追放 そして④
はい。投稿です。
いつも読んでくださりとても感謝しております。
また、ブックマークが一人でも増えてたりすると踊りながら喜んでます。すみません。
自分の住む宿にたどり着いたローゼン。
一階では気の強そうなガタイの良い女性が掃除をしているところだった。
「女将さん。お疲れ様です。」
「ああ、やっと帰ってき、、、」
「お帰りなのじゃ!!!」
女将が渋い顔で後ろを振り向く。
そこには、仁王立ちして腕を組んだシィナの姿があった。
「シィナ ギルマス!?」
「あんた、ギルドマスター様が一日中ここで待ってたんだよ?一体なにしたってんだい。」
女将は手で口元を隠すようにしてローゼンに詰め寄るが、その一言でローゼンは言葉が詰まる。
「やれやれ、何でもいいけど部屋で話しておくれ。面倒事は嫌だからね。」
何かを察したのか、女将は手をひらひらと振りながら掃除を再開した。
ローゼンとしてもありがたい申し出を断ることはできず、シィナと二人で部屋に入るのであった。
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「さて、まずは言わせてもらおう。」
コホン。と喉を整えるシィナ。息を大きく吸うと、
「いつまで待たせる気じゃこのボケ!」
足をバタバタとさせ地団駄をふみながら勢いよく叫んだ。
余りの勢いで正面に立つローゼンはオールバックになりそうだ。
「そっちこそいつまでいるんだよ。」
ローゼンは拗ねた子供のように横を向き、ぼそぼそと呟く。
完全に油断していたローゼンはシィナに対する言い訳を全く用意できていなかった。
その中途半端な返答にますます怒りを募らせるシィナ。
「こっちを向いてしゃべらんか!帰ってくるのも遅い!そもそも!・・・」
怒鳴っても横を向いたままのローゼンを見て、シィナは肩を落とす。
「そんなに気にしとるのか?濡れ衣を着せられたこと。」
「っ!!濡れ衣だって、なんでそう思うんですか?」
ハッとした表情をしてシィナの方を向くローゼン。
ふふんという自慢げな表情を浮かべたシィナは、薄い胸を張って腰に手を当てる。
「勘じゃ!!
・・・でも簡単なことじゃよ。ローゼン。おぬしのことはむかーしからよく知っとる。それこそこーんなにちっちゃなころからな」
ジト目になるローゼンを見て見ぬ振りしつつ、言葉を続ける。
人差し指と親指でつまむような仕草をしながら力説はまだ続く。
「さっき、アンナという女性の話をギルドの魔法通信で聞いた。ギルドに報告されていたみたいじゃからな。
・・・変わらんのぉ。そんなおぬしのことをわしは疑わんよ。被害者がリズってこともあってな。
元々目を付けておったが、まさかこんなことになるとはのぉ。
リクには連絡したのか?」
またサッと目をそらすローゼン。
「そうか。まぁそれはおいおいとして・・・。
一度ギルドに来たらどうじゃ?おぬしが想像しているものとは違ったものが見れるはずじゃ。」
「なんでギルドに行かなきゃいけないんだ。
俺は「双剣」を脱退したばかりなのに。ましてや罪を犯して・・・。」
今度は苛立ちを込めながらぼそぼそと呟くローゼン。
「それじゃよ。おぬし、ずっとズレとんじゃよ。
罪を犯してないじゃろ。何もしてないのに罪悪感を感じるなんて意味の分からん話じゃ。
相変わらず思い込みの激しいやつめ。じゃなかったら牢を出れるわけないのに。」
「じゃあなんで「双剣」をクビになるんだよ!!」
ローゼンはキッとシィナを睨み八つ当たりのように湧き上がってきた感情をぶつける。
「それについては・・・すまん。まだ調査中なんじゃ。クランの脱退条件は曖昧じゃし。
そこいらの新入りぐらいならいざ知らず、サブリーダーを脱退させる権限なんて持ってるやつなんてクランリーダーのリク、もしくはギルドの上層部ぐらいしかおらんはずなんじゃよ。」
「じゃあなんだ!!リクが俺を裏切ったってのか!!それともあんたが!!」
「お、落ち着くんじゃ。わしじゃない!!リクもそんなことするわけないのはおぬしがいちばんよくわかっとるじゃろ。
と、とにかく今からギルドに行くぞ!百聞は一見に如かずじゃ!!」
わたわたと慌てるシィナ。
「わかった。一度だけ行くよ。そしてもう二度とかかわらないでくれ。」
立ち上がり不服を顔に出したまま外にでるローゼンを、シィナは悲しげな眼でみつめていた。
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外は真っ暗だが、ギルドは明るく照らされていた。
時間帯的には、大きな仕事を終わらせてきた冒険者がギルドで酒盛りをしているところだろう。
ギルドは依頼を受注したり、冒険者を管理する役目を持つ側面、酒場も兼ね備えていた。
すべてのギルドがこうではないが、シィナの要望もあり、ギルドは冒険者にはありがたい楽しめる場所になっていた。
「やっとついたか。ホントじゃったらすぐ来るつもりだったのにのぉ」
入り口の大きな扉を開けるシィナ。
中の様子がうかがえるようになる。
やはり、この時間は仕事終わりの冒険者で賑わっている。特にランクの高い冒険者ほど、依頼には時間がかかるため夜にいることが多い。なかには仕事を終えた受付嬢もいるようだ。
「あっ!ギルマス!・・・とローゼンさん!!心配したんですよ。」
受付嬢の一人が寄ってきて声をかける。胸元にリボンを付けた制服のままお酒を飲んでいたようだ。若干顔が赤く染めあがっている。
「すまんの。遅くなった。ほらお前ら!!ローゼンを連れて帰ったぞ!!」
「ちょっと!!!シィナ ギルマス!!」
到着と同時に周りに聞こえるような大声を上げるシィナの口を手でふさぐローゼン。
周りもその声に気づき、ぞろぞろと集まりはじめた。
リズに騙されたときのトラウマがローゼンの脳裏によみがえる。
「ローゼンさん!よかったです戻ってきてくれて!!」
「災難だったなぁ」
「また育成のコツ聞かせてくれよ」
しかし、ローゼンの予想とは裏腹に、周りの反応は暖かかった。
「な、いったじゃろ。」
得意げなシィナ。そこへ二人の少年少女が駆けつける。
「ローゼンさん!ジークです!!ありがとうございました!!」
「おかげさまで、助かりました。早速また会えてよかったです。」
ダンジョンでローゼンが助けたジークとアンナである。
「世の中にはおぬしが助けた人がたくさんおる。信じてくれてる人がたくさんおる。
実際昨晩の事件のときもそうじゃ。おぬしは周りのことなんて混乱して見えてなかったかもしれんが、おぬしを信じてた奴らはたくさんおった。
なにも周り全部敵にまわすことはない。おぬしにはこれまで積み上げてきたものがあるんじゃからな。
いつも自分のことを卑下しておったり、リクの活躍の陰に隠れてしまったりしとるが・・・
おぬしは・・・ローゼンはもうちょっと自分のことを信じてやってもいいんじゃないのか?」
自然と涙がこぼれ出て来るローゼンにシィナは優しく語り掛ける。
もうローゼンの心を縛る鎖のような感情はない。
多くの仲間たちに囲まれながら、ローゼンは「暖かさ」を噛みしめていた。
これから物語が進展していく予定です。
まだタイトル回収するら出来てないのはごめんなさい。