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という話  作者: 門松一里
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「不治の病」という話

「不治の病」という話


 世界にはまだ「不治の病」があります。文字通り「治らない」のですが、注釈がつきます。「現代医学では」という……。


 悪人の私が不治の病になったらハッピーラッキーです。亡くなれば小説だけでなくシナリオ、解説なども売れるでしょう。 (というか亡くなっても売れないと信用ガタ落ちです。)


#joke は別として、作家は嘘つきなので亡くならないと評価を決めにくいということがあります。#blackjoke


 たとえば、ラヴレンチー・ベリヤという旧ソ連の幹部を称賛する本を党の命令で書くことになった作家がいるとします。「偉大なベリヤ様」ですから取材は入念になされます。しかし、取材している間に指導者ベリヤが失脚してしまいます。とすると作家はどうなるでしょう。ヨシフ・スターリンの大粛清を執行した極悪人ベリヤを賛美する本を書く行為は党への反逆にあたるので作家は捕まってしまいます。


 ロシアにはアメリカンジョークのようなバカ話のアネクドートがあります。アネクドートは主に崩壊する前のソビエト社会主義共和国連邦の政治を風刺した小話です。


 捕まった作家が強制収容所に収監されました。三人部屋で一人は奥の薄暗い場所にいます。作家は入口ちかくの囚人にたずねました。

作家「あなたは何をしたんです?」

囚人1「ベリヤを批判したらこのザマだ。あんたこそ何をしでかしてブチ込まれたんだ?」

作家「ベリヤを支持する本を書いたんです。あなたは?」

 作家が奥の囚人にたずねました。

囚人2「私がベリヤだ」


 もちろん嘘です。嘘を嘘として楽しむのが教養であり、その端が他愛のない娯楽作品です。私はその娯楽作品を書いています。


 ベリヤがどういった人物であるかはここでは述べません。私がよく言う #blackjoke ではないことだけは確かです。なお、リヒャルト・ゾルゲも犠牲者の一人です。ゾルゲ事件の際、スパイのゾルゲは本国に裏切られました。


 ゾルゲ諜報団には、尾崎秀実 (おざきほつみ) がいました。東京帝国大学法学部出身のエリートです。秀才尾崎秀実の目からみた大日本帝国は、平安末期の伊勢平氏からつづく軍事政権そのものだったでしょう。

※平清盛は1167年に太政大臣になっています。


 日本は800年ちかく武の国だった訳です。法治国家でありながら文の国に似合わず、知的な文化を蔑ろにする慣行は今も続いていますが。


 尾崎秀実にしてみればソビエト連邦は理想の国家でした。ただ、ウラジーミル・レーニン亡き後のスターリンは共産主義には最悪でした。


 スターリンは、資本主義のエージェント (スパイ) だった。一国社会主義論で、世界革命論のレフ・トロツキーを失脚させ、資本主義を守った。有能な将校を粛清し、共産主義の流出を食い止めた。労働者を強制収容所に送り、生産性を著しく低下させた。軍需産業を強め、財政破綻を推進させた。結果、西側陣営の勝利に大いに貢献した。


 スターリンのアネクドートは秀逸です。事実、指導者というより独裁者でしたからね。


 思想が未熟であれば、誰でも暴力装置になってしまいます。そしてこれは治りません。いつの時代でも。


 尾崎秀実の死後の評価はどうでしょう。そもそも名前すら知らない人がほとんどでしょう。一方で、同じ売国の徒としては、白洲次郎 (しらすじろう) のほうが有名ですね。#blackjoke


 ままモテたというなら、白洲次郎のほうが華やかだったでしょうけれど。


 尾崎秀実は情婦だったアグネス・スメドレーの著書『女一人大地を行く』を「白川次郎」名義で翻訳しています。#本当


 さて、尾崎秀実と白洲次郎の関係ですが、別の機会にしましょう。


 世界にはまだ「不治の病」があります。現代医学では、嘘と暴力と恋は治りません。#joke



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