「天アンカット」という話
「天アンカット」という話
新潮文庫の天は、天アンカットです。
本の上部 (天) がきれいに断裁されておらず、不揃いのままです。これは、スピン (栞紐) を先に取り付けるので後で断裁できないためです。
岩波文庫や創元推理文庫、ハヤカワ文庫などはコストがかさむのでスピンは廃止されてしまいましたが、天アンカットです。
天アンカットを含め、文化である藝術 (原文ママ) にはとかく陰翳 (いんえい) があります。それがまた光あるものの宿命というか、うつろいなのでしょう。
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新潮文庫がどうして、スピン (栞紐) にこだわるのかというと「こだわっているわけではなく、当たり前のことだと考えている」からだそうです。
「安価で軽装な文庫本といえども書籍であり、これを蔵書として扱う読者にこたえたい」という考え方は大切にしてほしいものです。
cf.
新潮文庫のささやかな秘密。
第四回 やめませんからご安心を
https://www.1101.com/shincho/05-04-18.html
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むかし本はとても貴重なものでした。印刷されるまえは写本といって、本を書き写していました。
平安時代中期の三蹟 (さんせき) の藤原行成も、時の権力者藤原道長から『往生要集』を借りていました。書家の藤原行成の写本を藤原道長が欲したという話があります。
三蹟は和様書道の三人の能書家の小野道風、藤原佐理、藤原行成の三筆です。
すぐれた能書家の三筆はいつの時代もいますが、この三人を特別に三蹟と言います。
たとえば、平安初期では嵯峨天皇、空海、橘逸勢が三筆です。
小野道風は、小野篁の孫で、花札の「柳に小野道風」です。小野篁の話は別の機会にしましょう。
草書の藤原佐理は、詫び状が残っています。美しいがゆえに不始末まで残ってしまいました。
藤原行成は二人の影響をうけて、世尊寺流という書道がうまれました。
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岩波文庫・創元推理文庫・ハヤカワ文庫はスピンがなくなったのに、どうして天アンカットにするのでしょうか。
それは、カッコイイからです。
むかしの本は、自分でカットしていました。それを自分の好みに製本して、書架に並べていました。映画で観る貴族の本が同じ背表紙なのはそうした訳です。
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