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魔人スカーレットは過労でしんどい   作者: 鳴尾リョウ


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30/33

第30話 魔人スカーレットはハガキ職人

 ラジオで読まれたい! 来るか? 来ないか?




『どうもみなさんこんばんは! 今日はいかがお過ごしだったでしょうか!』


 深夜、ベッドの上で音を小さくしてラジオを聴くスカーレット。始まった。今日こそは……。


『いやー、最近寒いですよね。今日も漫才の舞台があったんですけど、劇場の中が冷えっ冷えで……。って、誰のネタが寒いねん!』


 小気味よいオープニングトークにくすっと笑みがこぼれる。


 お笑いコンビ「どんぶらこ」のツッコミ、「モモタロー」は人気若手芸人だ。芸歴は浅いが、巧みな話術やよく練られたネタでファンも多い。スカーレットもたまたまテレビのネタ番組で見かけファンになり、彼のラジオ番組を聞くようになった。


 しばらくオープニングトークが続き、お目当ての時間がやってきた。


『それじゃあみなさんお待ちかね、お便りのコーナー!』


 スカーレットはドキドキしながら、ラジオの音量を少し上げる。


 ラジオは双方向のメディアだ。ラジオパーソナリティとリスナー。お互いが一つの番組を作り上げる。それを象徴するのがお便りのコーナーだ。お題を元にリスナーがハガキに会心の作品を書き込み、パーソナリティに読んでもらう。それこそがリスナー最大の喜びなのだ。


「今日こそは読まれるかしら? 十枚も書いたから、きっと大丈夫よね?」


 彼女は言葉と裏腹に、不安でいっぱいだった。なぜなら、この番組にはハガキ職人と呼ばれる猛者たちがゴロゴロいるからだ。


『今日のお題は「私の身近な面白い人」。さっそく読んでいきますか! 一通目、ラジオネーム「マロにメロメロ」さん!』


 マロメロさん! 常連のリスナーさんだ! 彼(彼女?)のハガキはよく採用されている。スカーレットは名前が呼ばれずがっかりしながらも、どんな内容か集中して聞いた。


『私の友人の話です。先日、彼女の家に愛犬を連れて行ったのですが、私は家の用事でいったん帰宅。彼女に散歩をお願いし戻ってきたら、河川敷で愛犬と共に寝転がっていました。あれはいったいなんだったのでしょう……』


 マロメロさんの話には、よく友人が出てくる。きっと仲良しなのだろう。いつもほっこりとした内容で、スカーレットも楽しみにしている。


『出た、マロメロさんのお友達! うーん、何で寝転がっていたのかなあ。マロメロさん、今度友達に聞いといてください! 時間もないし、ドンドン行くよ! 二通目、初めての方ですね。ラジオネーム「金の稲妻」さん!』


 またダメだった。毎回ハガキを読まれるのは三人だ。残り一人。まだチャンスはある。


『はじめまして、金の稲妻です。お話ししたいのは私の友人の話です。ショッピングセンターに買い物に行った際、私は迷子を見つけ迷子センターに連れて行きました。そこでたまたま友人の世話をしている方に会いました。どうしてこんなところにと尋ねると、友人、仮にSとしますが、Sが迷子になったというのです。Sはいい大人なのですが……。そして後ほどやってきたSは言いました。「迷子になっちゃダメじゃない!」と。私はそう言ってのけるSにあきれてしまいました』


 この人、初めてなのに話が面白い。それにしてもこのSさん、だいぶ変わった人だなあ。あたしの周りにいたら少し困っちゃうかも……。


『なるほど。Sさん、憎めない人ですね! ちょっと会ってみたいかも……。それでは、最後のお便りの前にお知らせです』


 広告が流れ、スカーレットは息をついた。やはり、人気番組だけあってハガキ職人のレベルが高い。自分も頭をひねり、面白い話を書いたつもりだったが採用は難しいかもしれない。


 なんだかのどが渇いたな。彼女はキッチンに水を飲みに行くことにした。広告が終わる前に急いで向かうと、じいやがいた。


「あれ、じいやも水?」


「はい、少し緊張でのどが渇いてしまって……」


「緊張?」


 彼はしまったという顔をしたが、ごにょごにょと何かを言うと慌てて自分の部屋に戻っていった。


「……なんだあれ? あっ、急がなくちゃ!」


 急いで水を飲み、スカーレットは部屋に戻った。すると、ちょうど広告が終わり、お便りが読まれるところだった。


『本日最後のお便りです。ラジオネーム「自室の執事」さん!』


「だぁー、今日もダメだったかぁ!」


 最後のラジオネームが呼ばれると、彼女は肩を落とした。自分の「まだ水曜日」という名前ではなかったからだ。


「また自室さんかあ。ホントこの人、いつも読まれるわね」


 自室の執事。この番組が始まった当初からいる古参リスナー。毎回お便りが採用され、番組が人気になったのもこの人のおかげと言われている。


『モモタローさん、こんにちは。深夜のバラエティ、ややスベりしてましたねえ……って、うるさいわ!』


 出た! 自室さんのイジリ! パーソナリティの出ている番組を見ているというアピールかつ、ツッコミを入れさせる技術! ……この人、やはり侮れない。


『……コホン。私の身近の面白い人。それはもちろん「お嬢様」です。この間はとんでもないことがありました。「お嬢様」がガチャガチャにはまっていたのですが、どうしても自分の目当てのものが出ないとのこと。ガチャを回しては外れ、回しては外れ。しまいには悪の巣窟だと言って、製作会社にのりこんでいきました。執事、本当に困っちゃいます』


 話が終わると、スカーレットは黙り込んだ。この話、まさか……。


「やっぱり、あたしと同じ考えの人もいたんだ!」


 深夜にも関わらず、声を出して笑ってしまう。やっぱり自室さんの話は面白い! もし「お嬢様」に会えたら仲良くなれそうだ!


 番組時間も終了間際になり、パーソナリティが締めにかかる。


『それではお時間です! 「モモタローの鬼の居ぬ間に洗濯」来週もお楽しみに!』


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