛んだ顔をする。

「そこら辺を含めて、ハイジャックに便乗したって感じだな」

「そう考えるのが妥当だね」

 較も頷く。

「結局どうするの?」

 良美の問い掛けに、眉を顰めあう較と風太。

 そんな中、スッチーがやってくる。

「あのーまだ何か問題があるのでしょうか?」

 恐る恐るって感じの問い掛けにエアーナが慌ててフォローする。

「もうハイジャックの方は、何の問題も無く解決してますんで、気にしないでください」

「ハイジャック以外に問題があるって事ですか?」

 スッチーの鋭い指摘に、視線を逸らすエアーナ。

「今度は、何が起こっているんですか?」

 涙目で聞いてくるスッチーの背後から青褪めた男がトイレに駆け込もうとした所を較に腕をつかまれる。

「放してくれ! 本気で限界なんだ!」

「楽にしてあげる。『ユニコーンウェーブ』」

 較が空いてた手を男の腹に押し当て、特殊な気を撃ち放つ。

 男の口から大量のゲル状の物体が吐き出される。

「お客様大丈夫ですか!」

 慌ててスッチーが近寄ろうとするが風太が押し留める。

「まだ危険だ。少し待て」

「しかし!」

 焦燥するスッチーの目の前でゲル状の物体が盛り上がっていく。

「スライムみたいだね」

 良美の感想に較が頷く。

「近い種類だと思う。人体の水分と同化する為、今みたいに清浄な気で全身に巡らして押し出してやらないとね」

 スライムもどきは、スッチーに逃げ込もうとするが、較の動きの方が早かった。

『フェニックスレフトウイング』

 較の手から放たれた炎は、スライムもどきを焼き尽くす。

「今のは、何ですか?」

 硬直していたスッチーが顔中に冷や汗を垂らしながらも無表情で問い掛けるとエアーナが同情するように答える。

「これが新しい問題で、今みたいな寄生生物が十匹以上機内に紛れ込んでいる可能性があるんです」

「大変じゃないですか!」

 大声を出すスッチーに制止していた風太が言う。

「それでどうしようか相談して居たんだ」

「ここは、さっきの技を大出力で打ち出して乗客全員を同時にチェックすれば?」

 良美の提案に較が首を横に振る。

「そこまで出力を上げると老人か子供が耐えられなくて死ぬ可能性があるよ」

「結局、今みたいに低出力で、一人ずつチェックするしか無いって訳か」

 風太の言葉に較が疲れた顔をする。

「面倒だけどね。そして、それをやる場合、チェック済みの人と、そうじゃない人を隔離しないといけないんだけどどうしよう?」

 そこにスッチーが割って入ってくる。

「そういう事でしたら、私達が協力します」



『乗客の皆様、ただいま当機内で伝染病が発見されました。一人ずつチェックを行いますので客室乗務員の指示に従って行動して下さい』

 機内アナウンスを聞いて良美が首を傾げる。

「伝染病ってどういう事?」

 風太が苦笑する。

「寄生生物なんて言えないだろう。言い訳に使ったが、今回の場合、確かにその対応が一番相応しいだろうな」

 肩をコキコキ鳴らしながら較が言う。

「これから乗客全員のチェックをするこっちの身にもなって欲しいな」

「ご苦労様。頑張って」

 おきらくに言う良美。

「こいつらのチェックは、終ってるんだな?」

 風太がチェック済みの人間の移動先の初期位置に押し込められたハイジャック犯達を見る。

「めんどいから強い気で一気にチェックしたから問題ない」

 較が軽く答えるとエアーナが頬をかく。

「何人か、失禁しているんですけどそのままで良いんですか?」

「大の大人だ。そのくらいじゃ死なない。着替えさせるのも危険だから警察に渡すまでそのままにしておけ」

 風太があっさり斬り捨てる。

「それにしても案の定、テロリストの奴等にもスライムもどきが寄生していた。調べてみたら、動きを封じられて暫くしたら他人に移る様にセッティングされていたから、間違いなく警察関係者を狙っているよ」

