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― 第1章 第1話:お試し契約 ―

 夜の新宿。

 高層ビルの屋上に立つ少女――**あかね**は、街の光をじっと見下ろしていた。


 足元には吹き込む風。

 制服のスカートが揺れ、指先は小さく震えている。


茜「……もういいよ……疲れた……」


 踏み出すつもりで前に体重をかけた――その瞬間。


???「ヘイ彼女ーーー‼︎ 買取はいかがぁっ!?」


 甲高い元気な声が、世界を乱暴に割って入った。


 茜が反射的に振り返ると、空中を 自転車で走ってくる謎の少女 がいた。


 黒髪に緑のメッシュ、ポップなジャケット。

 片手にぐるぐるキャンディー。

 背中にはでかでかと 「死神」 の文字。


茜「……は?」


死神ちゃん「やっほー! 初めまして! 私、死神ちゃんでーす♡」


 自転車のブレーキ音を残しながら、茜のすぐそばにふわっと着地する。


死神ちゃん「ねぇ、いま死ぬつもりだったでしょ?」


茜「…………誰? なんなの?」


死神ちゃん「死を管理する者、略して死神! 神なので細かい説明は割愛します!」


 明るい声とは裏腹に、言っている内容は重い。


 茜は目を細める。


茜「……放っておいてよ」


死神ちゃん「いやいやいや〜、放っておけないよ? だって“死ぬなら売ってほしい”んだもん!」


茜「売る?」


死神ちゃん「はいッ! あなたの人生、買い取ります!」


 ぐるぐるキャンディーをクルクル回しながら、死神ちゃんは満面の笑み。


死神ちゃん「死ぬつもりなら、その“人生残り全部”に価値があるんだよ〜。

 生きられなかった誰かがあなたの体で人生やり直したいかもしれないし?」


茜「……意味が分からない」


死神ちゃん「簡単に言うと、あなたは魂だけあの世へ〜。

 体は私のところで再利用されまーす♡」


 茜は息を飲む。


茜「そんな……勝手に……」


死神ちゃん「もちろん勝手にはしないよ?

 あなたが“売る”って言わないと契約は成立しません!」


 そう言いながら、死神ちゃんは茜と目を合わせる。


死神ちゃん「でもさ。

 死ぬつもりだったんなら、一回……試してみる?」


茜「試す?」


死神ちゃん「うん! 一週間だけのお試し契約!

 あなたの体をその間だけ私が借りて、“どんな感じか”見せてあげる。

 あなたは後ろの席でぼーっと眺めてるだけ!」


茜「そんなの……本当にできるの?」


死神ちゃん「できちゃうのが死神クオリティ〜♡」


 死神ちゃんはキャンディーをカチッと鳴らしながらにやり。


死神ちゃん「いきなり人生売れって言われても困るでしょ?

 だから“お試し”を用意してあげたの。優しさ〜♡」


 茜は唇をかみ、視線を落とす。


 死にたい気持ちは、たしかにあった。

 でも――“一度様子を見る”という選択肢が差し込んでくる。


死神ちゃん「茜ちゃん。

 死ぬ前に、ちょっとだけ……違う道を見てみない?」


 茜は、ゆっくりと顔を上げた。


茜「……じゃあ……」


 死神ちゃんの目が輝く。


茜「……一週間だけ。お試し……してみる」


死神ちゃん「はいッ!! 仮契約入りましたぁぁぁ♡」


 死神ちゃんは両手を広げ、軽く茜の額に触れる。


死神ちゃん「じゃ、一週間。あなたの人生、ちょっと借りますね♡」


 茜の意識が、ふわりと解けていく。


 最後に見えたのは、

 楽しそうにキャンディーを回す死神ちゃんの笑顔だった――。

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