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「彼が私の息子のセイン。チネロの婚約者よ」


「はじめまして」


そう言って、軽く会釈したセインの瞳は冷たくチネロを見下ろしているように見えた。

まるで、憎しみに満ちたような目にチネロは言葉に詰まる。怖くなって身をこわばらせ、セインの瞳を見ると先程の氷のような冷たさは嘘のように消え去って、柔和そうな笑みを浮かべていた。


なんだろう。気のせい?


最初に持った違和感をチネロは振り払って、セインの瞳を見る。


新緑のような爽やかな瞳は、どこまでも優しくて、見ているとチネロの心の奥底はじんわりと暖かくなっていった。

しばらく見惚れていると、ようやく挨拶を忘れていた事に気がつく。


「……はじめまして」


消え入りそうな声で慌てて挨拶を返すと、セインは「可愛らしい子ですね」と、チネロを紹介した母のメリッサに優しさに満ちた声で話すのが聞こえた。


「チネロのお母様と私は親友でね。だから、私の娘になるのが待ち遠しいわ」


メリッサはそう言って儚げに微笑んだ。亡くなったチネロの母の事を悼んでいるのだろう。


「貴女のお母さんはね。亡くなるまで貴女の事を心配していたわ。私に頼むほどに」


メリッサがチネロの母の事を思い出して両目に涙を浮かべると、セインの目が澱んでいくように見えた。


なぜ、あの時の違和感を信じなかったのだろう。

チネロはそれを何度も思い出して後悔して、浅ましい自分という存在を消し去ってしまいたいと何度も繰り返し思う。


自分という存在がセインにとっての不幸そのものだと知ったのは、もっと後になってからだった。

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