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頂上決戦

 花恋は斬り飛ばしたドラグを気にせずに、手に持った〈閻魔〉を見る。


「やはり……凄いですね」


 一族が代々守ってきた理由がわかった気がした。


 花恋はそしてドラグがいた痕跡を見る。


 跡形もなく消し飛ばしたとはいえ、そこに魔力の痕跡は残っている。


 花恋はその魔力を逃がすことなく、己の手の中に収める。


「………」


 花恋はその魔力を悲しそうな目で見る。


 きっと、ドラグにはこうするしか選択肢がなかったのだろう。


 なんやかんやグロルを慕っていたとはいえ、これが彼の選択だった。


「お疲れ様でした………ゆっくりと、休んでくださいね」


 花恋はそう言うと、魔力を静かに浄化した。


 もう、この世界にドラグがいた痕跡は残っていない。だが、ドラグは、確かに花恋の記憶の中に残り続けるのだ。


「では………」


 そうして花恋はリーリエたちの元へと降りた。


「お疲れ様、花恋」


「リーリエも、お疲れ様です」


 二人は一緒に笑い合う。


「みなさんも、怪我はもう大丈夫そうですね」


 翔と翼の怪我も完治しており、光も今は穏やかに眠っているだけであった。


「ああ。俺たちは今から教会に向かうが………」


 二人はどうするのか。翔の質問に花恋は少し考えると、


「わたくしも教会に向かいます。気になることもありますし」


「じゃあ、私も。折角だし教会に行こうかな」


 そうして、全員が教会に向かうことが決定した。


「じゃあ、早速向かおう。今でもアンデッドが街で暴れてるはずだし、少しでも人々を守らなければ!」


 翔のその言葉で、クラスメイトたちは、教会に向かっていった。


 一方、花恋とリーリエは直ぐには教会に向かわずに空を見上げている。


「まだ………ですね」


 花恋は空を見上げながら呟く。

 何がまだなのか。言わずもがな椿とグロルの戦いである。


 まぁ、


「ですが、椿くんのことなので、きっと生け捕りにでもするのでしょうね」


「だね。だって椿だもん」


 きっと、椿は程々に遊びながら戦っているのだろうと二人は楽観的に空を見上げる。


「椿くん………」


 花恋とリーリエは強くなった。だが、今の状態では、今も空の上で戦っている椿の足元にも及ばないと理解しているから。


「わたくしたちも、できることをしましょう」


 花恋とリーリエは教会の援護に向かうことにした。



 □■



 今も争いがおきている街を見下ろしなが、エミリーは最終作戦の準備を整える。


 背後では、既に動けなくなったエルザが倒れている。


 椿から貰ったアイテムボックスに手をかけながら


「では、準備を始めましょうか」



 □■



 ガキン!という音が響く。


 椿の展開した結界に、グロルの剣が衝突した音だ。

 だが、防いだと思われた結界は、椿の意思に関係なく解除された。


(やっぱりな………)


 椿の感じていたグロルの神聖魔法の違和感がわかった。


(こいつの魔法は常軌を逸脱している………)


 神聖魔法に限っての話だが、中々イカレているなと感じた。


 まず、グロルの剣はいわば混合魔法だ。浄化系神聖魔法と具現化系神聖魔法の混合。


 それにより、剣に触れたものは浄化される仕組みを持っている。


 そして、その浄化する定義も少し違う。


(こいつが断定したものが浄化対象に、か………)


 グロルの浄化は、悪にしか効かないのでは無い。グロルが「これは悪だ!」と判断したものには問答無用で浄化の効果が施される。


 なので、グロルの神聖魔法は悪魔族だけでなく、通常の魔物、人間に天使族にまで浄化の作用を及ぼすことが出来る。


 そして、それは生物以外でもだ。


「"獄炎"」


 椿が上級の火球を飛ばすと、グロルは間髪入れずに火球を神聖魔法で斬り、浄化した。


 魔法も浄化の対象。それは魔法出なくとも、物にも対応できるだろう。


 なので、実質椿の攻撃は全て無効化されると考えてもいいだろう。


 だが、弱点もある。


「転移………"獄水"」


 グロルの背後に転移した水は、グロルの剣に触れたにも関わらず、浄化されず、グロルに衝突しそうになった。


「視認しなきゃ、浄化対象にはならないのか」


 グロルの浄化には、浄化対象の視認が必要不可欠。


 透明人間や、背後から出現した魔法には本来は為す術なく命中する。


 だが、グロルは360度全てに剣を配属することによって、擬似的な超反応能力を備えることに成功している。


 肉体を改造し、怪人族にまでなり、神の術式すらも思いのままに弄る。まったく………


「どこまで楽しませてくれるんだよ………」


 椿はグロルに獰猛な笑みを向けた。だが、もはやグロルはその程度ではまったく動じない。


 その瞬間、背後の雲が謎の攻撃により、吹き飛んだ。吹き飛ばされた雲は、まるで斬撃が通過したかのような穴が空いていた。


 グロルは静かに目を見開いて驚いているが、椿は誰がやったのか心当たりがあった。


(花恋だな………)


 〈閻魔〉でも使ったのだろうと辺りをつけた。


 万能感知で調べると、既にグロルの部下は全員討伐されたみたいだ。


「なんだ?そんなに下が気になるか?」


「えぇ………少し………」


 グロルは静かに下に視線を向ける。


「なあ、グロル………もういいから俺の「減ったみたいですね………駒が」


 すると、グロルは雲の上ににどす黒い円環を浮かべると、そこから謎の光を放射した。


「言ったでしょう?手数が違うと………」


 円環の様子を見ていた椿に、グロルはそう言う。


「今の光は残りのアンデッドを限りなく強化するための光………全てのアンデッドを最低でもA級にまで強化する光です」


 グロルは余裕そうな声で言った。


「私一人で十分なのですよ。こんな国、潰すのは」

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