 較の言葉に風太が舌打する。

「お前の予想通り、テロリストは、完全に利用されているな」

 較が難しそうな顔をする。

「寄生妖怪をあれだけ集めるって簡単じゃない。その上、そいつ等は、テロリストの内情にも詳しい事になる。ここから推論される答えってあんまり愉快じゃないよ」

「どんな推論がされるって事ですか?」

 緊張した面持ちで聞き返すエアーナに風太が答える。

「テロリスト達の中に寄生妖怪に寄生された奴が居て、テロ行為そのものがそいつ等の思惑に沿って行われているって可能性があるって事だ」

「つまり、ミサラ解放軍には、本人達も知らない黒幕って奴が居るって事だよね」

「その可能性が高いって事」

 較が嫌そうにそう締めくくる中、チェックをする為に乗客がやってくる。



「後、少しですね」

 エアーナの言葉に珍しく疲れた顔をした較が言う。

「そうであって欲しいよ。流石に限界に近いからね」

「ヤヤが弱音を吐くなんて珍しいね」

 良美が不思議そうに見ると風太が後ろを指差して言う。

「お前な、あれだけの人数を気を使ってチェックして疲れないと思ったのか?」

「ヤヤは、もっと多くの敵を気で吹っ飛ばして平気な顔をしているよ」

 良美の答えに較は、背伸びをしながら答える。

「今回は、そういう乱暴な気の使い方じゃないんだよ。弱すぎても拙いけど、強すぎたら人体に影響が出る。微妙なラインの調整がかなりきついの」

「次は、この人です」

 スッチーに連れられて来た老人は、顔色も悪い。

「あれって寄生されてるっぽくない?」

 良美の言葉に風太が難しい顔をする。

「あの年齢だ、純粋に体調崩している可能性もある。更に気の調整に神経を使うことになるぞ」

 較は、大きく深呼吸をしてから気を放つと、老人は、軽く痙攣する。

「大丈夫ですか?」

 スッチーが慌てて介助する。

「……病気じゃないんで、奥で休ませて下さい」

 較の答えにスッチーは、老人を奥に連れて行く。

「失敗した?」

 良美の言葉に較が罪悪感を感じている顔で答える。

「うん、居るかもって強くし過ぎた」

「見逃すわけ行かないんだから仕方ない。ここは、気持ちを切り替えろよ。ただし、下手な躊躇は、するなよ」

 風太の忠告に較が頷く。

「解ってる。ここで見逃したらあのお爺さん申し訳ないから」

 そしてスッチーが案内してきた次の乗客が体を硬直させた。

「どうなさいました!」

 スッチーが慌てる中、乗客の口からスライムもどきが吐き出される。

 驚くスッチーに襲い掛かろうとするスライムだったが、弾かれる。

「スッチーには、護符を渡してある。逃がさないぞ!」

 風太は、硬化剤を投げつけてスライムもどきを固める。

 腰を抜かしているスッチーに手を貸す風太に良美が訊ねる。

「ところで、どうしてそんなもんを持っているの?」

 ジト目になる風太。

「お前等と行動していると何が起こるか解らないから、他にも色々と用意してある」

 倒れた女性に用心の為、気を放ってから較がスライムに止めをさそうと近づいた時、残っていた乗客の中から次々とスライムもどきが現れて合体していく。

「おーい、十五くらいって言ってなかったか?」

 風太のクレームに較が言い返す。

「残ってたコンテナからの推測だよ! 空いていたコンテナには、ギュウギュウに押し込んでたんでしょ!」

 較は、怒鳴りながら両手に炎を生み出す。

『フェニックスウイング』

 両手から放たれた炎は、合体スライムもどきを焼くが、スライムもどきは、その体積を増していく。

「どうして焼かれて増えるんですか?」

「あちきの炎に籠めた気を使って増殖しているんだよ」

 較が舌打ちをする。

「炎が通じないって事か?」

 風太の問い掛けに較が首を横に振る。

「火力が弱すぎるだけで、もっと大火力で一気に焼ききれば倒せるよ」

「それだったら派手にやれば」

 のんきに言う良美に風太が怒鳴る。

「馬鹿が、飛行機の中でそんな大火力を使えるわけないだろうが! 冷却系で動きを止められないか!」

『シヴァダンス!』

 較が舞う様にスライムもどきの周りを巡り、冷気を放つが、凍りつくより早く増殖して逃れていく。

「もう、この程度の威力じゃ増殖率の方が上回る!」

 較が愚痴ると風太がスッチーを離れた場所に移した後に言う。

「殲滅は、諦めて結界で押しとめる方針でいった方が確実だな」

 較が頷き、髪を抜くと投げ放つ。

『白き風、その流れは、全ての魔を封じん。白風封陣』

 較の髪が描く陣がスライムもどき達の動きを封じた。

「とりあえずこれで……」

 較の言葉の途中で、のこった乗客の中の一人が結界に近づいていく。

「危険ですから近づいちゃ駄目です!」

 スッチーが止めに入るが、その乗客は、無視して陣を形成していた較の髪に触れる。

 籠められた気に火花が散り、手が焼けていくのを無視してその乗客は、髪を引き抜いた。

 較は、手印を刻みながら叫ぶ。

「その人も寄生されている、あちきは、封印を維持するので手を放せないで、どうにかして!」

「了解!」

 良美が次の髪に近づこうとする乗客に跳び蹴りをかます。

「大人しくしろ!」

 抑えこむ良美だったが、その乗客の口からスライムもどきが吐き出されて、逃げていく。

「そっち逃げたよ!」

 良美が怒鳴ると風太がフォローに入る。

「解ってる!」

 硬化剤を投げつけてその動きを封じる。

 較が術を完成させて、抜けた髪も刺しなおして大きくため息を吐く。

「とりあえず、残りの人もチェックしてスライムもどきも終わりだね」

 とんでも展開に周りの人間が言葉も無くしている中、飛行機が衝撃と共に揺れた。

「今度は、何?」

 エアーナが涙目で叫ぶ中、風太が窓の外に見える物に頭を抱える。

「今度は、戦闘機かよ」

「あらあら、もう気付かれてしまったのね」

 そういって残った乗客の中の一人が立ち上がるのであった。

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