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という話  作者: 門松一里
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「インテリゲンチャ」という話

「インテリゲンチャ」という話


四半世紀で根本的に考えることをしない人が増えてしまいました。歴史を含む一般教養を軽んずる人たちです。


一方で、インテリゲンチャと呼ばれる知識階級の人たちがいます。


少し考えてみましょう。


*****


フランシス・ベーコン「知識は力なり」


一般教養を軽んずる人たちは「自分たちが考えている」と思っていますが、まったく何も考えていません。


一般教養は考える部品で、それがないと考えられません。情報がないのに戦争に勝てないのです。#孫子


「右か左か」「正義か悪か」というように「何かを選択すること」が「考えること」だと勘違いしています。


「何かを選択すること」は「考えた後の行動」 (結果) であって、それ自体が「考えること」 (原因) ではありません。


ただ単に選択するだけなら、奴隷と同じです。もちろんこれは #blackjoke で、奴隷に選択権はありません。


そうではなく、選択権を持つ生き方をすることが大切です。自らその選択権を放棄したならどうなるのか、その恐怖を知らないのでしょう。


選択権のない生き方になってしまう恐怖——個人では想像もできない恐怖を歴史は教えてくれます。



かつて、一般教養 (リベラル・アーツ) はその名の通り自由になるための術 (すべ) でした。簡単に言えば、昔は一般教養がない者は奴隷だった訳です。


奴隷の思想はあいまいですから、多く惑わされます。そして、その惑いの思想は奴隷自身の行動として表現されます。


知識は力ですから、一般教養は武器です。武器は使い方を誤ると確実に人を傷つけ殺めます。そうしたことを回避するためには、使い方を学ぶ必要があります。


とはいえ、どうして奴隷の思想が広がってしまうのでしょうか。


単純です。膨大な費用が経かるからです。


そして、教養は「この時にはこうすればいい」といったハウツー的には学べません。瀧本哲史が語るように「何をどう学ぶべきかを、自分で考えるのが教養」なのですから、自分に必要な教養のポートフォリオ (資料やその情報) を組むことになります。


「瀧本哲史による教養の4分類」という話

https://note.com/ichirikadomatsu/n/nc4a08c457539


【瀧本哲史による教養の4分類】

構造化された体系を学ぶ

→複雑な世界に構造を見つける

構造化されていない世界に触れる

→全く新しい視点を見つける

相手の世界に合わせる

→相手に質問できる

自分の世界を伝える

→相手の質問に答えられる



インターネットのない時代、いわゆるインテリゲンチャと呼ばれる知識階級の人は、辞書を読んで楽しんでいました。


「辞書を読んで楽しいの?」と思われるかもしれませんが、楽しいですよ。


たとえば、『精選版 日本国語大辞典』は30万項目・約30万用例を収録しています。

https://apps.apple.com/jp/app/id1178443424


けっこう高額なアプリですが、コトバンクですと無料で使えます。

https://kotobank.jp


こうした辞書を使った楽しみは「あるていど勉強しないと分からない」というものではありません。自分が興味あることを調べればいいだけのことです。それが力になります。


「知識を得るということは、海水を飲むようなもんだよ。腹に満たせば満たすほど渇く。吸血鬼と変わらん。一滴で十分さ」

『セイレーンⅡ[新装]』

https://www.amazon.co.jp/dp/B00F11D3QQ/ref=cm_sw_r_tw_dp_JQQ394T4GP91P4C9YD44


たとえば、コトバンクで「ワクチン」を調べてみましょう。

https://kotobank.jp/word/%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3-10178


ざっと8,000字ほどあります。反ワクチンの人はこれらを読んでいません。



画像2


アメリカンジョークの「ポーランド人はバカ」の理由は「ナチスがポーランドのインテリゲンチャを虐殺していなくなったから」ということを知っていて笑うのが #blackjoke ですけれど、多くの人はマリ・キュリーがどこの国の人かも知りません。


どうして辞書で調べないのでしょうか。


辞書を知らない? そんなことはありません。辞書に「ワクチン」の項目があるのを指摘すれば「載っていることは知っている」と答えるでしょう。では、なぜ辞書を読まないのでしょうか。


答えは簡単で、選択していないからです。どうして、選択しないのでしょうか。選ばない理由は?


