不正
その後は特にないもないまま家に向かった
強いて言えば途中で白が薬局に寄ったことぐらいだが
「体調が悪いのか?」
「私ですか?私は元気ですよ」
体調が悪いわけではないらしい、常備薬でも切らしたのか?
そして結局お礼って何だ……
そんなことを考えていると――
「着きました、入ってください」
「……邪魔する」
扉を開けて部屋に入る、子供が二人で暮らしていると聞いてどんな部屋かと思えば意外と普通だった
「今から料理を作るので先輩はソファーで休んでいてください」
「そうさせてもらう」
そしてお礼って手料理だったんだ
「おにーちゃん遊ぼう!」
「いいぞ」
ソファーに腰を下ろした瞬間に彰が車のおもちゃを持って話しかけてきた
「いけー!ぶぅーん!」
彰は車を楽しそうに動かしている、俺も一緒になって遊んでやると彰も満足そうにノッてきた
「おにいちゃん、きいてきいてー」
「何だ?」
「さいきんのおねいちゃんがねー」
「ああ」
「ころばなくなったんだー!!」
「前はよく転んでいたのか?」
「うん……いつもきずだらけでかえってきて、そういってた」
「安心しろ、お前の姉はもう転ばない」
白はずっと一人で耐えてきたんだな、だれにも頼れずに。おそらくは初めて会った時の体の傷以上の心の傷を抱えて……
また白を襲う奴がいたら俺が守る……先輩としてな
「手伝える事があるか聞いてくる」
◆◆
「何か手伝える事はあるか?」
「わっ、せっ先輩!?」
キッチンに向かい声をかけると、白は大げさに驚いて手を後ろに隠した……何でこんなに動揺しているんだ?
「そんなに慌ててどうしたんだ?」
「別に、何でもないですよ……完成したら、お呼びしますので……」
「何か力になれたらと思ったが……そうか」
その後俺は彰との遊びを再開した
◆◆
「できましたよ!」
テーブルには肉や野菜が豪華に配置されていた、三人で席に着く
「いただきます」
「……どうですか?」
「美味しい」
「よかったぁ」
白は嬉しそうに脱力した、普通に過去一ぐらい美味しいが……この料理技術も一人で料理するしかなかったという白の背景を考えると、複雑だな
「そういや、二人で住んでいるのに椅子が三つあるんだな」
「たまに……あの人が来たら使いますから」
「あの人っ……ん?……あ、……れ?」
何だ、力が入んねぇ、視界が定まらない、頭が働かない……体から力が抜けてテーブルに吸い寄せられる
その時視界の端に見えた彰は既に眠っていた
「し……ろ?、……ぅ」
俺の意識は緩やかに失われていく
意識を失う寸前に見た白は笑っていた――
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