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淡々と進む自爆装置のカウントダウン

ホワイトファングをどう撃つか? それが問題です

「それでリメルを助かるのか?」(英語)

 カックスの問い掛けにようやく見つけた刻印を見ながら較は、難しい顔をする。

「物の性質上、一つでも残したら駄目なんだけど、こんな微弱な魔力じゃ、全部見つけるのは、殆ど不可能」(英語)

「どうにかならないのか!」(英語)

 詰め寄るカックスに較が空を指差す。

「あちきがどうしてここの人達の憎悪を受けているか覚えている?」(英語)

「確か、浮遊島を消失させたんだよな?」(英語)

 カックスの答えに較が頷く。

「そう、詰り、その力でこの貧民街を消失させれば解決なんだけど、さすがに皆殺しは、不味いから先に住人を逃がさないいけないの」(英語)

「ここの連中の大半が生きていても死んでるような奴らだ、死んでもかまわないよ」(英語)

 カックスが淡々と言うと較が苦笑する。

「それでも、あちきは、殺さないつもり。だって、それで助けられた相手、あちきは、ヨシ、貴方は、リメルちゃんがその人達を犠牲になったなんて思って欲しくないから。それとも貴方は、リメルちゃんにそんな重石を背負わせても良いの?」(英語)

 カックスが弱々しく首を横に振るが続ける。

「それでしかリメルを助けられないんだったら……」(英語)

 歯切れの悪い言葉に較が笑みで答える。

「そんわ訳ないでしょうが、どうにかしてここの連中を追い出してそれからやればいいだけだよ」(英語)

「そんな事が出来るのか?」(英語)

 カックスの当然の疑問に較がレザーから貰った封筒を取り出す。

「秘策は、この中にあるんだよ」(英語)

 そして較は、ミートが寄越してきた秘策を実行するのであった。



『現在、この周囲には、レベル4のバイオハザードが発生しています。全住人は、即時避難を行ってください』(英語)

 米軍の駐屯軍が主体になった全住民避難が開始された。

 その様子を見ていたカックスが呟く。

「まさか、これって姉ちゃんがやったのか?」(英語)

 較が頷く。

「まあね。ミートさんがアメリカからレベル4の細菌兵器が盗まれたって情報をくれたから、それをここらでばら撒いたって宣言した」(英語)

 少し考えてからカックスが言う。

「そんな嘘がばれたら大変な事になるんじゃないか?」(英語)

 較が笑顔で答える。

「大丈夫、もう現物は、確保してあるから、事が終わった後、被害が出ない様に本当にばら撒くから」(英語)

「もっとヤバイだろうが!」(英語)

 カックスの当然の突っ込みに較が遠い目をする。

「世の中には、手段を選べない時があるんだよ」(英語)

 カックスが沈痛な面持ちで呟く。

「リメルには、絶対に言えねえ」(英語)

「ヨシは、そこ等辺は、気にしないから大丈夫だね」

 飄々とした態度の較に恨みを込めた視線を送るカックスであった。

 避難が完了した所で、較が貧民街と白スーツが指定してきたポイントに向けて右手を突き出す。

『ホワイトファング』

 白い光が貧民街を消失させるのであった。



「……カックス?」(英語)

 八刃の研究所で目を覚ますリメル。

「リメル!」(英語)

 力の限り抱きしめるカックス。

「あたし、お父さんの命令で……」(英語)

 戸惑うリメルに較が告げる。

「気にしないで良いよ。ただし、残念だけど貴方のお父さんは、もう……」(英語)

 言葉を濁す較にリメルは、察する。

「お父さんが居なくなったらあたしは……」(英語)

「俺が居る。俺がリメルを養う!」(英語)

 カックスの宣言を小較に訳してもらった良美が微笑する。

「まだ毛も生えてないガキが言う言う」

 そんな二人を残して較達は、部屋を出る。

「それで、あのこのお父さんは、どうするの?」

 小較の問い掛けに較が少し悩む。

「正直、どんな目にあわせようかと考えている最中。取り敢えず、あの二人の当座の生活費として内臓の二、三個を闇業者に売るつもりだけど」

「生活費くらいヤヤが出せば良いんじゃない?」

 良美の言葉に較が肩をすくめる。

「あちきとしては、それでも全く問題ないけどそういうのは、本人達の為にならないからね。売ったお金を遺産って事で渡そうかと考えているの」

「謂れの無いお金って不幸を呼ぶっていうもんね」

 小較が納得するなか良美が手を叩く。

「それだったら、ここの人体実験の試験体をやらせれば?」

「グッドアイデア! それだったら、定期収入になるね!」

 較も乗って、良美の思いつき通りにカイルは、人体実験のモルモットとしての一生をおくる事になるのであった。



「細菌兵器なんて物騒な物が出てきた時は、びっくりしましたが、目的は、達成しました。これでアメリカを始めとする大国からこの核ミサイルの存在を抹消できましたよ」(新現地語)

 白いスーツの男が目の前に並ぶ、世界を火の海にする為の核ミサイルを愉しげに眺める。

「全ては、災厄の娘、ホワイトハンドオブフィニッシュですら掌の上を躍らせる総統のお力です」(新現地語)

 迎合する配下の者の言葉に白いスーツの男、問題のテロ組織の影の総統、ロメスが高笑いをあげる。

「それにしてもこの部屋は、暑くないか?」(新現地語)

 ロメスの言葉に部下が慌てる。

「すいません。しかし、クーラーの設定は、弄っていない筈ですが?」(新現地語)

