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追放 そして

追放物が大好きで自分でも書きました。


1分でもいいのでサラッと読んでみてください!


何卒よろしくお願いいたします。

心地の良い夜風が吹く中、ローゼン=クリミナルは人を待っていた。

ローゼンは黒の服で身を包み、闇に溶け込むような真っ黒な髪の毛が特徴の人間だ。


今夜はローゼンの所属するクラン「双剣」が旅立つ前夜祭が開かれている。


「双剣」が向かうのは新たに発生した高難易度ダンジョン。

発生してすぐ難度Aに認定される異例のダンジョンである。

「双剣」にかかればいずれは踏破できるだろうとギルド本部に見込まれ、その祝いも兼ねて突発的に宴が行われているという訳だ。


リクとローゼンの二人で立ち上げたクランも大きくなり、ギルド本部から直々に指名されるまでになったのは感慨深いものがある。リーダーのリクは1足先に目的地へ到着し、今頃作戦を練っていることだろう。

ローゼンからしたらありがたい限りである。


先頭に立つのをローゼンは好まないため、リーダーをしてくれているリクには毎日感謝しかない。

ローゼンがサブリーダーとして補助出来ているか不安な限りである。


ところでなぜローゼンは人を待っているのか、それはクランメンバーであるリズに呼び出されたからだ。

リズは比較的新しく加入したメンバーで、クランの名が知れ渡った後に仲間に加わった。動機は「双剣」リーダーのリクとお近づきになりたいという不純な動機だが、魔道士としての腕前は確かで今や「双剣」の主戦力である。


「自己中なとこもあるけどな」


近くの時計台に目を向け、ポツリと呟く。呼び出しの予定時間からはだいぶ経っており、ローゼンが過去の思い出に振り返るぐらいには十分だった。


「待たせたわね」


真っ赤なロングヘアに真っ赤なルージュ、胸元を大きく開いたドレスに身を包んだ大胆な女性が悪びれる様子もなくローゼンへ声をかける。

ドレス姿のリズとは真逆に、普段の真っ黒な服でローゼンは少し恥ずかしさを感じた。


「リズ。どうしたの?君から話があるなんて珍しいね」


リズがローゼンに話しかけることなんて滅多にない。リズの加入後片手で数えられる程度だろう。尊敬しているリクに意見したり、対等な立場で会話をしているローゼンの姿が気に食わず、距離を置いていたのだろう。


「そうね。」


リズは不機嫌そうに近くの裏路地へ目をやると、ローゼンへ向かって急にふらつき出した。


「ちょっと、大丈夫?」


ローゼンは咄嗟に両手で彼女の肩を支える。

つばの広いとがった魔女帽子についたバッジがキラリと光る。


「飲みすぎたの?リズが酔うなんて珍し…」


加入当時を思い出すような優しげな笑みを浮かべながらリズの肩から手を離そうとした時、リズはローゼンの腕を掴んだ。そのままグイッとある位置へローゼンの手のひらを移動する。


リズの、胸へ。


「ちょっと、なにを…」


焦って手を離し声をかけようとすると、それを遮るようにリズの悲鳴が響きわたった。

路地裏から男が一人駆けつけてきて即座にローゼンの腕を力強く握りしめる。


「痛っ!」


ローゼンが反射で声を上げる。

駆けつけてきた男も「双剣」新メンバーの一人、ゲイルだ。傲慢な性格をもつスキンヘッドの大男で、普段からリズにべったりくっついている大剣使い。ローゼンの腕は傷だらけの手に捕まれ痛みに包まれる。

リズはゲイルの後ろへ隠れるように移動すると、か細い声で訴える。


「あ、あいつ。私の胸を急に触ってきた!」


動揺して声が出ないローゼンにさらに畳み掛ける。


「呼び出されたからきて見たら、体を求められたの!

指紋もついてるわ!」


リズが詠唱すると真っ赤な服の胸元からローゼンの指紋が浮き上がる。


「ローゼンさん。あんた最低だ。」


ゲイルが怒りを露わにしながら横目で罵倒する。

祭りに参加していた人も、悲鳴を聞きつけローゼン達を囲うように集まり始める。


「ち、違うよ。誤解だ。」


ローゼンは理解できないまま、声を振り絞って反論する。


「嘘!証拠だってある!証人だってここにいるもの!