こちらも簡単です。そこに「人がいない」「物語がない」と思っているからです。


「人がいない」=「経験者」 (ヒーロー) の話が聞きたいだけです。医師より、TVの司会者を盲信してしまいます。

※「盲」は「茫」で、ぼやけてはっきりしない状態です。


ウジェーヌ・ドラクロワが描いた1830年のフランス7月革命の『民衆を導く自由の女神』のマリアンヌに従ってしまうのです。

※マリアンヌは、フランスという国を擬人化しています。ニューヨークの自由の女神も同じです。


どうしても、そうした人物 (キャラクタ) のほうが感情移入しやすいですからね。


「物語がない」=「英雄譚」が聞きたいのです。ベルトルト・ブレヒトは戯曲『ガリレイの生涯』で「英雄がいない国は不幸だ」という台詞に「そうではない。英雄を必要とする国が不幸なのだ」と返しています。


日本は神話の国です。どうしても、英雄 (ヒーロー) を欲してしまうのです。


辞書は多くの人の手によって制作されています。言葉の一葉一葉にも物語があります。そうしたことを理解できないからこそ、どうしても安易な選択に頼ってしまうのです。



いわゆるインテリゲンチャに私は含まれません。インテリゲンチャは知識階級ですから、大学すら出ていない私はその選から外れるのが普通です。どちらかというと、マイケル・ファラデーやエリック・ホッファーよりですね。

(よく気狂いと言われます。)



ロシア語由来のインテリゲンチャは、知識・学問・教養をもった人たちを「知識階級/知識階層」という一つの階級/階層としてとらえた言葉です。つまり、インテリですね。


インテリゲンチャの知識人は、社会の文化を導くと同時に批判もします。知の専門家です。大学を卒業しただけの学士ではなく、博士レベルの人たちです。芸術家や作家も含まれます。


インテリゲンチャという階級の概念は18世紀後半にロシア帝国に支配されていた分割統治時代のポーランドで生まれました。ですから、元はポーランド語です。


衛星国がまともな訳はありません。苦難のつづくポーランドを救うため哲学者カロル・リベルトが1844年に発表した『祖国への愛について』で、知識をもった人たちを「光で理性を導く人」と定義した言葉です。たいそうな名前ですが、それだけポーランドが酷い目にあっていたということです。


インテリゲンチャはやがて、ロシアの教養ある公人に使われるようになりました。とはいえ、東欧では活発な活動はありませんでした。一方、西欧のドイツやイギリスでは、ブルジョワジー (中産階級) が社会的な地位を確立しました。


1890年代になると、ロシア政権に反して活動する者に限定されるようになりました。ロシア皇帝ニコライ2世は「インテリゲンチャ」が大嫌いだったのでその言葉を聞くのも嫌で、ロシア語の辞書から削除されるように望んだとか。



最近私がインテリゲンチャに含まれてしまって困っています。


ロシアの科学者Vitaly Vladimirovich Tepikinは『文化とインテリゲンチャ』でインテリゲンチャの特徴を10種類あげています。


1.その時代の先進的な道徳的理想、隣人への感受性、表現における機転と優しさ。

2.積極的な精神活動と、継続的な自己教育。

3.自国民への信頼と、小さな祖国と大きな祖国への無私の無尽蔵の愛に基づく愛国心。

4.知識人 (多くの人が考えるような芸術的なものだけではない) すべての事にあくなき創造と、禁欲主義。

5.独立性、表現の自由への欲求、そしてそれの自己発見。

6.政権に批判的な姿勢、不正・反ヒューマニズム・反民主主義の兆候への非難。

7.もっとも困難な状況であっても、良心にしたがい己の信念に忠実であることと、自己犠牲。

8.現実に対する曖昧な認識は、政治的に不安定であり、時には保守主義の表れ。

9.実現できなかった憤りの感覚は悪化 (実際にも明らかに) し、知識人が親密さにつながる。

10.利己主義と衝動的な発作 (多くの芸術家にみられる特徴) によるさまざまなグループは、お互いの代表によって周期的に誤解や拒絶を引き起こす。


そんなもの私にはありませんよ。



多才は海外へ旅立ち、本来の専門家が少なくなってしまいました。


けれど、船底の淦が語る恐怖もやがて終わります。


悲観はしていません。

「第三の視点」による倒叙記述によって、それらが変わるからです。


知識が世界を変えるその日が来ますよ。


「知識が世界を変える」という意味を理解できないのは、悪意の想像力がないからです。きちんと読み解けば簡単ですよ。

(私はノワール小説を書くだけですけれど。)


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