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そんなあなたに絶望を

昨日投稿した話。サブタイつけるの忘れてしまっていました!

申し訳ございません!

昨日の11時頃にはきちんとサブタイトルを設定しましたので、ご了承ください

 神父が翔の存在を認識した瞬間、神父は左腕を鎌に変形させると、修道女に向かって攻撃をした。


「……え?」


 咄嗟のことで反応できなかった修道女は、鎌にそのからだを貫通させられると思ったが、


「はぁぁぁ!!」


 翔が超人的な脚力で移動すると、修道女を抱えて鎌の攻撃範囲から逃れた。


「ふむ、避けられましたか。さすが、異世界人といったところでしょう」


 神父は感心しながらも、変形させていなかった手も大剣に変化させる。


「……あんた、キメラかなんかか?」


「そうですね。当たらずも遠からずっと言うところです。まあ人間でないことは確かですね」


 翔は話を聞いている間も警戒を怠らない。戦力感知が告げているのだ。

 この敵は、魔王軍の幹部級の敵だと。


「おい、あんた」


「は、はい!」


 修道女は、緊張しているのか、固まったような声で返事した。

 普通、ここは命の危機に直面しているのだから、暗い感じの声で返事すると翔は思ったのだが、相手が強大すぎて感覚が麻痺してるのかと考えた。


「俺が時間を稼ぐから、はやく逃げろ」


「で、でも……」


「教会内にいる人たちは既に全員逃がした。だから案ずることは無い」


 翔は、心配するなと言っても、修道女はなかなか動こうとしない。


「で、でも、あなたが……」


 どうやら、翔の身を心配しているようだ。


「大丈夫だ。俺は強いからな。勝てないようなら隙を見て離脱する。だから問題無い」


「せ、せめて助けを……」


「その必要は無い。だから、お前はお前のことだけ考えてはやく逃げろ!」


 翔は最後は強い口調で修道女を追いやった。

 これで助けを呼ぶことは無いだろうし、無駄な犠牲を出すことは無くなっただろう。


(それに、どうせ誰かが助けに来ても無駄だ)


 翔は悟っていた。どうせ、誰も勝てない、と。


(こいつは俺がなんとかできる次元の相手じゃない)


 翔は本心では椿にさっさと譲るのが正解だとは思っていたが、その椿がどこにいるのかわからない今、翔が対応するしかない。


「覚悟は、決めたのですか?」


 眼前の神父は、お優しいことに、翔が修道女を逃がして、覚悟を決めるまで待っていてくれたらしい。


「……どうせなら、そのまま回れ右して帰ってくれたらいいんだけどな」


 優しさに対し、皮肉で返す翔。

 だが、翔とて馬鹿ではない。何が目的かはわからないが、万が一にも目的を果たさずに帰ったとしても口封じとして翔のことは始末するだろう。


「なあ、なんでさっきはあの修道女を狙ったんだ?」


 最初に狙った相手を今度は殺さずに、あまつさえ逃げ出す時間を与えた。


「ああ、それなら簡単な話ですよ。あなたの選択を見たかったのです」


「俺の、選択?」


「そうです。あの女を逃がすか、それとも犠牲にするのか……」


「……わけがわからないな。逃がしてる時点であの修道女を助けることは決まってるようなもんだろ?」


 翔は神父の言葉の真意がわからず、問いかける。


「いえ、少し違いますね。あなたにはあの修道女を逃がした時点で2つの選択肢がありました。私に立ち向かうのか。それともあなたの身体能力を存分に発揮して逃走することです」


「?たとえ俺が逃走してもお前が俺を追いかける可能性はあるだろ」


「いいえ。その場合普通の敵ならばあなたよりもステータスの低いあの修道女を狙います」


 翔にも、神父の言いたいことがわかった。翔が見捨てるのか、救うのかを見たかったのだ。その目で。


「で?俺は合格か?」


「はい。不合格なら即座に殺してあの修道女も殺しますが、今回はあなたに免じてあの修道女だけは見逃してあげましょう」


「……あんたが俺に殺されるっていう可能性はないのか?」


 翔がそう言った瞬間、神父は鎌を地面に突き刺し、地面の内部を通って翔の足元まで伸びてきた。

 そして神父はその伸びた鎌を軽く振り上げて言った。


「はい。だって、あなたはここで死にますからね」


 圧倒的な力の差。

 神父はこれに翔が絶望するのではないかと思っていた。

 絶望してくれれば、神父は無駄な体力を消費しなくて済む。

 絶望しなければ、翔との戦いを少しは楽しむことができる、と。


 翔は吹き飛ばされながらも、絶望はしていなかった。この程度、


(ソルセルリーや上里の攻撃に比べたら可愛いもんだ!)


