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別れは花畑で



私は町外れまで彼を連れて行った。

そこは、私がよく悩んでいるときに来る花畑だ。



「一応聞くけど、さっき何を言おうとしたの?」

「さっきのはルチアが悪くないって、むしろ助けてくれたことを言おうとした」

「余計なこと言わないで。あんた仮にも国に忠誠を誓った騎士でしょ?」

「俺は真実を言おうとしただけだ」



どこまでも真っ直ぐな彼の瞳を見ていられない。やっぱり突き放すべきだった。

私には彼の光が眩しすぎる。


ずっと暗闇にいていきなり明るい太陽を見るような、そんな感覚だ。



「その真実は誰も信じない。あんたもこの国で生まれたなら知ってるでしょ、ルミナス双子の言い伝えを」

「ああ、“災いを齎す双子の姉”か?」



その先言わなくてもわかる。彼はそんな噂を信じていない。

闇にいる私を必ず救おうとする。


今度こそ突き放さないと。



「そう、私は不幸にする。さっきも私が原因なの…庇われる理由なんてない」

「だが、お前は魔法石を使って助けた」

「私があの場にいなかったらこの出来事自体なかった。皆が言っていたでしょう?あんたも、私に関わって被害にあったの忘れたの?」

「……?」

「熱出したじゃない。騎士団長は並外れた体力があるにも関わらず、気を失うほど高い熱が出た」



そこまで言うと、彼は口を固く結ぶ。…納得はしていなさそう。



「やっぱり、私を城に連れ帰るのは諦めて。『誰にだって心があってそれぞれいろんな色の光を宿してる。その光を守っていくのが魔法石を手にした7人の騎士』でしょ?」

「それ…」

「私は周りを不幸にする。そんな私があんたと一緒にいていいわけがない」


これで諦めてくれそうって、冷めた目で彼を見た。

けど彼は、切長の瞳を見開いたとさらにその瞳に光を宿す。



「俺はお前を見捨てることはできない。俺が騎士になったのは、誰1人欠けることなくその心の光を守ることだ」

「どうして…」

「俺は、ある子と約束したんだ。強くなって皆を守ると」



私は彼の目が1番苦手なんだ。諦めを知らない真っ直ぐな目が。

私と彼とでは住む世界が180度違う。お互いが理解し合えるはずがない。


私たちの間に壁があるかのように、風が吹き抜けた。



「ごめん…、さようなら!」



踵を返して逃げるように走る。


振り向くことなく家まで走った私は、彼がその後王の命令で城に無理やり連れ帰られたことを知らなかった。




✳︎✳︎✳︎



家に着いてしばらくした頃、ドアを誰かが叩く音がした。


「ルチア様、大変だ!」



トドおじさん…?



「どうしたの?」


扉を開けると、絶望に近い顔面蒼白になったトドおじさんがいる。



「さっきルチア様と一緒にいた兄さんが城に連行されて行ったんだ!あの人はもしかして騎士団長だったのかい?王様の命に従わなかったとかで処刑されると耳にした」

「……っ!?」



私は迷わず城に向かった。


だから、私と関わると不幸が起きるの…!今度こそ、私の周りで命が失われたらもう…



お願い…どうか間に合って…!



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