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就職先は?

閲覧ありがとうございます。

見ていただけるだけで嬉しいです。


今回もぜひ軽く読んでいってください。

周りに集まってきた人だかりをシィナは一掃すると、奥のギルマス部屋にローゼンを連れ込んだ。

テーブルに向かい合わせに座り、話を始める。


「おぬしは人気者じゃのぉ。特に古参のギルドメンバーからは。」


「逆に「双剣」以外の若者からはなぜか嫌われてるからね。」


「おぬしの実力を見る機会がないからじゃろ。最近は攻略もあまり行っとらんみたいだったしの。」


ローゼンはどうやら大手クランの穀潰しのようにおもわれているようである。

二人で笑いあうシィナとローゼン。もう彼に宿でのときのような棘はない。


「ところでじゃが、これから先のことは決めておるのか?」


「いや、まだ。でも、さっき会った他クランの人が誘ってくれてたりしたから、そっちに入ろうかなって」


「ちょ!!ちょっと待つのじゃ。」


立ち上がって右手を前に突き出すシィナ。急に余裕の表情が崩れ、慌てた表情になる。


「も、もう決まっておるのか?」


「いや、まださっきちょっと話しただけだけど?」


キョトンとした顔をするローゼンに勢いよく問いかける。


「そ、そうか。ちなみにどのクランじゃ?」


「「夢魔法(トリップ・マジック)」のクランだけど・・・?」


「やつらの依頼報酬を下げておこう・・・」


ぼそぼそと悪い顔で呟くシィナ。

夢魔法(トリップ・マジック)」は魔法に特化した大きいクランだ。当然無詠唱を行うことのできるローゼンを見過ごすわけなく、スカウトをかけていた。それこそ、「双剣」所属の頃から。

ちなみに現「夢魔法(トリップ・マジック)」クランのリーダーは「双剣」初期メンバーの一人でもある。そんな大きなクランの報酬をいじくるのは職権乱用だがシィナらしいといえばそれまでである。

ローゼンの視線に気づくとハッと気を取り直す。


「こほん。おぬしさえよければギルドに入らんか?」


「ギルドですか?」


「ああ。おぬしの能力を買ってるのは何も他のクランばかりじゃない。

是非うちの職員になってほしい。」


「ありがたいけど、「夢魔法(トリップ・マジック)」の誘いもあるからなぁ」


首を傾げながらうんうんと唸るローゼン。


「そんな・・・。ちょっと待っとれ。」


絶望した表情を浮かべた後、シィナは部屋を後にする。

数分後・・・


「ローゼン。「夢魔法(トリップ・マジック)」のことじゃが・・・。

脅し、じゃなくて交渉した結果。譲ってもらうことになった。おぬしの意思は介入しておらんが。」


「え?譲ってもらうって、俺はギルドに入るってことですか?」


付いていけないローゼンにシィナは身を乗り出しながらコクコクと頷く。

その様子は悪いことを勢いでごまかすような子供である。


「おぬしさえよければな。待遇もよいぞぉ!

残業はゴニョゴニョ・・・。休日はゴニョゴニョ・・・。給料はゴニョゴニョ・・・」


「なぜか重要な待遇面が全く聞こえないんですが・・・」


やれやれとうなだれるローゼン。


「では、ギルドでお世話になります。」


「ほんとか!」


ぱぁっと顔が明るくなるシィナ。


「もう取り消せんぞ!録音したぞ!逃がさんぞ!」


「そんなに必死にならなくても・・・。

シィナ ギルマスにはお世話になりましたから。すこしでも恩を返しますよ。」


ますますご満悦の表情を浮かべるシィナ。


「おぬしは昔から良い子じゃのぉ!ほんとにちっこい頃からかわらんのぁ!

昔はわしと結婚すると言って聞かなかったことを思い出すのぉ!」


「なんでそんなこと今言うんですか!!関係ないでしょ!!」


「なんじゃ!恥ずかしがって!!」


「内定取り消しますよ!」


「立場逆じゃろ!もぉう出来ませーん!決定でーす!!お前はうちで働くのじゃ!!」


「早速無茶苦茶なことを!職権乱用だ!」


シィナとローゼンの不毛な争いは朝まで続いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次の日、いきなり出勤日を迎えたローゼンはギルドで制服に着替えると、受付に立っていた。

隣には昨晩ギルドについたとき、最初に駆けつけてくれた女性が立っている。

後ろで一本に髪をまとめた女性で、名前はサラスという。

ローゼンとの付き合いこそ浅いが、「双剣」サブリーダーとしての技量はギルマスから聞いているし、とても贔屓目にしていた。


「ローゼンさんがこっち(受付側)に立っているなんて、なんか変な感じですね。

ましてや私が指導係になるとは。」


グヘヘと隠れて笑うサラス。

贔屓目にしている理由は他にもあり、サラスはローゼンに好意を抱いていた。

一つはローゼンの実力と地位。今でこそ「双剣」を脱退したものの最高レベルの地位に立っていた人間だ。それほどの実力を持つ人間は玉の輿のための優良物件である。

ましてや、ローゼンのように実力をひけらかさない実力者は稀なもので、荒くれの冒険者ばかりの対応していたサラスにとってはオアシスも同然だった。


「俺も驚いてるよ。よろしくお願い致します。サラス()()。」


「先輩だなんて!!いつも通りサラスでいいですよ!!」


手をバタバタさせながら顔を真っ赤にするサラス。

すると、シィナがあきれた表情で裏から出て来る。


「なにやっとんじゃ。ちゃんと教えとるかぁ?」


「ギルマス!?これから教えるところでした。任せてください!」


「そうか。ならよいが・・・。

あ、ちなみにローゼンは受付以外にもやる事が色々あるからちゃっちゃと教えるんじゃぞー。」


「そ、そんなぁ・・・。」


がっくりとうなだれるサラスを前にしながらも、ローゼンはこのあと何をやらされるか気が気でなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次にローゼンが訪れたのはギルドのモンスター解体場だ。

小型から大型まで様々なモンスターが並べられており、そこには角刈りの大男が立っていた。

モンスターを手にとっては素早く解体し、部分ごとに分けている。


「あのー。シィナ ギルマスにいわれてここに来たんですけど・・・。」


話しかけるローゼンをよそに、作業を続ける大男。


「あのー。」


「・・・それ、着てこっちこい」


背中越しに刃物で机の上の作業着を指すと、ふたたび作業に戻る大男。

ローゼンはいそいそと着替え、すぐに作業を教わりに寄った。


「よろしくお願いします。クズシさん。」


コクリと大男、もといクズシは頷くと指差しで寡黙に作業手順を伝えていく。


(ギルドには面白い人が多いよなぁ)


のんきなローゼンは、それに黙って従うのであった。

はい。就職しました。


お読みいただきありがとうございました。

これから物語を進展させていく予定ですので、お楽しみに。

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