就職先でのお仕事
期間が空きました。申し訳ございません。
投稿は不定期になるので、気長にお待ちください。
クズシからの仕事をいったん中断し、昼休憩のために受付に戻ってくるローゼン。
昼休憩の時間は、サラスと食事をとることになっている。
当然その申し出はサラスが出したものであり、一緒に受付できる時間が少ない可能性を感じ取った彼女の勇気を出した一手であった。
「ごめん。待たせた?」
ギルドの裏口に立っているサラスを見つけると、ローゼンは小走りで彼女に近づいた。
「そんな・・・。今ちょうどついたとこですよ♡(キャーーー!!彼女みたい!!)」
にこりと微笑みを返すサラスの脳内はお花畑状態だった。
実際はローゼンとの昼食のことで思考がいっぱいになり、仕事中上の空でミスを連発したのだがそれは内緒である。
「いつもはどこでご飯食べてるの?」
「いつもはお・手・製のお弁当なんですけどー、今日は外食しようかなって」
「へー。料理できるんだねぇ」
(食いついた!!)
心の中でニヤリと笑いながらガッツポーズを決めているサラス。
料理は別に得意ではないが、こんなときのためにと料理の練習をしていた成果がでた。
ローゼンは鈍感であり対応はあくまで世間話の域を出ないが、サラスは畳み掛ける。
「そうなんですよ!!良ければ・・・ローゼンさんの分も作ってきましょうか?
毎・日。」
「ほんとに?嬉しいな。そんなこと言われると。」
「じゃあ。」
「でも遠慮しとくよ。シィナ ギルマスの話だとあっちこっち出張したりすることも多いみたいだし、どうせ忙しくて食べれなかったりするからね。」
「そんなぁ・・・。またギルマスのせいですね・・・。」
(でも嬉しいって言われたし、とりあえずは良しとしましょうか)
がっくりと肩を落とすサラスに既視感を覚えながら、ローゼンは昼食が何かとばかりを考えていた。
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昼食を済ませたローゼンは再びクズシのいる解体場を訪れた。
クズシは黙々と仕事をしており、どうやら昼休憩は取っていないようだ。
「クズシさん。代わるからお昼食べてきたらどうですか?」
ぴくっと反応するクズシ。
「いらん。」
グゥーーー。
言葉とは裏腹におなかの音を響き渡らせる。
「代わりますって、ほら。
次はこのモンスターのでしょ。」
着替えてクズシの横に立つローゼン。
恥ずかしそうにしているクズシにどんどんと語りかけながら作業を始める。
「お前、なんで捌ける?俺、まだ教えてない。」
クズシが不思議そうな眼をローゼンへ向ける。
ローゼンは過去の経験からモンスターの捌き方を導き出していた。
というのも、新人育成を行っていたころ、より危険度を減らすために自主的に弱点や刃の通りやすいところを調べていた経験であり、当然他の人間には真似できないことである。
「はは。前職の賜物ですかね。
ほら、ご飯食べてきてください。」
「俺、お前を認める。」
「認める?」
ボソッと呟くクズシに思わず聞き返すローゼン。
「最近のやつ、軟弱。
汚い臭い、いや。
重たい、いや。
沢山の種類、覚えるの、いや。
お前、違う。」
たどたどしい言葉遣いで饒舌にはなすクズシ。
解体という仕事上、どうしても汚れ仕事であるため周りから敬遠されがちである。
新人が入っては辞め、入っては辞めを繰り返している解体場において、クズシにとってローゼンは意外な存在であった。
最初こそナヨナヨとした細い奴が来たと思っていたものだが、今となればありがたい存在になりうる人物である。
文句があるとすれば、解体場でローゼンを独占できない事だろう。
「ありがとうございます。」
ローゼンはお礼を言うと、直球の賛辞に耳を赤らめた。
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夕方になり、ギルドに帰ってくる冒険者が増えはじめる時間。
受付を手伝うようクズシに言われてしてきたローゼンは、覚悟を決めていた。
昼、とても静かで落ち着いていたギルド内は人込みで溢れ、騒がしくなっているからである。
受付の人間たちはわちゃわちゃと忙しそうに動き回っており、受付には長蛇の列が生まれている。
ローゼンも並んでいた側の立場だったこともあり、謎の申し訳なさを感じながら受付で目を回しているサラスに声をかける。
「サラス。何手伝ったらいい?」
「ローゼンさん!!」
ウルウルとした瞳でローゼンの手をガッツリつかむサラス。
サラスもギルドに就職してまだ長くないため、夕方の忙しさは未だに耐え難いことなのである。
「受付は私がするので、裏で依頼の処理をお願いします!!助かりますぅ!!」
走って受付に戻るサラスを見てローゼンも急いで依頼の処理に向かう。
依頼の達成料と素材の買取料などを計算し受付に報酬額を渡す仕事だ。
あまり手馴れないためどうしても時間がかかってしまっているが、何とか急ぎながら仕事をしていると、受付が一瞬静まる。
すると次は元の騒がしさに戻る。
不思議に思ったローゼンは報酬額をもって受付にでることにした。
受付にでると、人だかりはサラスのいる席に集まっおりローゼンも駆け寄る。
「そんな安いわけねぇだろ!!」
机を強くたたく大男。以前、ローゼンが倒してしまった大男だ。
「で、ですが、状態も悪く査定がこうなってまして・・・」
涙目で震えながらも小声で言葉を紡ぐサラス。
「すみません。それ私が計算したんですよ。間違いありましたか?」
「ああん?てめぇが・・・。」
途中で口を挟んだローゼンに振り向いた大男が固まる。
直後、固まったのが解けたかのようにブルブルと震えはじめた。
「いや、問題ないです。す、すいやせん。」
過去と同様ローゼンに対しぺこぺことしながら立ち去る大男。
サラスはローゼンにじっと熱い視線をおくる。
(やっぱりこの人しかいない!運命の人)
「あのー。査定いいですか?」
受付に並んでた次の人が声をかけるまで、サラスは裏にもどったローゼンの方向を見つめていた。
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