表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/151

違和感

ごめんなさい!サブタイつけるの忘れてました!

 一方、エミリー達が下水道で昼食を食べている頃。


 単独で行動していた宇都宮 翔は現在、教会本部に侵入していた。


(悪意あるものは弾く結界があるとは聞いていたが、どうやら俺は問題なかったらしいな)


 翔は、始めて教会に来た時からこの教会に違和感を感じていた。


 この教会はなにかが隠されている、と。

 それが何かはわからなかったが、今もこうして探っているのだ。


「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」


 翔は、椿にもらったフードを被りながら、教会の中を慎重に歩いていた。


 このフードは魔法道具(マジックアイテム)で、装着していると、自分の姿を透明にすることが出来る術式が付与されている。


 そうして翔は教会を隅々まで探すが、何も怪しいものは見つからなかった。


「まあ、そりゃあ簡単に見つかるとは思ってなかったが……」


 それに、きな臭いと感じただけで、実際になにかあるとは限らない。


「しょうがない。出直すか……」


 翔は今日のところは一度退散することにした。これで明日も探り、何も無ければこの教会は白と判断することにして。


 さすがに堂々と外に出ては不味いので、透明になりながら裏口からの逃走を試みようとして、


「?なんだ、神父か?隣にいるのは……」


 教会の裏庭で神父が歩いているのが見えた。隣に何かを連れながら。

 翔は最初は神父のペットかと思ったが、それをよく見ると、浮いていた。鳥類かとも思ったが、翼も無いし、それは浮遊しているだけだった。


 そして、その存在を認識すると、翔は教会の中に向かって走り出した。


(なぜ!?どうしてあれが神父と一緒にここにいる!?)


 翔の頭は今までに無いくらいに混乱していた。


(なぜ、レイスがここにいる!)


 レイスは生きてた人間が死んだ際に発する負の感情や心残りから発生するモンスターで、基本的に悪意ある存在だ。


 そもそも、アンデッド系モンスターに分類されるレイスが教会にいた理由もわからない。


 どうやって結界を通り抜けられたのか。どうやって教会で存在を許されているのか。


 ともかく、


(はやく逃がさないと!)


 あの神父が何者かはわからないが、速く全員を逃がさないとやばい気がする。戦力感知でも、あの神父は翔から見ても化け物だった。


「!見つけた!そこの君!」


 翔は走り、やっと見つけた修道女に話しかける。


「え!?はい。何でしょうか?」


 修道女は警戒しない。そもそも、結界によって悪は完全に阻害されている場所なのだ。多少姿を消していても反応する高性能な結界のおかげで彼女たちは基本的に危機管理能力が低いのだ。


「急いでるから、簡潔に説明するぞ!今、この教会の中庭で謎の神父がレイスを連れて歩いている!何があるのかもわからないから、なるべく大人数を連れて教会から逃げてくれ!」


 翔は早口でそう言ったが、修道女には、いまいち実感が持てなかった。


 急に危険が来ると言われても、ここは教会。結界があるのにここに来られるはずがないと結界の効力を過信してしまっている。


 だが、翔の必死な表情も嘘には見えなかった。


「え、えっと……」


 結果、混乱する修道女。


「疑うなら嘘感知が付与された魔法道具(マジックアイテム)でも使えばいい!だが、今は緊急事態なんだ!急いでくれ!」


 翔の言葉を聞き、修道女は、胸元にある嘘感知が付与された魔法道具(マジックアイテム)を見る。反応は、無し。


「!?わかりました。すぐに教会内に残っている人は逃がします!」


 修道女はすぐさまそう言うと、逃がすために走り出した。

 全員に大声を出さないように慎重に進む。


 嘘感知が付与された魔法道具(マジックアイテム)は、基本的に教会に入った人物には全員にさずけられるアイテムだった。

 なので、全員が翔の言葉をすぐに信じて行動したのだが、


 そうして、全員が無事に正面玄関に辿り着いた。翔の感知では、神父とレイスも裏庭でゆっくりと散歩している様子。

 これで全員大丈夫。そう思ったのだが、


「すみません。わざわざ情報をくださって感謝しています」


「いいんだよ。それに、なにかあったのか?」


 翔はなにかあったと察し、優しく問いかける。


「実は、同じ修道女仲間がひとり、買い出しから帰ってきていないのです……」


 買い出しから帰ってきていない。それを聞いて翔は冷や汗をかいた。

 もし、逃げてる途中ですれ違えば、わかるはずだ。しかし、入れ違えになればきっとあのレイスに襲われるかもしれない。


 そう考えて、逃げながら考えようと思った直後、感知技能になにかが引っかかった。


 神父と、レイスの感覚。そして修道女たちと似たような反応。


「ちっ!」


 翔は全員にすぐに逃亡するように呼びかけてから裏庭に向かう。

 そこでは、レイスが腰が抜けたのか、動けなくなってしまった修道女に取り憑こうとしている。翔はそのまま狙いがつけやすい屋根に登ると、2人に向かってナイフを投擲した。


「……え?」


「ほう……」


 レイスはわけがわからないまま成仏し、修道女は目の前の自分を襲おうとしていたレイスが消滅するのを見て驚愕の声を静かにあげる。

 そして神父は面白いものを見たといった表情で、屋上に待機していた翔をその視界に収めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