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異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~

異世界美少女エリス<エクスチェンジャーの魔法>

片山卓也は、一介の中小企業社員であり、何もかもがパッとしない男だった。成績は平凡、恋愛は失敗続き、友人も少なく、日々の生活に明るい話題はない。つい先日も同僚の横山に仕事の功績を横取りされ、上司からの評価を奪われたばかりだった。


「なんで俺だけこんな目に遭うんだろうな」


そんな不満を抱えながら帰宅途中、卓也は薄暗い路地で妙な光景を目撃した。銀髪の少女が、宙に浮かぶ奇妙な装置をいじっていたのだ。それは、まるでパズルのような形状をしており、無数の部品が互いに噛み合って動いていた。


「な、何してるんだ?」


思わず声をかけると、少女は顔を上げ、微笑んだ。


「こんばんは。片山卓也さん」


「なんで俺の名前を?」


「私はエリス。あなたのような人を見つけるのが仕事なの」


エリスは装置を指さしながら言った。


「これは『エクスチェンジャー』。何かと何かを等価交換する道具よ。たとえば、誰かの時間とあなたの時間を交換したりね」


「等価交換?」


「ええ。交換するものが互いに釣り合っていれば、どんなものでも交換できるわ」


エリスはそう言って、装置を卓也に差し出した。


最初のうちは、卓也も懐疑的だった。試しに自分の古びた腕時計を机に置き、「もう少しマシな時計と交換したい」と願いながらエクスチェンジャーを操作してみた。すると、目の前で時計が輝き、新品の高級腕時計に変わった。


「…本当に交換できるのか!」


それからというもの、卓也はエクスチェンジャーを日常のささやかな願望を叶えるために使った。いらなくなった本を新しい小説と交換したり、古いスマホを最新機種に変えたり。


しかし、エクスチェンジャーには厳格なルールがあった。「等価」でなければ交換が成立しないのだ。たとえば、壊れたイヤホンを高級ヘッドホンに変えようとしても、何も起きなかった。


「釣り合いを取るのがコツってことか」


次第に卓也は、この装置を使って仕事や人間関係に影響を及ぼせないかと考え始めた。まず最初に目をつけたのは、功績を奪った横山だった。横山の成功を自分の失敗と交換できれば、少しはバランスが取れる。


卓也はエクスチェンジャーを使い、横山の「業績」と自分の「不遇」を交換した。翌日、横山は急に大きなミスを犯し、上司から厳しい叱責を受けた。一方で卓也は、突然昇進の話が舞い込む。


「ざまあみろ!」


卓也の心には、今まで味わったことのない快感が広がった。それ以降、卓也はエクスチェンジャーを使い続け、嫌いな人間の不幸を自分の幸福と交換することに夢中になった。


だが、エクスチェンジャーの使用を重ねるうちに、卓也の生活に不穏な変化が現れ始めた。昇進したばかりの仕事で連続してミスを犯し、信用を失ったり、交換した物品が突然壊れたりしたのだ。


「どうなってるんだ?」


エリスが再び姿を現したのは、そんなときだった。


「楽しめた?」


「これ、なんかおかしいぞ!俺は正しく使ってたはずだ!」


エリスは微笑みながら首を振った。


「正しいかどうかは誰が決めるのかしら?等価交換とは、あなたが思うよりずっと複雑なものよ」


「どういうことだよ!」


「人の幸福や不幸には目に見えない影響がある。あなたが他人の運を奪えば、その反動が必ずどこかで現れるの」


エリスはエクスチェンジャーを卓也の手から取り上げた。


「あなたには、これを使う資格がなかったみたいね。代わりに、少しだけ教訓を味わってもらうわ」


そう言うと、エリスは何かを操作し、卓也の目の前が真っ暗になった。


気がつくと、卓也は路上に倒れていた。エクスチェンジャーは消え、日常は以前のように退屈で不便なものに戻っていた。


「なんてことだ…俺のしたことは全部…無駄だったのか」


卓也は拳を握りしめたが、すぐに気づいた。便利な道具がなくても、自分の力で少しずつ前に進むしかないのだと。


それから彼は、地道に努力を積み重ねる生活を始めた。そして、いつの日か自分の力で手に入れた成功は、何物にも代えがたい価値を持つと実感するようになった。


「本当に大切なのは、交換できないものなんだな」


卓也は、そう心の中でつぶやきながら、今日もまた新しい一歩を踏み出した。

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