レッドベアーの最後
俺はレッドベアー。このラナワール迷森林の浅い所ではまぁまぁ強い分類に入る。
だが、本当に強い奴は奥に行くほどわんさか居る。俺は最奥地の手前にある中央地にいったときがあるが、あそこはやばい。簡単に言うと俺よりも強い奴が居すぎて俺は餌どころか水すらも手に入れることが出来なかった。だからこそ俺はこの浅い所でしか餌を手に入れるしかない。最近はここらに居る角ウサギやワイルドボア、シャドースネークなんかを餌にしている。
それでも最近は刺激が少ない。どんな魔物に合っても拳で何度か殴るだけで相手は力尽きてしまうからだ。
しかし数日前に面白い奴が居た。俺が餌を狩っているとき、後ろから気配を感じた。襲ってくると思いそこに視線を向けるとそこにはドラゴンの子供がいた。俺に気付かれていないと思っていたドラゴンの子供は俺と視線が合うと同時に全力で逃げていった。俺は追いかけようと思ったがせっかく狩った獲物が無駄になるため追いかけないことにした。それが俺と殺り合うことになるとはこのときは予想もしていなかった…………
それから数日たった頃に森を歩き回っているとふと懐かしい気配を感じた。その方へ呼ばれるがままに行ってみた。するとそこに居たのは前に逃げたドラゴンの子供だった。ドラゴンの子供は俺が現れると同時に驚き、すぐに戦闘態勢に入った。確かにここら一帯は嫌な臭いや変な雰囲気があり、何故こんな所にいて平気なのか正気を疑った。だがそんなのは些細なことだ。俺はあいつと戦ってみたい、あいつが俺から逃げた後どんな成長を遂げたのか知りたいという感情が渦巻いていた。
「ピギャギャギャー!!」
相手は覚悟を決めてこちらに突っ込んできた。それならこちらも全力を尽くして誠心誠意相手になろうと思いこちらも叫んだ。
「グオォォォォォォ!!(いざ尋常に!!)」
それからは拳と拳をぶつけ合い相手の胸や脳にめがけて爪を突き出したりした。相手は小柄ではあったもののその小柄さを生かし避けに徹していた。前までは俺を見てすぐに逃亡したときと違い、今は目を背けずに必死にこの戦いに集中していた。俺はこの戦いが楽しかった。だがここから俺は魔法を使うことにした。俺が使える魔法は火魔法の中級魔法までだ。そんな俺の魔法をブレス?で相殺していた。やはりお前は俺の期待を裏切らないな。だからこそこの戦いが面白い!
だが戦いは終わってしまった。相手が変な池の水を飲んだことで事態が逆さた。あの変な水は奴の体力が回復した。その後でも殴り合ったり魔法をぶつけ合ったりしたが俺は負けて仰向けに倒れた、だがこれまででいい戦いだった。
俺はこれまで満足出来る戦いが出来なかった。俺よりも弱い奴や強い奴が多く戦いというものが楽しめなかった。戦いを楽しむというのは可笑しいかもしれないが戦いを一度でも良いから楽しみたかったのだ。それで出会えた。この小さなドラゴンとは最後まで戦えて楽しいと思った。周りにあるあらゆる物を使ってでも勝とうとする心が俺と同じ気がして嬉しかった。だからこそ俺は力尽きる前に最後の挨拶をしようと思った。
「グオォ(楽しかったぜ)」
そう言って俺は周りがうっすらと暗くなるのも心地よく感じた。