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セインは忌々しい式を終えると、自室に篭りワインを煽った。

チネロはあれから見れる顔になったものの、すでに嫌悪感しか持てなくなっていた。

そばに立つだけで鳥肌が立った。

この国では3年待っても子供が産まれないか、白い結婚が認められれば離縁することができる。


セインは、チネロと白い結婚をして離婚するつもりでいた。

幸いエリーは、三年でも何年でも待つと話してくれていた。

彼女に待たせる事が申し訳ないとセインは思いつつ、チネロと離縁できた暁には絶対に幸せにしようと心に誓った。


チネロと式を挙げる前に、セインとエリーは知恵を絞った。


『彼女を別邸に住まわせましょう。そこで、男を引き入れたら不貞という事にして離縁するのです』


エリーの考え方は、セインには持ち合わせていない物ばかりで、何度も『なるほど』と、彼は感心した。


『セイン様が指一本触れなければ、きっと寂しくなって男を引き入れるはずです』


セインはチネロの熱視線には吐き気がしていた。優しさを何一つ向けられなければ、きっと、心が弱り男漁りをするだろう。


母のメリッサに頼まれたから仕方なく結婚したのだ。約束は果たした。あとは、好きにさせてもらう。アレも僕と結婚できた事が幸せだろう。

セインは苦しみながら、チネロのために十分に幸せを差し出した。

だから今度はチネロが自分の幸せのために刑期を過ごせばいい。セインはそう思って声を出して笑った。



「旦那様」



気分良く過ごしていたら、ノックと共にメイドの声がかかった。

セインはいい気分だったのに、現実に戻された。


「何だ?」


「奥様の事なのですが」


名目上の『奥様』という単語にセインは眉間にシワを寄せる。

この家の女主人になるのは、エリー以外にありえない。立場上メイドがそう言わなければならない事は分かっていてもセインは彼女を叱責した。


「アレを妻と言うな吐き気がする。アレは罰せられない罪人のようなものだ。名前など呼ぶ必要はない。ところでどうした?」


「侍女をどうしましょうか?」


そう言われて、セインは、チネロにつける侍女の存在を忘れていた。

彼女が来ることに苛立っていたので、準備など何一つしていなかった。

別に誰が侍女になっても問題はないだろう。アレについていた侍女が残っても問題は無いはずだ。エセクター家と同等の賃金を出すのは別に構わない。

セインはそう思って、メイドに「手を煩わせるな」と断りを入れる。


「任せる。アレは確かにこの家に嫁いで来たが、妻ではない。お前達が勝手に全て取り仕切ればいい」


「と、言いますと」


「顔も見たくない。別邸からに入れておけ。行動を監視して死なない程度に生活の面倒を見てやればいい。持ってきたものそっくりそのまま返すんだぞ」


チネロに着いた侍女がいれば生活の面倒も見てくれるだろう。食事は毎日運ばせればいい。

荷物を壊したとして何か咎を受けられても困る。落ち度なく白い結婚を成立させればいい。

セインはそう思ってこれから離縁するまでチネロの顔を見なくて済むと思って、内心ほくそ笑む。

身内だけの式にしたので、チネロとセインの家族以外は結婚した事をしらない。

チネロの家族には「心の病になった」とでも言って、子供が産まれるまでは何も言わないで欲しい。と、結婚した事を隠すように伝えておけばいいだろう。


「わかりました。死なない程度に生活の面倒を見ればよろしいのですね」


「男を連れ込む素振りを見せたらすぐに教えるように」


「承知しました。旦那様。アレが寝室で待っております」


メイドはうっすらと微笑んで退室した。


セインは、チネロを幸せの絶頂から地獄に叩き落とすという、今日一日で最後の仕事の存在を思い出した。

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