第1章第2話 死神ちゃん、学校へ行く。
朝。茜の体を使う死神ちゃんは、いつも通り茜の学校へ向かっていた。
廊下に入ると、すぐに視線が刺さる。
――靴箱。
開けると、ぐしゃぐしゃに丸められたプリントとゴミ。
死神ちゃん(小声)「ふ〜ん。雑な仕事ですねぇ」
茜(心の声)『……やめてよ……もう……』
教室の机。
机の中には砂。表面にはマジックで黒い落書き。
死神ちゃん(淡々)「芸術点は……低いですね」
茜(心)『どうして無視できるの……』
死神ちゃん(心へ直接)「茜ちゃんが“処理して”って頼んだらやるけど?」
茜(心)『……違う。そういうんじゃない……』
死神ちゃんは肩をすくめ、そのまま席に座った。
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◆ 放課後
校門を出た瞬間、3人組のいじめっ子が道を塞いだ。
リーダー格の美里がニヤッと笑う。
美里「アンタ、今日も来たんだ。よく学校来れるね〜?」
茜(心)『……やめて……やめてよ……』
死神ちゃん(外側の茜として)「で?」
美里「“で?”じゃねぇよ! 無視してんじゃねーぞ!」
美里が胸ぐらを掴みに来た、その瞬間。
死神ちゃんは茜の腕をすっと上げ、
美里の手首を軽く捻った。
美里「いっ……っっっ!? イタタタタ!! ちょ、やめっ……!!」
死神ちゃん「はい、いち抜け〜♡」
美里の体をひょいっと軽く押す。
すると美里は後ろにいた2人――奈央と柚希の胸へ突っ込むように倒れ込み、
2人はバランスを崩しながらも何とか受け止めた。
奈央「ちょっ!? 美里っ!? 重っ……!」
美里「痛い痛い痛い!! 手首が!!」
柚希「受け止めて〜じゃないよ!!」
死神ちゃんはポケットに手を入れ、軽くお辞儀する。
死神ちゃん「バ〜イ☆ 今日は“ここまで”ね。もう来ると痛いよ〜♡」
3人は言い返す余裕もなく、バタバタと逃げていった。
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◆ 帰り道
少し歩いてから、茜の心の声が震える。
茜(心)『……なんで、あんな……こと……』
死神ちゃん(心へ)「あれくらい、レンタル品の保護ですよ〜」
茜(心)『レンタル品……って、私の……体……?』
死神ちゃん「そうそう。壊されたら返却時に私が怒られるので♡」
茜(心)『……怒られる……って誰に……』
死神ちゃん「企業秘密〜♡」
茜は黙ったままだったが、
胸の奥に、ほんの少しだけ“安心”に似た不思議な感情が残った。




