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追放 そして②

第二話です。遅くてすみません。

是非読んでいただけるとありがたいです。

ギルドマスターなる幼女と外に出ると、明るい日差しがローゼン達を照らした。昨日見たはずの太陽の光が、なぜかとても久しぶりに感じる。


「じゃあ俺はこれで。」


「まて。」


外に出て真っ先に離れようとするローゼンの肩を変形した杖の先端が掴む。どう見ても木製の杖がぐねりと曲がりガッチリと肩を押さえつけている。


「どうせ行くとこなんかないじゃろ。ワシに着いてこい。」


「嫌です」


「まぁそう言うな。言っとったじゃろ。自分はもう「双剣」のサブリーダーじゃないと。

じゃあお前は無職じゃなぁ。

無職が行くとこなんかあるかい。

それともこのワシの頼みが聞けんというのか?」


ものすごい偏見を堂々と言い切る幼女、もといシィナ・ソニアは

グイグイとローゼンに顔を近づけてくる。心なしか杖が肩を掴む力も強くなっている気がする。


「どこに行く気ですか」


「もちろんギルドじゃ」


ニコッと微笑むシィナ。俯いて暗い表情を浮かべるローゼンに目も向けず、ペラペラと語り始める。


「ギルドじゃったらワシの権限で好き放題できるしのぉ。気にするでない。最上級の菓子でもつまみながら昔話でもせんか。なんならお前を雇っても・・・」


シィナはチラリと横目でローゼンの方に目を向ける。

しかしそこにローゼンの姿はなく、杖の先端は土の塊を掴んでいた。

はぁ。とシィナは肩を落とす。


「技術を無駄遣いしよって。「謙虚な魔王(ひそみしもの)」の異名は伊達じゃないってことか。

まぁ、どうせ家にでも帰ってるんじゃろ。」


シィナは杖を空中で横向きに固定し、そこに座る。フワッと風が舞い上がると、瞬く間に飛んでいくのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふぅ、やっと行ったか。」


建物の陰から除くローゼンは安堵のため息を漏らした。

シィナがよそ見をしている間に変わり身を用意し、近くでシィナが立ち去るのを待っていたのだ。

シィナは1人での移動でわざわざテクテクと歩くような事はしない。彼女には宝具と呼ばれる伝説の道具の1つ、世界樹の宝具があるのだから。

世界樹は遠い昔に出現した幻の樹。ギルドマスターは代々世界樹の宝具を使用するしきたりがある。シィナの杖は先代の世界樹の宝具である弓を受け取った際、形状が杖へと変更したものだ。

先程杖がグネグネと動いたのも宝具だからこそである。


「シィナさんはなんでわざわざ俺の事を迎えに来たんだ。

ましてやギルドに行こうだなんて・・・」


今ギルドへ行けば「双剣」のメンバーはいないものの、噂を聞いた他のクラン、ギルド職員ばかりだろう。


(誰が自分のことを歓迎してくれるというんだ。

きっとシィナさんも面白半分でギルドに連れていこうとしたに違いないよ。)


ローゼンは他人を信じることのできる状況じゃなかった。

それぞれの理想と目的を掲げリクと立ちあげた「双剣」で、高い志を持った仲間たちと大きく成長させた「双剣」。

それはもう自分が立ち入ることのできない領域になってしまった。どれだけクランのために力を注いでも、寝る間を惜しんでクラン内の育成方法を考え実行しても、今は関係ない。

いつもは胸につけている「双剣」のバッジが付いていないことがその現実を強く認識させる。


ふらふらとした足取りで路地裏を歩み始めるローゼン。

しかし、すぐに目の前の何かにぶつかる。


「おうおう。兄ちゃんどこ見て歩いてんだぁ。」


ローゼンがぶつかったのはスキンヘッドの大男。いかつい体格に鋭い眼光でローゼンを睨みつける。


「ごめんなさい。」


軽く謝罪し、大男の横をスッと通り抜けようとするローゼン。


「いやいや、ごめんじゃねぇよ。どうすんだ?怪我しちまったよ。ああ痛ぇな。どう責任とるつもりだ?ああん?」


ローゼンの前に再び立ちふさがり、胸ぐらを力強く掴む大男。あまりの体格差でローゼンが宙に浮く。

大男は鋭い眼光を緩めず、睨みつけたままだ。


「君ってそのバッジ、ランク6冒険者でしょ?ギルドで見かけたこともあるし。冒険者同士の争い事なんて良くないよ。離して。」


ギルドに所属している者は一人残らずランクを持っている。ランクとはギルドに所属している者の強さを表す尺度である。1〜10までの中で数字が増えるごとに上位の存在となり、何を隠そうグリムはランク8冒険者。ランク8ともなるとシィナがマスターをしている大御所ギルドの中でも3人しかいないほどの逸材なのである。

まぁ、「双剣」のリーダーであるリクは世界で10人といないランク9冒険者なのだが。

それだけのランクを持つローゼンだ。目の前の小物に怯むような器ではなかった。

「双剣」のゲイルに比べれば目の前の大男など小型犬ぐらいにしか見えない。物怖じするわけもなく、淡々と相手を分析し大男をなだめるローゼン。


大男の顔がさらに熱を帯びて赤くなる。


「てめぇ。状況分かってんのか?二度とそんな口きけないようにしてや、、、っ!!」


大男に鋭い痛みが走り、ローゼンを掴んでいた手を離す。


「痛ってぇ!!なにしやがった!!」


空中からスっと着地したローゼン。

赤く染まっていた男の顔が今度は血の気が引いたように青ざめた。

大男が見たものは、魔力をあふれ出しながら殺意を向けた目で見てくるローゼンの姿だった。

圧倒的なまでの魔力量の差に、冷や汗が止まらない。


「す、すみません。ちょっと酔っちまってまして。はは。失礼いたします。」


大慌てながらもへこへこと頭を下げて立ち去ろうとする大男。

ローゼンは落ち着いた様子で胸元を整え直し、急ぎ早に逃げる大男の背中を見つめている。

彼は不思議な感覚に襲われていた。頭に霧がかかりながらもやる事だけははっきりしているような感覚。()()()()()()()()()()ような感覚。


(この人。俺が弱かったら襲っていたんだ。そうだ。俺が周りの人を守らないと。

それが自分の目的なんだから)


ローゼンは右手を大男へ向ける。

パチッと右手が光ると、目の前の大男は走った勢いのまま大通りへ飛び出し、体をピクピクとしながら倒れた。

ローゼンは無詠唱での魔法が使える。初級魔法ならいざ知らず、通常必要とされる上級魔法ですら詠唱を必要としない。これが彼のランクを上げた要因の一つでもあった。


「誰かが倒れてるぞ!」


ぞろぞろと人が集まってくる。


気配を消し、その場から離れるローゼン。


「こいつ、例の格下狩りじゃないか?」

「だとしてもランク6を倒せるやつなんてそう居ないはずだ」

「目立った外傷もないし、全く血も付いていない。こんなことが出来るのは、、、」


その場を離れたローゼンには、そんな会話は聞こえていなかった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

感謝してもしきれません。

ゆっくり投稿していく予定です。


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