私はホントに触られたの!」


リズは声を荒げて周りに聞こえるよう話す。

指紋の証拠にゲイルという証人、周囲にはリズという美女に気に入られたい取り巻き達、騒ぎで駆けつけてきた「双剣」のクランメンバー達。

ローゼンの視界が歪む。周りを囲む人には長い付き合いの人も多い。ましてや自分に冤罪をかけようとしている人だって命を助け合った仲間だ。信じられない状況に混乱しているローゼンには、この状況を打開することは不可能だった。

狭まって行く視界の中、ニヤリと笑う真っ赤なルージュが目に付く。


その日、ローゼンは「双剣」から追放された。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


目が覚めると、ローゼンは暗い部屋のボロボロのベッドの上にいた。


「ここは、、?」


ローゼンは周囲を見渡す。目の前にあったのは錆だらけの鉄格子だった。

身体中が軋む痛みで全てを思い出す。


「そうか、俺は、、裏切られたんだな」


呆然として天井を見上げる。何が悪かったのだろう。

最近は事務仕事が多く、クランメンバーと接する機会が少なくなったから軋轢が生まれてしまったのだろうか。

リクにリーダーを任せている中、ローゼンはクランのバランサーや育成担当のような役割をしていたが、最近は忙しくなり、あまりクランメンバー同士のいざこざに手を出せない状況でもあった。

確かに、何も事情を知らないメンバーからすると、


(ダンジョンへもあまり行かない)

(行っても育成のためと戦わない)

(重要な仕事はリーダーのリクへ任せ切り)


という側面だけを持った穀潰しに見えただろう。もちろんそんなことは無い、そんなことは無いがそれを判断するのはローゼンではない。

今更証明しようにもそんな機会はないのだ。


もう全てがどうでもいい。

ローゼンは再びベッドに横になると、虚ろな目をしながら目を閉じる。


「おーおー。珍しく不貞腐れとるのぉ。」


牢屋の外から幼い女性の声がする。

ローゼンはチラリと牢屋の外に目をやると、再び目を閉じ牢屋の壁に向かって寝返りをうった。

牢屋の外にいたのは身の丈ほどの杖をもった幼女だ。腰まである金髪に、ダボダボのローブ。幼い見た目とはかけ離れた年寄りじみた口調。


「帰ってくれ」


ローゼンは嫌という程関わってきた相手にうんざりしながら呟く。


「なんじゃなんじゃ。せっかく豚箱にぶち込まれたって聞いたから迎えに来てやったのに。

そもそも言っとるじゃろ、目上の人を敬えといつも。」


「うるさい」


「かーっ。ダメじゃのぉ。まぁ良い。とにかく早くここを出るぞ。」


「出る?」


気にかかった言葉をふと反復する。


「そりゃそうじゃろ。大御所のクランのサブリーダーがセクハラの疑いぐらいでずっと投獄されてたまるか。

ほれ、行くぞ。」


ローゼンは動かない。壁に向かい横になったままだ。


「ほっといてくれ。今はどこにもいきたくないんだよ。」


やれやれ。と幼女はため息を着くと、先程よりも大きい声で語りかける。


「なにバカなこと言っとるんじゃ!用もなしにお前を牢屋にいれておけんじゃろが!衛兵さん達を困らせるでないわ!」


「勝手に出るからほっといてくれ。別にいいだろ。」


幼女の声を歯牙にもかけずローゼンはピクリとも動かない。


「もう俺は「双剣」のサブリーダーでもない。ただの犯罪者だ。あんたには関係ないだろ。」


ローゼンが少し強い口調で言うと、ひと時の静寂が流れた。


さっきまで声を大にして語りかけてきた幼女がいなくなったのではないかと思うほどの虚無な静けさ。


しかし、静けさとは裏腹にローゼンの背中を照らす光があらわれる。瞬く間に光は大きくなり、背中を向けているにも関わらず視界はどんどん明るくなる。我慢できずローゼンは目を細めながら振り向いた。


「はよ出るぞ」


そこにはこめかみに特大の怒りマークが見えるほど引きつった笑顔があり、その横には今にも爆発しそうな杖が更に光を蓄えていた。


「分かりましたよ。シィナ ギルマス」


しぶしぶといった表情で立ち上がるローゼン。放心状態で絶望しているローゼンでも、ここで立ち上がらなかったらどうなるか分からないほど判断は鈍くなかった。

お読み頂きありがとうございます。


どうだったでしょうか?

少しでも「ええやん」と思って貰えたなら嬉しいです。


評価いただけたら泣いて喜びます。


更新はちょっと遅めです。すみません。

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