「ちょっとした熱源があるからじゃない?」

 いきなりの少女の声に視線が集まる。

「また会ったね?」

 較の笑みにロメスが驚愕する。

「どうしてここが?」(新現地語)

 較が細菌兵器の事を書かれていた便箋が入っていた封筒の糊を接がして開くとそこには、ロメスのテロ組織の総統である事が書かれていた。

「国連の秘密工作員との二足草鞋なんてしてくれちゃって、国連の裏の意向を利用した暗躍には、随分と面倒な事をやらされたよね」

 較は、静かに語ると後ろから良美も現れる。

「それにしても、そんな二足草鞋が良く成立してたね」

「簡単だよ、組織内の対抗勢力を国連に売って、ポイント稼ぐ、今回のこの核ミサイルも高い実績として売ったんだよ。国連の連中もまさか偽情報であちきを動かしてるなんて思わなかったでしょうね」

 較が問題の核ミサイルを見る中、唾を飲み込むロメス。

「自分を利用した私を始末に来たのか?」

 較が微笑する。

「そんな事しても意味無いからしないよ。ヨシがどうしても貴方の顔を見たいって言ったから来ただけ」

 良美が頷く。

「ヤヤを利用しようとした馬鹿の顔を見たかったけど、やっぱり馬鹿の顔を見ても面白くもないね。帰ろうか?」

「了解。それじゃ、もう二度と会うこと無いとおもうけど、精々長生きしてね」

 較は、手を振って良美共々その部屋から出て行く。

 安堵の息を吐くロメス達だったが、較が振り返った。

「そうそう、核ミサイルに搭載されたウランだけど、この基地のあちこちに移動させておいたから早く処理しないと放射能で死人が出るかもよ」

「なんだって!」(新現地語)

 叫ぶロメスを無視して今度こそ去っていく較と良美。

「今すぐ、調べろ!」(新現地語)

 ロメスの怒声に押し出される様に部下達が動き出す。

 その様子を見ながらネクタイを緩める。

「それにしても熱い!」(新現地語)

 苛立つロメスの言葉に部下の一人がある事に気付いた。

「そういえば、ウランは、高熱を発生させると聞いた事がありますが?」(新現地語)

 背中に悪寒を走らせるロメス。

「放射線測定器で調査を……」(新現地語)

 言い終わる前に放射線測定器から危険信号が鳴る。

「早く、ウランを回収するんだ。私は、この基地の安全が確認されるまで国連の方に居る」(新現地語)

 すぐさま逃げ出すロメスだったが、施設を出た直後に現地警察の車によって止められる。

「こんな時に」(新現地語)

 苛立つロメスだったが、パトカーから降りてきた女性を見て驚く。

「随分と綺麗な刑事だな」(新現地語)

 その女性、レザーに令状を見せられてもロメスが淡々と告げる。

「テロ組織の施設に居たのも全て工作員としての仕事の一環です」(英語)

 すると新たな車が来てレザーの夫、ミートが現れて新たな令状を取り出す。

「お前が出て来た施設に騒動娘が置き忘れた米軍から奪取したウランの確保をさせて貰う。これは、国連からの承認もちゃんととってある」(英語)

「なんだと!」(英語)

 声を荒げるロメスを数人の警官が確保する中、調査が始まる。

「私にこんな真似をしてただで済むと思うのか!」(英語)

 レザーがあっさり頷く。

「ここの施設から出て来た時点で貴方がテロ組織の関係者とされました。その場合、貴方は、ウエイトアブアースの暗殺に関わっていた居た事になります。不文律を知っていますね?」(英語)

 驚愕するロメスにミートが引導を渡す。

「浮遊島の失敗から今回の作戦を思いついたんだろうが、あの娘を利用した時点で既に破綻をきたしていたんだよ」(英語)

 崩れ落ちるロメスであった。



 帰りの飛行機、いびきをかいている良美の隣で較が今回の報告書を見ているとレザーが現れた。

「隣に座っても良いかしら?」

 較が頷くとレザーが尋ねる。

「何故、あいつがテロ組織の関係者としりながらもミサイル基地を破壊したの? 貴方の目的としては、貧民街の破壊だけの筈だったでしょ?」

 較が微笑む。

「あの時点では、ロメスは、全てが工作員としての仕事だって誤魔化そうとしたかもしれないから」

「用心の為だけにミサイル基地まで破壊したの?」

 流石に驚くレザーに較が少し考えてから答える。

「それもあるけど、折角の情報をくれたミートさんとレザーさんがあいつを追い詰める手助けになるかなって思って」

 大きなため息を吐くレザー。

「ミートの言うとおり、貴女が関わると何でも大事になるわね」

「そういう運命なんだよ」

 較が悟りきった顔で言うとレザーが席を立って、ビジネスクラスに戻ってミートと合流する。

「貴方の予想とおりだったわ」

 ミートが苦笑する。

「余計な事をしてくれないのが一番の手助けだっていい加減解って欲しいものだな」

「そうね。でも、そんなあの子達の事を嫌いじゃないでしょ?」

 レザーの突っ込みにミートが肩をすくめる。

「自分が後始末をさせられなかったらな」

 こうして較がまた一つ、地球上にホワイトファングの傷跡を残すのであった。



「反省って言葉を知ってる?」

「ごめんなさい! 次から絶対に気をつけますから!」

 冷たい希代子の言葉にひらすら頭を下げて謝罪する較であった。

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