 もっとやばいのを知っていたから。だから翔は対応できた。


 宙に浮いた翔は、受け身の体制をとる。いくら翔でも、魔法の適正は殆どなかったので自分の身一つで着地しなくてはいけない。


 そして、ふとなにかが接近してくる気配を感じ、椿からもらったポーチから剣を取り出して備える。


 次の瞬間、翔に向かって神父の腕の鎌が襲いかかってきた。それを翔は受け流しながら地面に着地する。


「おや?気配は殺していたつもりですが、なにかしましたか?」


 神父は鎌を見ながらそんなことを言う。



「ああ、なるほど。追跡の技能ですね」


「……」


 翔は何も言えなかった。

 追跡の技能は、対象に魔力を纏った印をつけることによって、たとえどこに行こうが、つけた本人だけはどこにあるかわかるようにする技能だ。


「ふむ。普通の追跡よりも強めですね。まあ問題ありませんが」


 神父は大剣に変形した腕を元に戻すと、鎌に当てた。すると、翔の追跡の技能の痕跡が消え去ってしまった。


「さて、これで振り出しに戻りましたよ」


 だが、翔はここでも焦らない。この程度はまだ序の口だと考えているからだ。


(こいつは、まだ俺に隠してることがある)


 翔はそう考えた。しかも、それは一つや二つではない。能力もだ。神父は自分をなにもさらけ出していない。


(この神父に勝つには……)


 翔は更に思考を重ねようとしたが、それが命取りとなった。


「はい。油断大敵ですね」


 神父が振るった大剣。翔はその余波に巻き込まれてしまった。

 すると、神父は腕を大剣に変形させていた右腕を新しく生やした。


「……は?」


 腕の変化や既存の腕の再生。それならまだわかる。いや、それも意味がわからないが、許容範囲内だった。


 だが、新たに腕を生やすのは違う、と翔は思った。

 だが、神父は、そんなことお構い無しに、その腕をハンマーに変形させると、高所から翔に向かって振り下ろした。


「がっ!?」


 さすがに翔も耐えきれずに苦痛の声を漏らす。


「なるほど。これは通用するのですか」


 神父は既に予想していた。大雑把な攻撃では受身を取られたり、上手く受け流されたりするが、ハンマーなどで上から潰せば問題ないと。


 そもそも、この神父が真面目に戦えば翔は瞬殺である。神父が本気で戦っていない。だからこそ翔にも可能性はあったのだが……


「きっと、もう彼は立ち上がれませんね」


 神父はそう判断して帰ろうとしたが、神父が背を向けた瞬間、神父の首になにかが巻き付かれた。


「何勝手に帰ろうとしてんだよ!」


 それは瀕死になりながらも喰らいつこうとしている翔だった。


「な!?」


 神父にとっては意外だった。これほどまでの実力を見せても、翔は立ち向かって来るのだから。


「ああああああああぁぁぁ!!」


 翔は両腕にパンチの威力を増強するナックルを装備して神父を殴り続ける。


(くっそ!これでも……)


 ダメなのかと。

 元々、きちんと勝つつもりがなかったとしても、やっぱり翔にも意地があるのだから。だから


「ここで、倒れろぉぉぉ!!」


 だが、そんな翔の叫びは、無慈悲にも一蹴された。


「鬱陶しい」


 あろうことか神父は、懸命に攻撃する翔を雑に大剣で吹き飛ばした。

 そうして翔は教会内部まで吹き飛んだ。


「このっ」


 翔はまだ立ち向かおうと体を起こすが、起こした瞬間に神父の攻撃が飛んでくる。


「かはっ」


 翔の体はそのまま教会の中を突き進んでいき、やがて倒れてしまった。


「わかります。わかりますとも。思いますよね。どれだけ努力をしても、意味が無いと。力なんてそんな手間隙かけて高めるのなんてどれだけ無駄であるのかと」


 神父は翔を論すようにそう言いながら翔に近づく。


「あ、ですが唯一努力で高めても良かったって思ってるものはあるのですよ?」


 神父はそう言うと、両手を持ち上げて呟いた。


「"神光武装・展開"」


 神父はそう言うと、具現化系神聖魔法で作りあげた武装を並べた。


「さあ、あなたはどれだけ耐えられますか?」


 そして、神父による一方的な攻撃が始まった。



 □■



「椿くん。今は周囲に怪しい人物はいないみたいですが……」


 試練を終え、脱出した椿の花恋は脱出した瞬間に出会った傷だらけの翔を治癒していた。

 再生魔法で翔を治癒し終えた椿は、立ち上がると、近くの壁にそっと触れた。そこには微かに感じる神聖魔法の魔力が……


 椿は無表情で呟いた。


「……やってくれたな」

言い訳すると、昨日は寝惚けてました

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